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第5章 混乱
5 東半分の喪失
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三条の戦いの結果、皇国の東の半分がルシアに占領された。関東と東北が敵の手に落ちれば、自動的に蝦夷地も落ちる。防げないからだ。
皇国の東半分はひどいことになっている。皇太弟は極力、略奪を抑えようとしているが、帝国はそこここに後進性を内包している。農奴に近い兵たちの楽しみは略奪だった。元々帝国の兵站線は細い。補給は略奪頼みのところがあった。兵站だけでは軍を支えることが出来ない。
結果、何が起こったか?ルシアの兵どもは白昼堂々と民家に押し入った。男を殴り、女を犯した。物を取った。抵抗出来ない被征服民に何をしても罪に問われなかった。ルシア兵にしてみればわけのわからない言葉を喋る異国民は人ではなかった。皇国民のヘイトがたまっていく。ヘイト値が見えない限界を越えたとき、住民によるゲリラ活動が始まった。ゲリラ組織が各地で形成されて行く。皇国情報庁がその組織を傘下におさめて行く。
越後方面軍司令部真田繁信
「聞いたか?伊達の爺さん(独眼竜政宗のこと)が地下に潜ったそうだ。盛んにルシアの情報を流してくれているそうだ。」
作戦参謀平澤少将が答える。
「ご老体なのに、大丈夫ですかね?」
「嫡男が三条の戦いで戦場に取り残され、捕虜になっちゃったからねえ。5歳の子供を元服させて光宗と名乗らせて家督を継がせたそうな。ルシアも皇国の徴税組織はそのまま使うつもりなんだろう。ルシア相手に税金を納めるなんて、ぞっとするね。」
「で、ご老体はゲリラ活動ですか?それがバレたら伊達家はまずくないですか?」
「元々、隠居だからね。山奥の隠宅で余生を過ごしていることになってるらしいよ。」
「ははあ。関東はどういう状況ですか?」
「似たようなもんだね。ただ松平家はルシアにとって三条の戦いの首謀者だからね。指名手配されているよ。」
「では皇国の東に居場所はありませんね。こっちに逃げて来ていないんですか?」
「越後方面軍の影響下の土地を避けて、京でも目指しているんじゃないか?」
「なぜ越後方面軍を避けるんですか?」
「そりゃあ、命令違反で逮捕されるからだろ?今、本人不在で軍事裁判にかけられている。命令違反で15万を壊滅させた罪は大きい。逃げて来て越後方面軍に参加した兵は3万にすぎない。」
「たった3万!」
「まったく、逮捕したら軍事法廷にかけて即日死刑だ。なあに、将官以上が3人いれば軍事法廷が開ける。即席裁判で、その日のうちにあの世に行ってもらう。本気だよ?まったく、小官が掌握するはずだった15万を無駄にしやがって、おまけに皇国の東半分を失った。」
石田大将も否定しなかった。
「確かになあ、東の民を一刻も早く解放してやりたいが、兵力が足りない。」
「今のところ、攻勢に出る余裕がありません。ここは我慢のしどころですね。どうせ、アーネンも占領地が増えて、攻めて来る余裕はないでしょう。」
ルシア皇国侵攻軍司令部アーネン・ニコライ
「占領地に兵力が吸い取られている。もはや半分だぞ。これ以上はいかん。要請があっても受けるな。」
「ですが、まとまった兵力でないと夜中に襲われたりする事例が続出しています。」
「兵を出すのは要地だけにしろ。後は原住民の行政組織に任せろ。要塞の工事はどうなってる?」
「はっ、あと3ヶ月もあれば完成するかと。」
「急げ。」
皇国の東半分はひどいことになっている。皇太弟は極力、略奪を抑えようとしているが、帝国はそこここに後進性を内包している。農奴に近い兵たちの楽しみは略奪だった。元々帝国の兵站線は細い。補給は略奪頼みのところがあった。兵站だけでは軍を支えることが出来ない。
結果、何が起こったか?ルシアの兵どもは白昼堂々と民家に押し入った。男を殴り、女を犯した。物を取った。抵抗出来ない被征服民に何をしても罪に問われなかった。ルシア兵にしてみればわけのわからない言葉を喋る異国民は人ではなかった。皇国民のヘイトがたまっていく。ヘイト値が見えない限界を越えたとき、住民によるゲリラ活動が始まった。ゲリラ組織が各地で形成されて行く。皇国情報庁がその組織を傘下におさめて行く。
越後方面軍司令部真田繁信
「聞いたか?伊達の爺さん(独眼竜政宗のこと)が地下に潜ったそうだ。盛んにルシアの情報を流してくれているそうだ。」
作戦参謀平澤少将が答える。
「ご老体なのに、大丈夫ですかね?」
「嫡男が三条の戦いで戦場に取り残され、捕虜になっちゃったからねえ。5歳の子供を元服させて光宗と名乗らせて家督を継がせたそうな。ルシアも皇国の徴税組織はそのまま使うつもりなんだろう。ルシア相手に税金を納めるなんて、ぞっとするね。」
「で、ご老体はゲリラ活動ですか?それがバレたら伊達家はまずくないですか?」
「元々、隠居だからね。山奥の隠宅で余生を過ごしていることになってるらしいよ。」
「ははあ。関東はどういう状況ですか?」
「似たようなもんだね。ただ松平家はルシアにとって三条の戦いの首謀者だからね。指名手配されているよ。」
「では皇国の東に居場所はありませんね。こっちに逃げて来ていないんですか?」
「越後方面軍の影響下の土地を避けて、京でも目指しているんじゃないか?」
「なぜ越後方面軍を避けるんですか?」
「そりゃあ、命令違反で逮捕されるからだろ?今、本人不在で軍事裁判にかけられている。命令違反で15万を壊滅させた罪は大きい。逃げて来て越後方面軍に参加した兵は3万にすぎない。」
「たった3万!」
「まったく、逮捕したら軍事法廷にかけて即日死刑だ。なあに、将官以上が3人いれば軍事法廷が開ける。即席裁判で、その日のうちにあの世に行ってもらう。本気だよ?まったく、小官が掌握するはずだった15万を無駄にしやがって、おまけに皇国の東半分を失った。」
石田大将も否定しなかった。
「確かになあ、東の民を一刻も早く解放してやりたいが、兵力が足りない。」
「今のところ、攻勢に出る余裕がありません。ここは我慢のしどころですね。どうせ、アーネンも占領地が増えて、攻めて来る余裕はないでしょう。」
ルシア皇国侵攻軍司令部アーネン・ニコライ
「占領地に兵力が吸い取られている。もはや半分だぞ。これ以上はいかん。要請があっても受けるな。」
「ですが、まとまった兵力でないと夜中に襲われたりする事例が続出しています。」
「兵を出すのは要地だけにしろ。後は原住民の行政組織に任せろ。要塞の工事はどうなってる?」
「はっ、あと3ヶ月もあれば完成するかと。」
「急げ。」
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