大砲と馬と 戦術と戦略の天才が帝国を翻弄する

高見信州翁

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第6章 反撃

9 咄嗟(とっさ)遭遇戦 2

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    「今宿舎にしている未久保村を拠点にするぞ。兵站参謀は武器弾薬の確認。陣地を構築している時間はない。平澤少将!」

    「はい。」

    「敵は騎馬で来る。未久保村西方にて方陣防御。すまん、8,000のうち2,000を予備として残してくれ。」

    「了解です。」






午前8時

ルシア軍関東派遣軍前衛騎馬師団フリアネン少将

    「前方に蛮軍がいる。」

    前衛騎馬師団7,000、だが今は4,000ほどしかいない。ええい、4,000だけで騎馬突撃だ。

    「今より前方の敵に突撃をかける。」

    「ウラー!!!!!!」

    ドドドドドドドっ!

    馬蹄の音が響き渡る。



皇国第3軍団第3師団

    1,000名毎に6つの方陣を作り終わった。2,000は予備として未久保村に控えている。

    最先任曹長(下士官の神さま)が怒鳴る。

    「弾込めは終わっておるな?では【ダンジン(銃剣)】装着。いいかあ!方陣の一番外側の兵は向けた【ダンジン】を決して馬からそらすな。馬はなあ、尖ったもん向けられると突っ込んではこん。根性入れやあ!」

    ドドドドドドドっ!

    馬蹄の音が響き渡る。

    ぬっと霧の中から無数の騎馬が現れる。

    方陣の中に位置する兵が発砲する。弾に当たった兵が落馬する。ルシアの騎馬隊も撃ち返す。今度は皇国の方陣の中で何名かが崩れ落ちる。

    「クソっ、既に方陣を組んでやがる!」

    突撃して来た騎馬隊は方陣に突っ込む寸前まで肉薄するが、馬がそれ以上進まなくなる。最先任曹長の言った通り、馬は騎手の言うことを聞かない。馬も怖いのだ。自分からギラリと光る刃物に突っ込む勇気はない。

    「ちくしょう、右旋回だ。後退!」

    逃げる騎馬隊に方陣から追い撃ちがかかる。騎馬隊にとってこの際の損害が一番大きかった。


皇国軍第3軍団司令部真田中将

    「まずは撃退したか。騎馬にはまだ方陣は有効だな。大砲には弱いが。」

    前田中将が言う。

    「平澤少将に伝令!『只今の奮戦、見事なり。』とな。」

    おや、この司令官、褒めるタイミングは的確だ。指揮を任せる度量もある。

    「手投げ弾を使われたら、つらかったところですが、さすがに全軍には行き渡っていないようですね。」

    手投げ弾が登場して1年。両国とも量産に励んでいるが、全軍には行き渡っていない。が、先に作った側の優位はある。保有量は皇国の方が多い。



ルシア軍フリアネン少将

    「再編成が終わったら、直ちに突撃せよ。」

    ウスリーの経験者・フリアネン、戦意旺盛だ。短時間のうちに合わせて4度、突撃を敢行する。

    しかし、相手もウスリーの経験者・平澤少将だ。4度の突撃を悉(ことごと)く撃退する。




    後に言う、川越の戦いは始まったばかりである。
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