幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫

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第14話 妹からの情報

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 わたしは、シルヴァード様についての話を聞くために、リーリアの元を訪れた。彼女は我が妹ながら、相変わらず可愛らしい。

「お姉さま。どうなされたのですか?」

 リーリアはわたしの姿を見るなり、笑顔を浮かべて駆け寄ってくれる。わたしは反射的に彼女の頭を撫でて、頬を緩めた。

「忙しいところにお邪魔してごめんなさい。少し、リーリアに聞きたいことがあるのです」
「お姉さまなら、いつでも大歓迎です! 何でも聞いてください!」

 彼女に促されて椅子に座る。紅茶を出してくれたのでお礼を言いながら、前に座ったリーリアの桃色の瞳を見つめた。

「シルヴァード様について、リーリアが知っていることを教えてくれませんか?」
「シルヴァード様について、ですか?」

 リーリアは首を傾げて復唱した。彼が治療を受けていることは公にはなっておらず、内密にしてほしいとお偉いさまから言われているので、彼女はわたしが彼の治療を行っているということを当然知らない。

 リーリアになら言っても噂が広まることはないと思うのだが、個人の都合で患者さんの情報を流すわけにはいかない。他に、何か正当な理由を考えておくべきだった。

「えっと、わたしは……」

 言い淀んでいると、リーリアははっと口元に手を当てて、そしてうんうんと頷いた。

「分かりました、お姉さま。シルヴァード様について、ですね」

(おや、これは……まさか、わたしがシルヴァード様のことが気になっている、と勘違いされたでしょうか)

 違うと言えば違うし、あっていると言えばあっている。どちらかと言うと恥ずかしいので否定したいのだが、このまま話が進む方が都合がいい。

「シルヴァード様と直接お話しする機会はほとんどありませんでした。顔を合わせるのは、彼が怪我をなさった時だけです。あの方はしょっちゅう怪我をしていらっしゃいました。自分の身が傷つくことを苦としない方で、捨て身の特効なども何度も行っていたのです」

 聞いたことがない情報が沢山出てきている。自己犠牲を苦としないことは、かなり危険だ。なんとか彼と、自分の身を大切にする、ということを約束しておく必要があるかもしれない。

「今ではシルヴァード様はずっと笑っておられますが、戦場ではそうではありませんでした。感情は滅多に表に出さず、他の騎士様が彼は感情をなくした、と話していたほどです」

 シルヴァード様は、戦場では無表情だったということなのか。笑顔を浮かべている彼と無表情の彼、どちらが本当の彼に近しいのだろう。

「わたくしも何度か彼に、自分の身は大切にしてください、と伝えたのですが、聞き入れてくださいませんでした」

 リーリアの言葉を聞き入れなかった、ということにわたしは驚いた。シルヴァード様は、彼女を女神として見ているわけではない、ということになるのだろうか。それなら、誰が? そもそも、現実に存在する人ではない、という可能性の方が高いのかもしれない。

「リーリアは、凱旋後のパーティーにも参加したのですよね。そこには、シルヴァード様もいらっしゃったのですか?」
「はい。彼が主役といっても過言ではありませんよ。シルヴァード様は三年間戦場にいたと思えないほどの優雅な立ち振る舞いで、たくさんの女性をきゃーきゃー言わせていました。ですが彼はどんなに美しい女性にも興味を示す様子はなくて……。きっと、お姉さまのような、全てを包み込んでくださる方が好きなのですよ、彼は」

 シルヴァード様はたくさんの女性をきゃーきゃー言わせている様子は目に浮かぶようだ。リーリアがわたしを気にするように最後の言葉を付け足してくれたが、恥ずかしいだけなのでやめてほしい。

「その、彼の立ち振る舞いというのは、どんな感じでしたか?」
「ユーリ殿下のような、紳士的で完璧な貴公子でした」

(王城では、シルヴァード様は完全に仮面をかぶっていらっしゃるようですね)

 ユーリ殿下というのは、第一王子のユリウス様のことだ。シルヴァード様の上司で、リーリアとは幼馴染のような関係である。

「ありがとうございます。やはり、リーリアに聞いて正解でした」
「お姉さまのお役に立てたようで、よかったです。わたくしは、お姉さまのことを応援していますから!」

(リーリアが思っているような理由ではありませんから!)

 と否定したかったが、その言葉は喉の奥に飲み込んだ。
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