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第2章 鷲巣砦の攻防
7 鷲巣砦攻防戦 2
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鷲巣砦作戦室
真田繁信、平澤参謀長、2人の連隊長、18人の大隊長、参謀連がズラリと並んでいる。作戦参謀は辰一郎が司令官になってしまったので作戦参謀ナンバー2の唐沢大尉が就任している。
「ここに1万8千でこもっているわけだが、兵站参謀に改めて確認する。武器弾薬・食糧等の状況は?」
「食糧については問題ありません。元々3万が1年間こもっても大丈夫な糧食が備蓄してありました。銃については備蓄が1万丁。逃げてきた兵が1万3千ですが、銃兵には銃を捨てさせませんでしたので、ほぼ充足しております。弾薬についてですが300万発が備蓄してありました。手投げ弾につきましては第5大隊まで消費、残り約3000発強です。」
「人務参謀。」
「はっ。」
「元槍兵は何名だ?」
「約9千名であります。」
「そいつらは銃兵に配置転換だ。もう大砲相手に槍は通じん。もう銃は渡しているな?では、砦内の空いているところで銃の訓練をしてくれ。1人あたま5発の弾を使ってよい。4万5千発は痛いが訓練なしに使うわけにはいかない。」
「はっ。」
「工兵隊長!」
「はっ。」
「できるだけ砦の情報は秘匿したい。泉が湧くことをおそらく敵は知らない。凧はここでは使えないと思うが、念のためだ、泉に覆いをかけられないか?」
「覆いですか?できます。緑色で迷彩しておきましょう。」
「あと、岩山から岩石を切り出してくれ。いくら用意しておいても多すぎるということはない。兵はいくら使ってもかまわん。むしろこき使ってくれ。暇だと、よからぬことを考える。ああ、毎日敵がガンガン、ドンドンうるさい。兵の寝る場所は音の聞こえにくい本丸付近に移してやってくれ。」
「はい。了解であります。」
「あとだな、これは敵に絶対に気づかれてはならない。もうすぐ川が凍る・・・」
大津 松平家会議室
松平康本を筆頭に松平家の重鎮が顔を揃えている。いずれも顔色が冴えない。参謀長本多重忠が状況を報告している。
「松平家の兵力は壊滅的な状況です。3万のうち、今手元にあるのは3千のみ。領国中に動員をかけておりますが、時間がかかります。砲についてはありったけ大津から持ち出してしまったため、全くありません。」
松平康本がイライラした様子で親指の爪を噛む。
「人集めを急がせい。軍勢がなければどうにもならん。ええい、どうしてこうなった?そもそも島津めが独断先行せんけりゃこうはならなかった。島津はどうしている?」
「島津公は負傷され重体です。島津軍は本国へ帰るそうです。」
「負けた原因のくせに、のうのうと自分たちだけ本国に戻るつもりか?」
「もともと島津は援軍。ましてや島津公は重体。ここで引き止めては、後で護国省やら豊臣家にあらぬことを告げ口されるやも知れませぬ。それに恭仁親王も本国にお戻しせねば、松平家に何があるかわかりません。ちょうど良い口実になります。恭仁様には重体の島津公を本国に連れて行って欲しいとお願いするのです。こう申しては何ですが皇族に何かあれば父上にも類が及びますぞ。」
「ち、父上にか?」
明らかに怯む。50を越えても父親が怖いのだ。父親は松平家光。松平家の名前には代々【家】の字を付けるのが慣例だ。だが康本には家の字が入っていない。20代の頃、おそるおそる父親に聞いたことがある。その時はジロリと睨まれて、こう言われた。
「わが父の名は秀忠、必ず【家】の名が入る訳ではない。われが付けた康本では不服か?」
康本、それ以上は何も言えなかった。だが松平家を250万石にのし上げた家光の祖父の名前は家康と言った。自分の名前に【家】がついてないというのは劣等感の元となっていた。
「・・・恭仁殿下を本国にお返しもうせ。」
真田繁信、平澤参謀長、2人の連隊長、18人の大隊長、参謀連がズラリと並んでいる。作戦参謀は辰一郎が司令官になってしまったので作戦参謀ナンバー2の唐沢大尉が就任している。
「ここに1万8千でこもっているわけだが、兵站参謀に改めて確認する。武器弾薬・食糧等の状況は?」
「食糧については問題ありません。元々3万が1年間こもっても大丈夫な糧食が備蓄してありました。銃については備蓄が1万丁。逃げてきた兵が1万3千ですが、銃兵には銃を捨てさせませんでしたので、ほぼ充足しております。弾薬についてですが300万発が備蓄してありました。手投げ弾につきましては第5大隊まで消費、残り約3000発強です。」
「人務参謀。」
「はっ。」
「元槍兵は何名だ?」
「約9千名であります。」
「そいつらは銃兵に配置転換だ。もう大砲相手に槍は通じん。もう銃は渡しているな?では、砦内の空いているところで銃の訓練をしてくれ。1人あたま5発の弾を使ってよい。4万5千発は痛いが訓練なしに使うわけにはいかない。」
「はっ。」
「工兵隊長!」
「はっ。」
「できるだけ砦の情報は秘匿したい。泉が湧くことをおそらく敵は知らない。凧はここでは使えないと思うが、念のためだ、泉に覆いをかけられないか?」
「覆いですか?できます。緑色で迷彩しておきましょう。」
「あと、岩山から岩石を切り出してくれ。いくら用意しておいても多すぎるということはない。兵はいくら使ってもかまわん。むしろこき使ってくれ。暇だと、よからぬことを考える。ああ、毎日敵がガンガン、ドンドンうるさい。兵の寝る場所は音の聞こえにくい本丸付近に移してやってくれ。」
「はい。了解であります。」
「あとだな、これは敵に絶対に気づかれてはならない。もうすぐ川が凍る・・・」
大津 松平家会議室
松平康本を筆頭に松平家の重鎮が顔を揃えている。いずれも顔色が冴えない。参謀長本多重忠が状況を報告している。
「松平家の兵力は壊滅的な状況です。3万のうち、今手元にあるのは3千のみ。領国中に動員をかけておりますが、時間がかかります。砲についてはありったけ大津から持ち出してしまったため、全くありません。」
松平康本がイライラした様子で親指の爪を噛む。
「人集めを急がせい。軍勢がなければどうにもならん。ええい、どうしてこうなった?そもそも島津めが独断先行せんけりゃこうはならなかった。島津はどうしている?」
「島津公は負傷され重体です。島津軍は本国へ帰るそうです。」
「負けた原因のくせに、のうのうと自分たちだけ本国に戻るつもりか?」
「もともと島津は援軍。ましてや島津公は重体。ここで引き止めては、後で護国省やら豊臣家にあらぬことを告げ口されるやも知れませぬ。それに恭仁親王も本国にお戻しせねば、松平家に何があるかわかりません。ちょうど良い口実になります。恭仁様には重体の島津公を本国に連れて行って欲しいとお願いするのです。こう申しては何ですが皇族に何かあれば父上にも類が及びますぞ。」
「ち、父上にか?」
明らかに怯む。50を越えても父親が怖いのだ。父親は松平家光。松平家の名前には代々【家】の字を付けるのが慣例だ。だが康本には家の字が入っていない。20代の頃、おそるおそる父親に聞いたことがある。その時はジロリと睨まれて、こう言われた。
「わが父の名は秀忠、必ず【家】の名が入る訳ではない。われが付けた康本では不服か?」
康本、それ以上は何も言えなかった。だが松平家を250万石にのし上げた家光の祖父の名前は家康と言った。自分の名前に【家】がついてないというのは劣等感の元となっていた。
「・・・恭仁殿下を本国にお返しもうせ。」
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