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第20話 手料理の約束
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「わたしは、わたしのものです。誰のものにもなりませんよ。同じように、シルヴァード様はシルヴァード様だけのものです。ご自分の体は、大切にしてくださいね。ご飯をしっかり食べて、睡眠をしっかりととって、今よりももっと元気になりましょう!」
にこりと微笑んで彼の顔を見つめる。
「……うん」
シルヴァード様が頷いたのを確認して、わたしは彼の手を放した。そして、視線を料理に戻す。
「さあ、一緒にご飯を食べましょう」
魚を包んでいた葉を開けると、湯気と共に芳醇な香りが立ち上った。シルヴァード様がわたしの動きをじっと見ているので、わたしは手を伸ばして彼の木の葉をはがした。
「良い香りがしますね」
「そうだね」
わたしは胸に手を当てて、食事前の祈りを捧げた。シルヴァード様も、軽く料理に頭を下げる。
「それでは、いただきましょう」
一口。魚の身はとろけるような滑らかな舌触りで、雑味のない清らかな甘みが口に広がる。その後に、木の葉の爽やかな香りが追いかけてくる。
「おいしいです」
口元が緩んでしまう。シルヴァード様の視線を感じたので、手を添えて隠しておいた。だらしない顔は見られたくない。
彼はしばらくわたしを見ていてなかなか料理に手を伸ばさなかったが、わたしが美味しいと連呼していると、その手がお箸に伸びた。彼は器用に魚の身を摘まんで、それがフードの下に運ばれる。食べにくいだろうけど、彼がそれでいいのなら、わたしからは何も言うことはない。
「うん。おいしいね」
シルヴァード様は頷きながら、黙々と食事を始める。彼がちゃんと食べてくれていることに安心しながら、わたしも手を動かす。
「セレフィアは、料理をするの?」
しばらく料理を堪能していると、彼にそう問いかけられた。わたしは一旦お箸を置いて、彼に顔を向ける。
「多少はできますが……得意というほどではありませんね」
「セレフィアの料理、食べたいな」
わたしは思わず曖昧な笑みを浮かべてしまった。彼は首を傾げて、わたしの頬を撫でる。
「今まで誰かに作ったことはあるの?」
「先程の子どもたちが住んでいる孤児院などでお料理の手伝いをしたことはありますが……あとは、そうですね。甘いものが好きな子にお菓子を作ったことはあります」
お菓子は料理とは言わないかもしれないと思っていると、彼の指の動きが一瞬止まった。
「じゃあ、僕にも作って」
「クオリティの高いものではありませんよ」
「作ってくれないの……?」
躊躇していると、シルヴァード様が落ち込んだような声を出した。フードで顔は見えないが、悲しそうな顔をしているのだろうか。わたしは慌てて手を振る。
「作るのが嫌というわけではありません。シルヴァード様がお望みなら、作らせていただきます。お菓子でもいいですか?」
「うん! セレフィアの手作りお菓子、食べたい。楽しみにしてるね」
彼はきっと、にこにこと笑っているのだろう。心なしか声が弾んでいる。直近で手料理を作ったのは大分前のことのように思えるので、ただでさえクオリティの低い料理の腕が鈍っているかもしれない。
にこりと微笑んで彼の顔を見つめる。
「……うん」
シルヴァード様が頷いたのを確認して、わたしは彼の手を放した。そして、視線を料理に戻す。
「さあ、一緒にご飯を食べましょう」
魚を包んでいた葉を開けると、湯気と共に芳醇な香りが立ち上った。シルヴァード様がわたしの動きをじっと見ているので、わたしは手を伸ばして彼の木の葉をはがした。
「良い香りがしますね」
「そうだね」
わたしは胸に手を当てて、食事前の祈りを捧げた。シルヴァード様も、軽く料理に頭を下げる。
「それでは、いただきましょう」
一口。魚の身はとろけるような滑らかな舌触りで、雑味のない清らかな甘みが口に広がる。その後に、木の葉の爽やかな香りが追いかけてくる。
「おいしいです」
口元が緩んでしまう。シルヴァード様の視線を感じたので、手を添えて隠しておいた。だらしない顔は見られたくない。
彼はしばらくわたしを見ていてなかなか料理に手を伸ばさなかったが、わたしが美味しいと連呼していると、その手がお箸に伸びた。彼は器用に魚の身を摘まんで、それがフードの下に運ばれる。食べにくいだろうけど、彼がそれでいいのなら、わたしからは何も言うことはない。
「うん。おいしいね」
シルヴァード様は頷きながら、黙々と食事を始める。彼がちゃんと食べてくれていることに安心しながら、わたしも手を動かす。
「セレフィアは、料理をするの?」
しばらく料理を堪能していると、彼にそう問いかけられた。わたしは一旦お箸を置いて、彼に顔を向ける。
「多少はできますが……得意というほどではありませんね」
「セレフィアの料理、食べたいな」
わたしは思わず曖昧な笑みを浮かべてしまった。彼は首を傾げて、わたしの頬を撫でる。
「今まで誰かに作ったことはあるの?」
「先程の子どもたちが住んでいる孤児院などでお料理の手伝いをしたことはありますが……あとは、そうですね。甘いものが好きな子にお菓子を作ったことはあります」
お菓子は料理とは言わないかもしれないと思っていると、彼の指の動きが一瞬止まった。
「じゃあ、僕にも作って」
「クオリティの高いものではありませんよ」
「作ってくれないの……?」
躊躇していると、シルヴァード様が落ち込んだような声を出した。フードで顔は見えないが、悲しそうな顔をしているのだろうか。わたしは慌てて手を振る。
「作るのが嫌というわけではありません。シルヴァード様がお望みなら、作らせていただきます。お菓子でもいいですか?」
「うん! セレフィアの手作りお菓子、食べたい。楽しみにしてるね」
彼はきっと、にこにこと笑っているのだろう。心なしか声が弾んでいる。直近で手料理を作ったのは大分前のことのように思えるので、ただでさえクオリティの低い料理の腕が鈍っているかもしれない。
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