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第1章 ウスリーの戦い

8 康本による突撃命令

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        真田  ダレン騎馬隊を迎撃する
        騎 騎             ↘︎
        騎                ↘︎
        騎 騎
                     
         
                     松平(伊井)   恭仁(うやひと)親王
                     歩歩      歩
←~ウエキン               歩歩      歩
←~ライナ選帝侯          ↙︎  歩歩      歩
←~ルーデンドルフ        ↙︎   歩歩      
                ↙︎    歩歩
               ↙︎
              ↙︎       ★松平康元「敵左翼に向け、全軍突撃」
        ダミアン騎 ←←←←←←←← 松平(本多) 
            騎          歩歩
            騎         歩歩
                      歩歩
       ルビンスキ騎         歩歩
            騎         歩歩
            騎     ↖︎
                   ↖︎
★アーネン・ニコライ皇太弟       ↖︎ 松平(酒井)
「ダミアン・ルビンスキ隊は         歩歩
    横隊展開、下馬迎撃」        歩歩       ↑
                      歩歩       騎ダレン騎馬隊
         歩歩歩砲↗︎        歩歩      騎 皇国後背に回り込み中
         歩歩歩砲↗︎        歩歩     騎
         歩歩歩砲↗︎      ←砲      騎     フリアネン   島津
                    ↗︎      騎          騎→  騎~→
                   騎      騎           騎→  騎~→
                                      騎→  騎~→


皇国本陣松平康本

 「見ろ、真田がやりおった。ライナが崩れたぞ。」

 本多忠重が答える。

 「信じられん、5分と経っていないぞ。見事な。」

 「今じゃ、全軍で崩れた左翼を突く。爺!」

 「は、全軍、敵左翼に突撃。但し、後詰めの三千は除く。」

 「でんれ~い。真田が今後どう動くべきか聞いております。」

 「くうう、敵騎馬がわが左翼から回り込んで来ておる。真田に敵騎馬隊を迎撃させい。」

 康本の不幸は歩兵主体だったことだ。いや、圧倒的な火力を揃えたアーネンに突撃した時点で負けだったのだろう。



ルシア本陣

    「報告。敵右翼騎馬隊に動き。あ、発煙。煙です。ライナに流れて行きます。何もみえません。」

    煙がライナ本陣に届こうとしたときに、煙の中からぬっと騎馬の集団が現れる。皇国本陣に向けて発砲している砲兵隊の目の前に。通り過ぎる。爆発音。砲が破壊されていく。騎馬軍はルーデンドルフに向かって行く。ぶつかると思った瞬間、右に旋回。空中にポツポツと黒い点。連続する爆発音。馬が棹立ちになる。大混乱。ルーデンドルフが真っ先に逃げて行くのが見えた。真田騎馬隊が選帝侯の背後を走る。選帝侯の軍が呆然と硬直しているのが、遠目にもわかった。再び黒い点。爆発音。ルーデンドルフと同じだった。選帝侯が逃げて行く。次はウエキン。結果は同じ。みごとなのの字運動だった。わずか数分の出来事だった。


 アーネンが唖然とした顔でクツーゾフを振り返る。

 「弱いと聞いていたが、これほどとは思わなかったぞ。あっと言う間に1万8千が消えた。敵の使った投擲弾、素晴らしい。なぜ、思いつかんかった。」

 気がつくと激しく右膝が貧乏ゆすりをしていた。どうする、どうする。

 「ダミアン・ルビンスキに命令、ライナの穴を埋めろ。横隊に展開し、下馬迎撃。榴弾砲を12門、左翼に移動。ダミアンに6門、ルビンスキに6門だ。弾切れさせるなよ。敵の突撃をしのげ。散弾を優先して回せ。急げ。」

 伝令を手招きする。

 「ライナ選帝侯に伝令。祐筆、書け。文面は以下の通り。」

 【ライナはいずこ。ルシアは決戦の刻なり。切に同胞の助けを待つ。神がともにあらんことを祈る。】

 「発信人、アーネン・ニコライ皇太弟、以上だ。」

 外交辞令にくるんだ強烈なイヤミだった。さすがに恥じた選帝侯が戻ってきたのは翌日だった。両騎馬隊は戻ってこなかった。

 「さあ、ここが正念場だ。守り切るぞ。」

 ウスリーの戦いのクライマックスが訪れようとしていた。
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