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第15話 結婚しよう
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「セレフィア。僕と結婚しよう」
「…………はい?」
シルヴァード様に膝枕をするという恥ずかしい行為があった翌日。治療室を訪れた彼が開口一番に言った言葉が、これだった。わたしの思考は完全に停止し、笑顔が固まる。
そのまま一分以上、わたしの動きは固まったままだったと思う。シルヴァード様が途中でわたしの髪を弄りだして、器用に三つ編みにしていることに気づかなかったくらい、衝撃だった。
(わたしは……過去に戻ってしまったのでしょうか)
徐々に思考が戻ってきても、なかなか彼の言葉が頭に浸透してこなかった。
「ごめんなさい、シルヴァード様。わたし、どうやら聞き間違いをしてしまったようです。もう一度、仰っていただけますか?」
「セレフィア。僕と結婚しよう」
はっきりと聞こえた。「結婚しよう」と。わたしは彼の紅い瞳を見て、ようやくこれが現実であることを受け入れた。
「そ、そそ、そんな……どうしてまた、そのようなことを……」
「僕はセレフィアと結婚したい。結婚したら、君は僕のものになる」
そう言って、シルヴァード様は立ち上がり、座っているわたしを抱きしめる。ふわりと温かい体に包まれて、ほのかに甘い香りが漂ってきた。
わたしはとにかく動揺している。ずっと好きだった人に結婚しようと言ってもらえて嬉しいと喜ぶ子供のようなわたしもいれば、彼の精神は不安定なのだから傍にい
てくれる人がほしいのだろうと冷静に考える大人のわたしもいる。
(正しいのは……大人のわたしでしょうね)
わたしは子供のわたしを捨て、彼の腕に触れながら諭すように言った。
「申し訳ありません。わたしはあなたとは結婚できません」
「どうして?」
「わたしとあなたは、まだ会って数日も経っていないのですよ。お互いのことをよく知らない状態ですし、わたしは、あなたを治療するためにここにいるのですから」
そっとわたしに回された腕をほどこうとするも、逆に力を込められた。
「僕はセレフィアと結婚する」
「それに、結婚するためには当主であるお父様方の許可が必要ですよ」
「父上に結婚したい人がいるって言ったら、泣いて喜ばれた。エランディール家と関係が持てるって言ってたよ」
すでに親に話をしているということは、今考えてこのようなことを言いだしたというわけではない、ということだろう。彼の言い方からして、ヴォルテクス家の当主様は、シルヴァード様が仰る相手がリーリアだと勘違いしている可能性が高い。
「だから、いいでしょ?」
「……」
よくない、と反射的に言いそうになったが抑える。否定しすぎることは悪影響だ。一度ゆっくりと話し合って、彼の本心を尋ねる必要があるだろう。
わたしが黙ってしまったからか、シルヴァード様は怪しむようにわたしの顔を覗き込んだ。
「結婚したくない理由があるの? セレフィア、他に好きな人でもいる?」
「……い、いませんよ」
透き通るような紅い瞳に見つめられて、わたしは喉がひきつるのを感じた。その一瞬の間で、彼は何かを悟ったのだろう。紅い瞳が、ゆっくりと細められる。
「誰? 誰が、セレフィアの心の中にいるの?」
そっと目の下あたりを撫でられ、ぞくりと全身が震えた。
「…………はい?」
シルヴァード様に膝枕をするという恥ずかしい行為があった翌日。治療室を訪れた彼が開口一番に言った言葉が、これだった。わたしの思考は完全に停止し、笑顔が固まる。
そのまま一分以上、わたしの動きは固まったままだったと思う。シルヴァード様が途中でわたしの髪を弄りだして、器用に三つ編みにしていることに気づかなかったくらい、衝撃だった。
(わたしは……過去に戻ってしまったのでしょうか)
徐々に思考が戻ってきても、なかなか彼の言葉が頭に浸透してこなかった。
「ごめんなさい、シルヴァード様。わたし、どうやら聞き間違いをしてしまったようです。もう一度、仰っていただけますか?」
「セレフィア。僕と結婚しよう」
はっきりと聞こえた。「結婚しよう」と。わたしは彼の紅い瞳を見て、ようやくこれが現実であることを受け入れた。
「そ、そそ、そんな……どうしてまた、そのようなことを……」
「僕はセレフィアと結婚したい。結婚したら、君は僕のものになる」
そう言って、シルヴァード様は立ち上がり、座っているわたしを抱きしめる。ふわりと温かい体に包まれて、ほのかに甘い香りが漂ってきた。
わたしはとにかく動揺している。ずっと好きだった人に結婚しようと言ってもらえて嬉しいと喜ぶ子供のようなわたしもいれば、彼の精神は不安定なのだから傍にい
てくれる人がほしいのだろうと冷静に考える大人のわたしもいる。
(正しいのは……大人のわたしでしょうね)
わたしは子供のわたしを捨て、彼の腕に触れながら諭すように言った。
「申し訳ありません。わたしはあなたとは結婚できません」
「どうして?」
「わたしとあなたは、まだ会って数日も経っていないのですよ。お互いのことをよく知らない状態ですし、わたしは、あなたを治療するためにここにいるのですから」
そっとわたしに回された腕をほどこうとするも、逆に力を込められた。
「僕はセレフィアと結婚する」
「それに、結婚するためには当主であるお父様方の許可が必要ですよ」
「父上に結婚したい人がいるって言ったら、泣いて喜ばれた。エランディール家と関係が持てるって言ってたよ」
すでに親に話をしているということは、今考えてこのようなことを言いだしたというわけではない、ということだろう。彼の言い方からして、ヴォルテクス家の当主様は、シルヴァード様が仰る相手がリーリアだと勘違いしている可能性が高い。
「だから、いいでしょ?」
「……」
よくない、と反射的に言いそうになったが抑える。否定しすぎることは悪影響だ。一度ゆっくりと話し合って、彼の本心を尋ねる必要があるだろう。
わたしが黙ってしまったからか、シルヴァード様は怪しむようにわたしの顔を覗き込んだ。
「結婚したくない理由があるの? セレフィア、他に好きな人でもいる?」
「……い、いませんよ」
透き通るような紅い瞳に見つめられて、わたしは喉がひきつるのを感じた。その一瞬の間で、彼は何かを悟ったのだろう。紅い瞳が、ゆっくりと細められる。
「誰? 誰が、セレフィアの心の中にいるの?」
そっと目の下あたりを撫でられ、ぞくりと全身が震えた。
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