錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか

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プロローグ

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アレスディアの中央都市とされている大国、アストレア王国にあるマルディン伯爵家のとあるどんよりとした午後のこと。
僕の名前はテイル・フォン・マルディン。
今は父上の計らいで魔力を測定してもらうためにさる高名な年配の魔法医師に来てもらっていた。

「では、この魔法水晶に触れてください」

僕はその魔法医師に言われるがままに握りこぶしくらいの魔法水晶に触れる。
すると魔法医師は少し驚いた様子を見せながら俺達にこう言った。

「この子は高い数値の魔力を秘めています。 きっと偉大なる魔法師になるでしょう」

魔法医師には数値は見えている様で俺達には見えていない。 どういった構造なのかはまったく分からない。

父上がそれに対し反応する。

「おぉ…我が息子よ。 魔力を秘めているのか。 きっと将来は有望な魔法師や魔法騎士になるに違いない。 医師よ数値は教えてくれぬのか?」

「では、ご家族の方以外の人払いをお願いします」

父上は言われるがままに手早く人払いをする。

「ありがとうございます。 では、結論から申し上げますと十一歳ではあり得ないであろうと思われる一万の数値を示しました」

一万とは宮廷魔法師並みの魔力量で、かなり高水準であることは傍目に見てもわかる。

「なんということだ! 素晴らしい。 これは公表をしても良いのではないか?」

「いえ、差し出がましい様ですがこれだけの魔力です。 違う派閥の貴族もテイル様を取り込もうとしてくるやもしれません。 そうなってしまっては遅いかもしれないかと思います」

他の派閥の貴族に僕が取り込まれてしまっては、父上達はひとたまりもないだろう。 この国では高位の魔法師はかなり重要視されているのだ。 それだけで取り込みたい貴族も大勢いるはずだ。
しかし、魔法医師は冷静に受け答えするがその声は震えている。

「ふむ、一理ある。 では、今後はこのことは口外しない様に」

「はい、仰せのままに」

すると、母上は泣いて「よかった...」と喜んでくれた。

魔法の才に恵まれず、剣術でも俺が並び出ている為か俺の事を毛嫌いしている兄上は終始嫌そうな顔をし、無言で部屋を出ていってしまった。

兄のサイドは父上がメイドを孕ませ出来た子であり、跡取りではない。 僕の魔法の才能はどうやら母上譲りの物らしい。
父上は兄上もちゃんと愛している様だが僕に対する入れこみはそれ以上のものだった。

父上のアレク・フォン・マルディンは騎士として最も実力の高いとされているマルディン家の出身で、母のミサ・フォン・マルディンは魔法師の家系の出身で二人とも騎士団、魔法師団に属し、戦で多大な功績を挙げて叙勲されたことがある。
そして、魔法の才は無くとも兄のサイドは王都にある国立の騎士学院に通っているエリートなのだ。

「なんと態度の悪い子なのかしら! 汚らわしい血の子よ」

母上は自分の血を引いていない兄上の事を良く思っていない。 その為か兄上に対してあまり気持ちの良い発言をすることはない。

「止めんか。 サイドもあれで優秀だ。 悪く言うでない」

いつも通り父上は母上を諭す。

そしてそれがきっかけとなり、父上と母上はいつものように口喧嘩を始める。
僕が生まれてからずっとこうらしい。

僕は徐々に訪れるこの不吉な胸騒ぎに眼前の夫婦喧嘩に何も感じる事はなかった。


月日は流れ、僕は十二歳になり一生に一度の天職選定の日を迎えるのだった。

「きっと戦で活躍出来る天職になるであろう。 そうなれば誰もテイルが跡継ぎになることに難色を示すまい」

天職は十二歳になると教会にて選定の儀式を受けることができるものである。 なんでも神様がその人に合ったモノを授けてくれるんだとか。
僕ももちろん例外ではない。 戦闘系の天職を賜りたいところである。 少しでも父上の力になり、喜んで貰いたいから...。

「わかっております父上。 きっと良い天職を貰えると思います」

少し強がってみせた。 僕に出来る精いっぱいの強がりだ。

「それでい。 きっとテイルの思うようになるだろう」

父上は騎士の家系の為剣に強い天職を望んでいるようだとメイドが話しているのを聞いたので、ご期待に沿える事を僕は願うばかりだ。

「はい、父上。 神が僕に微笑んでくれんことを」

俺はここぞとばかりに笑って見せた。


だが、今後訪れる災難など何一つこの時の俺たちは知る由もなかった。
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