大砲と馬と 戦術と戦略の天才が帝国を翻弄する

高見信州翁

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第7章 また混乱

10 博多攻囲戦 9 繁信、博多到着

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佐賀鍋島藩臨時野戦指揮所

    真田繁信が参謀団を引き連れ、到着する。ここにはいないが皇国軍正規兵3万、砲1,500門を持ち込んで来る予定だ。繁信到着の噂は九州全土にあっという間に広がる。

    指揮所には島津・毛利・細川・鍋島・加藤・小西ら、九州の大名が顔を揃えている。

    「博多攻略軍司令官を拝命(はいめい)した真田繁信である。さっそくだが各藩の戦力を確認した上で配置を決定する。自藩戦力の報告を願う。」

    島津36,000、毛利14,000、鍋島10,500、細川8,000、加藤7,000、小西7,000、その他、計9万。繁信の連れて来た3万を加えて12万。皇国12万対ルシア7万5千。戦力は皇国が上回っているが、ルシアには防壁がわりの山を押さえられている。又、各藩とも無理をして徴兵しているため、秋までには農民を帰してやらなければならない。


    幸いにして小倉・大分・鹿児島と大分・佐賀間も鉄軌道は完成している。佐賀・唐津間も鉄軌道は開通済みだ。

    さあ、博多にこもった敵を君ならどう攻める?







    「博多に長く住んでいたことのある地元の古老をたくさん集めてくれ。」

    「老人をですか?」

    「そうだ。明日の昼飯を一緒に食いたい。」

    「はあ。」

    翌日20人ほどの年寄りが集められた。

    「真田の殿さまがいらっしゃったそうじゃ。」

    「鷲巣の英雄か?」

    「アホっ!さえもんのかみさまとお呼びせんかい!皇国を救って下されるありがたいお方じゃあ。」

    この老人、たまたま村の名主さまから繁信の百万石返上の話をおもしろおかしく聞いていたのだ。無知な連中に自分の知識を披露出来て鼻高々だ。

指揮所の食堂

    ご飯と味噌汁、アジの干物と大根の漬け物。簡単な食事が用意されている。

    「さあ、みんな簡単なものですまないが食べてくれ。」

    「へえ、いただきまする。」

    食事が済み、気分もゆったりしたところで、おもむろにたずねる。

    「博多湾が良く見える山というとどの辺りかのう?」

    ひとりの古老が答える。

    「博多湾が見えると言えば、灘山かのう。能古島(のこのしま)なんかは一望じゃのう。」

    「ほほう、灘山とな。」

    「ルシアの偉いさんが目をつけてのう。砲台を3つも作りよった。」

    「・・・なるほど。大変参考になった。みんな気をつけて帰ってくれ。このことは内密にな。頼む。」


    老人たちが帰ると繁信、目をギラギラさせて叫ぶ。

    「地図だ。地図を持ってこい。」









 「灘山は・・・ここか!ふ~む、港に敵艦を入らせない砲台だな。玄海島と志賀島の3ヶ所で鉄壁の構えだな。」

    「参謀団を呼んでくれ!あ、それと島津公も!急げ!」



    「島津久豊、お呼びにより参上いたした。」

    「お久しぶりです。赤兎(せきと    繁信が久豊に譲った名馬)は元気にしておりますか。」

    「おお、博多にも連れてまいった。元気にしておるぞ。」

    「参謀団も聞いてくれ。博多の攻略方針が決まった。」

    壁一面に大地図が貼られている。トントンと灘山の位置を叩く。

    「博多攻略軍は全力でここを奪取する。」

    島津公が不思議そうに聞く。

    「博多湾の入り口を守る砲台ですな。取るためには、ルシアの唐津方面軍を押しのけて大分進まなければなりませんぞ。」

    「確かに大変だ。だが、ここを取ればルシアは自分から撤退してくれる。」

    「???・・・あっ、ルシアは海からしか物資を補給できん。ここが皇国のものになったら、遮断出来るぞ!」

    参謀団もやっと理解する。

    参謀長は・・・なんと蜂須賀大将だ。

    「おお、敵のものだと思って見ていたから、わからなかった。ここが皇国の砲台だったら、世界が・・・変わる。」

    ギロリと繁信をにらむ。

    「じゃが、ここまで遠いぞ。」

    繁信、にっこり笑う。

    「だから、もう一手間かけないといけませんね。そのために島津公にも来ていただきました。これから話すことは機密事項です。他の大名にも、部下にも言ってはいけません。」

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