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第5章 混乱

7 外交

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明宮廷

    「陛下、倭国(皇国のこと)より使者が参っております。」

    明とは秀吉の朝鮮侵攻以来、公式には交戦状態が続いている。万暦帝の治世。明は李氏朝鮮に援軍を出した。この時の財政負担が明に重くのしかかっていた。

    「平和を回復し、国交を結びたいとのこと。国交樹立の暁には相互に大使館を設置して大使を置き、末永く両国の友誼を結びたいと。」

    「またか。我が国は中華の国にして倭国は対等の相手ではない。朝貢国となるならいざ知らず、そのような無礼な申し出、聞くも煩わしいわ。」

    明の中華思想は変わっていなかった。明とはいまだ外交的には成果ゼロ。明の特徴は皇帝の独裁性が非常に強いこと。長年仕えた寵臣でも、皇帝の命令で処刑されることがあった。なので皇帝の能力が国の盛衰に直結した。万暦帝は・・・有能とは言えなかった。のちに明を末期症状にした皇帝と呼ばれる。万暦帝の長い在位は続く。



スウェーデン外務省

    「大臣、皇国大使が面会を求めておられます。」

    「お通ししろ。」

    「おひさしぶりです。今日は情報交換に参りました。」

    「ほう、どのような情報ですかな。」

    「ルシアバルト海艦隊の動向というところですかな。」

    「ほほう、ルシアのバルチック艦隊の3分の1が極東に回航されている件ですかな?」

    「ご存知でしたか。ですが、ちょっと微修正がございます。バルト海にはルシアの戦列艦は現在35隻しかおりません。」

    「なんと!いや、それは事実で?」

    至急調査せねばならなかった。40隻ではなかったのか?スウェーデン艦隊は戦列艦41隻でルシアとほぼ互角。だが、41対35ではどうか?いや至急、王に報告せねばならない。

    しかし、皇国か、油断のならない・・・。わが国が掴んでいなかった情報を売りつけてくるとは。

    グスタフ・アドルフ3世・スウェーデン国王。

    「なに?そうか35隻しかいないのか。う~む、食指は動くが陸軍はドイツで忙しい。動けんな。だが、監視は強化しろ。他国にこのような情報を教えられるようでは話にならん。情報機関を強化しろ。」

   

     ルシア側もスウェーデンの監視の目が強化されたことは敏感に察知する。以後、これ以上の艦の引き抜きは出来なくなって行く。



アーネン・ニコライ

    「艦が足りない・・・港を1つ封鎖するのに最低4隻いる。が、修理・メンテも必要だ。6つ封鎖するのが精一杯だ。」

    クツーゾフが嘆息する。

    「バルト海が遠すぎるのです。」
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