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第7章 また混乱

1 康本のささやき

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    「お初にお目にかかる。松平康本と申す。面会を許していただき、かたじけのうござる。」

    「確かに面と面と合わせるのは初めてだな、ヤスモト殿。」

    「早速だが、貴国に亡命いたしたい。願いをかなえていただけるかな?」

    「ほほう、それは又なんですなあ。」

    「タダとは言わぬよ。お土産(みやげ)はある。」

    「ほう、なんですかな?」

    「博多には行ったことはおありかな?」

    「イヤ、東日本しか知りません。・・・まさか。」

    「皇国はな、守備の重点を博多においておる。各大名は身代(しんだい)に応じて兵を出しておる。松平家も3万ほど出しておる。」

    「・・・ようやく話が見えて来ました。だが、博多の3万はヤスモト公の言うことを聞きますかな?おそらく、皇国に忠誠を誓わせられているはず。」

    「松平家光が既に博多の3万を押さえておる。そうでなければここには来ん。」

    これは面白くなってきた。



博多鎮守府

    皇国守備兵力10万。大半が大名たちが出した藩兵だ。総司令官福島正利(ふくしま    まさとし)大将。豊臣家子飼いの武将だ。                        

    10万の兵をまとめておける場所はない。10数ヶ所に分散して駐屯している。

    夜中、その10数ヶ所全てを松平の兵が襲った。



太宰府ほど近く、福島正利寝所にも兵が乱入。

    「何事か!」

    「久しぶりだのう権少将(ごんのしょうしょう    正利の官位)。」

    「げえ、右大臣(松平家光の官位)か!」

    「お主は捕虜よ。おとなしくしておれ。殺しはせぬよ。」

    「こ、こんなことをして逆賊になりたいのか!源氏長者(げんじのちょうじゃ)の名が泣くぞ。」

    「もう後がないのでのう。ルシアと手を組むことにした。」



博多湾沖合い

    無数のルシア艦が博多湾に侵入してくる。1隻だけ蒸気艦がいたが、多勢に無勢、ルシアの戦列艦に押し包まれ、撃沈される。

 埠頭は既に松平の兵に押さえられていた。船着場に続々と横づけしていく。兵や砲を大量に吐き出す。

    「急げ、博多の周囲に野戦陣地を構築するのだ。」

    ルシア軍総司令官アーネン・ニコライ。鷲巣の戦いと攻守を逆転させた戦いが始まろうとしていた。

    真田繁信対アーネン・ニコライ。博多攻囲戦勃発(ぼっぱつ)。
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