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第2章 鷲巣砦の攻防
4 ルシア作戦会議
しおりを挟む春日駅伝 皇紀3630年12月1日夜
真田公の遺体は春日駅伝で荼毘(だび)に付された。伝令が四方八方に飛んだ。翌日の朝、伝令の1人がルシア側に捕まり、真田公の逝去と座光寺辰一郎繁信改め真田辰一郎繁信が跡を継いだことが知れ渡った。
12月2日朝、ルシア本隊が到着。春日駅伝を攻撃したとき、街はもぬけの殻だった。続く有賀・豊田・高島・四賀・小和田も全て誰もいなかった。そして鷲巣砦に万を越す軍勢が立てこもっていることを知る。
ルシア軍作戦会議
小和田駅伝の周辺はルシアの軍勢で埋まっていた。駅伝舎の会議室でルシアの作戦会議が行われていた。アーネン・ニコライが発言する。
「ダミアン少将よくやった。前後の報告と敵からの情報を総合的に鑑みると、サナダをやったのはお前だ。」
「はっ、ありがたくあります。が、全然実感がありません。」
「まあ、そうだろうな。僥倖(ぎょうこう)があったのも確かだ。だがお前の手柄で間違いない。誇ってよい。」
クツーゾフ正軍師が発言を求めて、手をあげる。
「跡を継いだのがザコウジだとは驚きました。【火力の薦め】の作者ですよ。」
「うむ、軍の間諜が偶然手に入れたのだったな。他にも論文を書いているのを知って、【諸兵科協働】を手に入れるのに苦労したぞ。余の作り上げた鎮定軍は、この2つが基になっているからな。参謀本部は今のルシアでは無理だ。」
「あのライナを圧倒した騎馬の機動、そして投擲弾。ザコウジだったのですね。」
「とすると・・・鷲巣砦、どうする?」
「軍を2つに割るほど余裕はありません。選帝侯が戻ってきたので3万5千。討ちもらした歩兵の数を算定しましたが、およそ1万3千前後。元々の真田が5千。1万8千はいると思われます。城にこもる敵に対して攻撃側3倍の原則からすると3万5千では不足です。かと言って、放置して大津を攻めれば後ろから攻撃してきます。悩ましいところです。」
「2つばかり試してみたい策がある。」
「ほう、何でしょう?」
「1つ目は策というより実戦サンプルを取りたい。山城に野砲がどれぐらい有効か?」
「ふむ、2つ目はなんですかな?」
「さっきクツーゾフ卿が大津を攻めれば、背後から挟撃されると言ったが、1つ忘れていることがある。わが方には火力優勢がある。大津を攻めると見せかけ、鷲巣砦から敵が出てくれば反転して野戦で決着がつけられる。そうなれば3万5千対1万8千だ。こちらは大砲100門、あっちはゼロだ。」
「なるほど・・・大津の軍勢がどう動くか勘定に入れておられないようですが。」
「ヤスモトと対戦してわかったよ。アレは殻に閉じこもったサザエだ。ザコウジをきっと見殺しにする。もちろん出てくる可能性もあるのはわかってるよ。」
「なるほど・・・出てきても、30門もあればヤスモトはあしらえますな。」
「その通りだ。じゃあ山城に大砲のテストに行こうじゃないか。」
アーネン・ニコライは鷲巣砦に手を出さず、大津を目指すべきだったと後世の歴史家は言う。
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