大砲と馬と 戦術と戦略の天才が帝国を翻弄する

高見信州翁

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第7章 また混乱

4  博多攻囲戦 3

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細川家居城小倉城

    毛利家と細川家の事前打ち合わせを行っている。官位も石高も毛利家が上である。

    「毛利秀就(ひでなり)である。このまま海岸沿いを進み、大黒神社の横を通り、垂水峠を目指したいと思う。承知くだされたい。」

    細川忠利、びっくりする。

    「お待ちなされよ。いきなり進軍すると言われるか。少し、無謀では?」

    「いや、敵に時間を与えてはならぬ。すぐに進軍して敵を討つべきと存ずる。毛利が3万、細川家が1万2千、合わせて4万2千。敵が7・8万いようとも、多方面を守らねばならず勝機はある。」

    「今、敵の布陣を確かめさせております。それを待ってからでも遅くはござらぬ。」

    「先ほども言ったが時間が勝負。毛利家だけでも進軍いたす。ごめん。」

    「待たれよ。それほど、言われるなら同道いたす。」

    かくして海沿いの進軍路が決定される。

    細川忠利は使い番を呼ぶ。

    「鍋島藩に毛利家と細川家は攻撃を開始すると伝えよ。」



   




    遠賀川を越え、西に進軍する。岡垣に入る。大黒神社が見えて来た。

    毛利家の敗因は偵察を怠ったこと。ルシア軍の勝因は先に山を取って砲台群を築けたことだ。海に面した湯川山には海岸線を守るウォズニアッキ砲台。湯川山と孔大寺山の間の垂水峠を抑えるマカロワ砲台とトムキン砲台。湯川山側がマカロワ砲台、孔大寺山側がトムキン砲台だ。

    ウォズニアッキ砲台から大黒神社まで3キロほど。これは何を意味するか?毛利家と細川家の軍勢はさえぎる物のない平地で砲撃にさらされるということだ。しかも密集隊形だ。







    ウォズニアッキ砲台から試射が始まる。榴弾だ。爆発する。毛利軍の中ほど、赤い煙だ。すぐに効力射が始まる。続いてマカロワ砲台から試射。爆発。黄色い煙だ。まもなく、マカロワ砲台も効力射を始める。続いてトムキン砲台から試射。爆発。青い。

    アーネン・ニコライは千曲の戦いの繁信のやり方をそっくり真似してみせた。敵の素晴らしいところを見習うに躊躇(ちゅうちょ)はない。間接射撃?皇国だけの専売特許と思うなよ。ルシアの砲兵隊を侮るな!

    絵に書いたような3点からの十字砲火。大名たちは最近の戦についてまるで理解がおよんでいなかった。まさに百聞は一見にしかず。

    ドドーン!

    ズガーン!

    人も馬も吹き飛ばされて行く。千曲の戦いが立場を変えていた。今度、一方的にやられているのは皇国軍だ。


マカロワ砲台観戦武官団    フランス観戦武官ルイ・ニコラ・ダヴー少佐

    「小官は砲兵士官だが、砲兵の未来は明るい!見ろ、圧倒的じゃないか!」

    オーストリアの軍服を着た観戦武官が答える。

    「状況と運用による。マカロワ砲台だけで100門はあるぞ。それにそれに砲台ごとに弾着の色が違う。目がさめる思いだよ。」

    「まさにまさに!観戦武官に選ばれて幸運だった。」

    ライナの観戦武官が言う。

    「だが、最初に着色弾を使ったのはマジックシゲノブだぜ。1000門を越える大砲を並べて見せたのもシゲノブだ。」

    ダヴー少佐が答える。

    「1000門を超える大砲同士の戦いが見たい。アーネンとシゲノブの直接対決をこの目で見てみたい!」

    ライナの観戦武官。

    「この九州で見ることが出来るかも知れないぜ。」

    「わくわくするなあ。」

    「おい、ルシアの連中もいるんだぞ。言葉に気をつけろ。」
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