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第7章 また混乱

2 博多攻囲戦 1

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ルシア博多侵攻軍    45,000    砲1200門    アーネン・ニコライ皇太弟

皇太弟直轄軍    10,000    アーネン・ニコライ皇太弟

小倉方面軍    10,000    サルティコフ中将

佐賀方面軍    15,000    クリモヴィッチ中将

唐津方面軍    10,000    スヴォーロフ中将

松平軍    30,000    松平家光大将(皇太弟直轄軍と協働)

ルシア海軍博多分遣艦隊    バグラチオン少将

    蒸気艦1隻・戦列艦10隻・フリゲート艦30隻・輸送艦多数

    今回はアーネン・ニコライが直々に指揮を取っている。

    小倉方面担当はサルティコフ中将。宗像まで進軍し、そこで防衛ラインを敷くよう命令されている。

    佐賀方面はクリモヴィッチ中将。太宰府天満宮を過ぎたあたりで防衛陣を敷く。

    唐津方面はスヴォーロフ中将。糸島を勢力圏におさめ、唐津からの反撃に備える。

    「司令官より発令。各軍は指定の地まで進出ののち、防御陣地を構築せよ。決してそれ以上前進するな!」

    アーネンは十分な防衛面積を確保すると、防衛陣地の構築に専念する。

    「さあて、マジックシゲノブが出て来る前に十分な防御陣地を築かせてもらうぞ。」

    ルシアは山を先に取り、山上に砲台を築き始める。砲1200門?どうやって調達したのだ?陳腐化した戦列艦の砲をおろしたのだ。ルシアも必死になって砲を調達している。砲の数が3倍も違ってくると、まず勝てない。ヨーロッパ各国からも輸入するべく努力している。

    千曲の戦いにおいて1000門の大砲が使用され、なおかつ史上初の間接砲撃がなされた。ルシアだけでなく、ヨーロッパ各国も衝撃を受けた。当時はヨーロッパ列強ですら、国によっては持っていた大砲は数百門がいいとこだった。となれば1会戦に持っていけるのは、せいぜい数十門だった。この時までは、まだテルシオ戦術(スペイン的な方陣)が当たり前の時代。そこへウスリーの戦いでアーネンが大砲によって歩兵方陣を粉砕してみせた。わが国も軍編成を見直さなければと言っているところへ、これである。

    ある国の陸軍卿は、その報告を聞いたとたん椅子を蹴倒したという。大使館を置いた国からは観戦武官の派遣の打診が相次いだ。

    博多の戦いは皇国・ルシアとも、それぞれの友好国からの観戦武官が鈴なりとなった戦いだった。皇国側も観戦武官を積極的に受け入れる。大砲が売れるからだ。

    平出屋(株式会社)社長室    座光寺幸隆(ざこうじ     ゆきたか)

    「売ってくれという国には、どんどん売ってやれ。売った大砲が皇国に向けて使われる可能性がある?かまうか。金がいるんだ。その頃には、どうせ【治兵衛14】が完成して【治兵衛13】は時代遅れになってるさ。」

    もちろん現時点での敵対国に売りはしない。あくまで友好国だ。明でさえ、飛ぶように売れる。琉球経由で赤羽屋が売っている。明は現時点では戦争していないので大丈夫。又、工場を増設しなければ。



博多周辺の大名家

    この時点で皇国側は全く混乱している。なにしろ九州全域を統括していた博多の九州方面軍が壊滅してしまったのだ。指揮命令系統がなくなって、各大名も個別の判断を強いられている。

毛利秀就(もうり    ひでなり)120万石    従四位下右近権少将    兵力30,000

    大大名のお坊ちゃんで、何不自由なく育ち、性格粗暴。緊急事態に際して、なんとか3万を絞り出し、参陣して来た。現在、関門海峡を渡海中。

 細川忠利(ただとし)小倉藩40万石    兵力12,000

    細川ガラシャの3男である。いや失礼、細川忠興の3男である。バランスのよい性格をしている。

鍋島忠直(なべしま    ただなお)佐賀35万石    従五位下、肥前守    兵力10,500

    「うかつに攻めるな!攻めてもつぶされるだけだ。加藤家、小西家、島津家の援軍を待て。」

    加藤家は熊本北部28万石、小西家は熊本南部24万石である。ちなみに加藤家と小西家は仲が悪い。昔、加藤清正が小西行長を薬屋のせがれ風情(ふぜい)呼ばわりをして以来、家同士の関係もそうなっている。

    島津久豊    77万石    従三位中納言    薩摩守(さつまのかみ)

    「編成を急がせい。必ず3万以上は揃えろよ。・・・ワシは騎馬で先に佐賀に行く。後からこい。」

寺沢堅高(てらさわ    かたたか)唐津12万石    従五位下、兵庫頭    兵力3,600

    「大変だああ!至急鍋島家に援軍を請え!」

    この要請は鍋島忠直によって黙殺される。自分の尻に火がついているのだ。唐津のことなど、知ったことか。
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