大砲と馬と 戦術と戦略の天才が帝国を翻弄する

高見信州翁

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第4章 ルシアの攻勢

10 アーネン・ニコライ

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    ようやくアーネンが新潟に到着した。まだ全軍は到着していない。

    早速アガペーエフ大将から状況を確認する。大砲の数という自分の優位が失われたことに衝撃を受けている。しかも間接射撃だと。気球観測は自分も体制を整えていただけに、悔しい。先を越された。

    「八幡に向けて進軍中、小坂山と有明山から山越しに砲撃を受け、戦死1千4百、負傷1千6百、合わせて3千の損害を受け、退却いたしました。」

    「相手の司令官は誰だ?」

    「カンパクの懐刀と言われた石田大将です。参謀長が真田繁信と聞いております。」

    「真田か!クツーゾフ、真田だ。又してもやられたぞ。」

    「本国に大砲の追加輸送を要請いたします。が・・・。」

    「が、何だ?」

    「千門はとても無理でしょう。戦列艦用の巨大砲なら集まるでしょうが、野戦で使える軽砲となると追いつきません。戦列艦の砲とて長い時間と巨額の予算をかけて作り上げたものです。打出の小槌はないと思った方がいいでしょう。」

    「火力劣勢前提か・・・気が滅入るな。新潟港の要塞化工事を始めろ。城壁の高さは3メートルあれば良い。だが、厚みは砲弾の連打に耐えられる設計にしろ。あと、修復のしやすさも考えにいれておけ。」

    「かしこまりました。」

    「ああ、地図を持って来てくれ。阿賀野川と信濃川を天然の堀として城壁を築けば一番近くでも5キロを越すな?停泊中の艦船を攻撃出来ないような広大な築城を頼む。距離的に一番近いのは?信濃川の西側と阿賀野川の東の海に近いほうか・・・。ここには出城を築け。長射程の大砲を持ってきても届かないようにな。海からの補給が続く限り守り抜ける要塞に仕上げろ。」

    手で顎を撫でる。

    「何か忘れているような気がする。あ、そうだ気球だ。皇国の気球に要塞を偵察されたくない。帝国で一番長射程の砲はカルバリン砲だな?射程6.5キロ?十分だ。その弾をだな、榴弾にして空中で爆発させて落とすんだ。カノン砲で榴弾は撃てない?バカな。皇国は4キロの距離で榴弾を飛ばしたぞ。考えろ。敵が出来たんだ。こちらも出来る。数を撃てばいつかは命中する。というか対空砲があるとわかれば、やってはこん。開発急げよ。出来たばかりだが熱気球をマトに使ってよい。熱気球を落とせれば、皇国の気球も落とせる。」

    かくて史上初の対空砲が出現する。


    「何?皇国軍が関東方面から進軍してくる?」

    松平家の攻勢だった。
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