錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか

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第一話 序章

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この日僕たちは領内にある大きな教会に来ている。
かなり歳老いた神父が優しい声でこちらを呼ぶ。

「では、テイル・マルディンよ! 前へ」

俺はゆっくりと少し急な階段をのぼり祭壇の前へ着く。

「主よ! テイル・マルディンに大きな祝福を与えたまえ!」

神父が声を上げ、目映いまばゆい光が辺りを包む。

「では、テイルの職を伝える! テイルの天職は錬金術師! …強く生きなさい」

特にアストレア王国では戦闘力のある職は優遇されており、イスカンディウス帝国ほどではないが、戦闘で役立たない生産職を不遇職、すなわちハズレ職とされているのだ。
僕は愕然とし、落ち込みたい気持ちもあったが父上が近くに居るのでそんな暇などなかった。
辺りを見回すと周りも騒然としており、誰も笑ってなどいなかった。
貴族の子息が生産職を賜ると言うのは不気味と言っても過言では無かっただろう。
僕は慌てて父上に駆け寄る。 すると...。

「なんてことをしてくれる! 貴様を育てるのに一体どれだけの金を使って来たと思っている! こんな事なら最初からサイドを跡取りにしておくべきだった!」

父上は完全に取り乱して、怒鳴り散らしてくる。

「父上! 錬金術師でも魔法は使えるはずです! 魔力も人より多いです! 剣だって二級騎士並みには扱えております!」

僕は父上の言葉に動揺し、もう追い縋ることしか出来ない。

「知るか! さっさと帰るぞこの恥さらし! 今後の発言権は一切無いものと思え!」

父上は全くもって聞く耳を持ってくれない。

「そんな! 僕はまだやれます! チャンスをください!」

「黙れ! 貴様の声など聴きたくもないわ! よりにもよって、錬金術師などと言う一番くだらん天職を平然と賜って!」

父上は完全に激高してしまい一切話を聞いてくれない。

すると見かねた神父が諫めてくれた。

「ここは、神聖なる教会ですぞ。 お見苦しいことはおやめくださいまし。 神からたまわってしまった物はきっと何か彼にとって役立つ物なのでしょう」

一刻も早く帰って母上にこの事を謝りたい...。 今の僕にはそれしか考えることが出来なかった。
どうして僕だけがこんな目に...?

迎えの馬車に乗り込み、教会から屋敷までの約三十分間、父上は一言も発してはくれない。
僕も喋らなかった。 否、喋る事が出来なかった。
父上の無言の圧が僕の発言を良しとしなかったのが分かっていたからだ。
悔しくて黙って拳を握りしめることしかできないことが、より一層苦しさを倍増させる。

すると自宅に到着し、兄上の母君でもある父上付きのメイドのルルファと執事長のセバスが迎えてくれた。

「「おかえりなさいませ」」

「テイルはよりにもよってハズレ職を賜ってしまった。 緊急事態だ」

するとセバスが口を開く

「なんと、神はテイル様を見放してしまったのですね...」

「あぁ。 そのことで皆で話し合う必要がある。 皆を適当な部屋に呼べ」

「かしこまりました。 少々お待ちください」

とセバスが言い、礼儀正しく礼をしたあとその場を一度後にする。

きっと母上なら不遇職の僕でも受け入れてくれるはず。

僕はきっと大丈夫。

神は僕を見放した訳じゃない。

そう心に言い聞かせながら時間が経つのを待っていた。
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