大砲と馬と 戦術と戦略の天才が帝国を翻弄する

高見信州翁

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第7章 また混乱

3 博多攻囲戦 2

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アーネンVS松平家光

    「アーネン・ニコライである。松平公か?」

    「いかにも。お初にお目にかかる。」

    「この度のご尽力、痛み入る。」

    「なんの、貴国への亡命とウラジオストック周辺で侯爵として領地を賜る件さえ守っていただければ殿下に忠誠を誓い申す。もはやこうなっては松平家にとって、皇国に立つ場所は寸土(すんど)もなくなった。皇太弟殿下におすがりするよりない。」

    「お任せあれ。悪いようにはしない。」

 労せずして博多が手に入ったのだ。安いものだ。それにこの親子、戦はダメだが謀略には使える。油断も隙もあったものじゃないがな。きっとまだ皇国内に間諜網を張り巡らせて維持しているだろう。それを利用させてもらおうじゃないか。



皇国護国省参謀本部

    【博多陥落】、激震が皇国を走る。

    蜂須賀参謀長が怒鳴る。

    「福島大将は生きているのか?死んでいるのか?」

    「福島鎮守府司令官は捕虜となった模様です。同時に松平以外の7万の兵も武装解除されました。」

    「クソがあ!松平の軍をなぜ武装解除もせず放置したあ!」

    「そ、それは松平軍博多駐屯軍司令官鳥居元長が皇国に忠誠を誓いましたし、その・・・」

    豊臣秀安の方をちらっとみる。関白殿下、ふっと目をそらす。それを見て、蜂須賀参謀長は敏感に察知する。あ、これは関白殿下が又、温情を出されたか。ちっ、これ以上突っ込むのはマズイ。蜂須賀参謀長、すんでのところで踏みとどまり、言おうとしていたこととは違う内容を口にする。

    「全大名に動員令を出せ!今は夏、秋の収穫時期までに農民を返せばいい。金は護国省が用意してやる。とにかく人を集めろと言え。直轄領については、徴兵制を実施する。海軍は蒸気艦を何隻出せる?」

    海軍部長伊集院大将が答える。

    「今動けるのは6隻だけです。」

    同じ大将同士だが蜂須賀の方が先任である。大将同士なのでタメ口でもいいのだが、蜂須賀の方が年上でもあるので丁寧な応答になっている。

    「呉に集結次第に博多に攻撃をかけてくれ。」

    「畝傍艦長木島大佐を准将に昇進させ、6隻で戦隊を構成し博多湾に強襲をかけます。」

    「頼む。」

    「それから各大名に通達。兵力が揃うまでうかつに攻撃するなと釘をさしておけ。」

    通達より先に毛利秀就(ひでなり)が3万を率いて九州に上陸してしまう。功を焦る彼は小倉藩を巻き込み、猪突猛進してしまう。

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