大砲と馬と 戦術と戦略の天才が帝国を翻弄する

高見信州翁

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第6章 反撃

10 咄嗟(とっさ)遭遇戦 3

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皇国軍第3軍団第3師団平澤少将

    「何?捕虜を捕まえた?軍団司令部へ送れ!」


皇国軍第3軍団司令部真田中将

    捕虜となった華麗な軍服のルシアの騎馬将校が連れて来られた。

    「国際法に基づく正当な処遇を求める。姓名アンドレア・イバシチェンコ    所属ルシア軍    階級中尉。」

    真田中将

    「ああ、それはもちろん保証するよ、イバシチェンコ中尉。」

    「小官は姓名・所属・階級以外は何も喋らない。」

    「ああ、喋りたくなければ無理に喋らなくていいんだよ。ご苦労だったね。しばらく休みたまえ。」

    イバシチェンコ中尉が退室するのを待って、前田中将を振り返る。

    「ルシア関東派遣軍です。直立1本槍の左右に向かい獅子の襟章。モスコー近辺の貴族を集めて作った騎馬師団です。ついに見つけた。」

    だが、このときまだ皇国軍はルシアが倍以上の戦力を有していることに気づいていなかった。

ルシア関東派遣軍    63,000    砲230門    パーヴェル・アレクサンドロヴィチ元帥(帝族・ルシア大公)

前衛師団    7,000    フリアネン少将

主力軍       31,000    ウラジーミル・アガペーエフ大将

    ・第1師団    9,500    フョードル・トレポフ少将

    ・第2師団    10,500    ボリス・アンネンコフ少将

    ・第3師団    11,000    ピョートル・ブラーンゲリ少将

予備軍    15,000    イワン・オボレンスキー中将

    ・第1師団    7,700    アブラム・ガンニバル少将

    ・第2師団    7,300    ルードルフス・バンゲルスキス少将

大公直轄師団    10,000    フルフラム・アンネン少将



午前8時30分

    「第2師団池田少将が到着されました。」

    「平澤少将の右翼を守れと伝えろ!」

    「はっ。」


同時刻ルシア側

    主力軍第3師団    11,000    ピョートル・ブラーンゲリ少将到着。第1師団と第2師団の先鋒も。

    アガペーエフ大将が確認する。

    「第1師団と第2師団の数は?」

    「第1師団が約5,500、第2師団が約4,500です。」

    「第3師団が中央、第2師団は右翼、第1師団は左翼だ。」
    





ようやく霧が晴れて来た。

皇国軍第3軍団司令部

    「敵が多い・・・。およそ25,000!」

    それを受けて繁信が叫ぶ。

    「味方は15,000ってか。ええ?燃えるじゃないかあ!」

    わざと言っている。雰囲気を悪くするわけにはいかないからだ。

    そこかしこで微苦笑している。そこで思い出す。今、自分たちは皇国の不世出の天才の指揮下にあるのだと。いや、公(おおやけ)には前田軍団長の指揮であるけれども。

    「平澤少将の負担が大きいなあ。中央と敵右翼を一手に引き受けているからなあ。早く残りの兵力来て欲しい。」

    まだ戦闘が始まって30分しか経っていない。だが、初戦で前衛騎馬師団の先鋒の4度の騎馬突撃を退けた平澤師団の兵士はもっと長く感じているだろう。


ルシア関東派遣軍司令官パーヴェル・アレクサンドロヴィチ元帥

    帝族である。先帝の8男だ。つまり現皇帝の弟である。つまり皇太弟の弟でもある。つまり関東方面軍の司令官職に適任なのである。血筋だけ見れば。

    知識は豊富で学者肌だ。軍隊の経験はない。つまり神輿なのだ。だから実際の指揮はアガペーエフ大将がとっている。

    血筋だけで身分が決まる中世的な後進性をルシアは多分に残していた。それは皇国も一緒だが、皇国の場合は俗世の身分は軍では関係なく、ただ軍での階級が全てという原則が確立されている。

    なにかルシアの指揮系統に問題が起こりそうな気がする。
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