大砲と馬と 戦術と戦略の天才が帝国を翻弄する

高見信州翁

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第7章 また混乱

13 博多攻囲戦 12 引津湾上陸作戦2

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唐津港早朝

    まだ日は登っていない。日が出る前に唐津を出港し、日の出とともに上陸作戦開始の予定だ。

    副司令官におさまった島津公が命令する。

    「全軍、出港せよ!」

    大型蒸気艦もいれば、波が来たらひっくり返りそうな艀(はしけ)までいる。晴天で良かった。大小8千隻に及ぶ船だ。朝が来ればイヤでも見えてしまう。

    抵抗組織の者たちが引津湾の漁港を押さえてくれる手はずになっている。もちろん、8千隻だ。それだけでは足りない。小さな船は砂浜に乗り上げて上陸する予定だ。




姫島砲台

    30センチ、45口径、射程18キロ、通称【尾張砲】。尾張で製造されたので、こう呼ばれる。砲重量はなんと60トン。完全に艦載か海岸砲である。信州で作っても運べないので、尾張の港の近くに兵器工廠が作られ、そこで製造された。吊り下げ重機がなければ、動かすことは出来ない。その化け物を18門、揃えている。司令官は椿准将、副官は黒田中尉である。(つまり権蔵    又昇進してるな)

    「権蔵君、信号弾はまだ上がりませんか?」

    一ノ岳には既に信号弾部隊が潜り込んで待機しているはずである。

    「まだ夜が明けとりませんからなあ。夜が明けんと弾着観測が出来ません。」

    「弾薬の備蓄状況は?」

    「5万発です。」

    「とうてい足りませんね。1日撃ったら軽く2万発はいっちゃいます。」

    「皇国郵船の船を8隻、強制徴募して尾張と唐津の間を往復運航させております。本日唐津に到着するはずです。ただ、1発400キロのシロモノです。1隻あたり5000発しか積めません。8隻で4万発、合わせて9万発です。次は当分入って来ません。」

    「私はね、この姫島の30センチ砲18門が戦いの重要な要素だと確信しています。弾数9万発は重要な情報です。総司令官に知らせておいた方が良いですね。権蔵君、キミ、連絡士官として一ノ岳(総司令官の指揮予定所)まで行ってくれませんか。」

    「承知しました。」




    その頃、繁信は一ノ岳にいた。福の浦(立石山と一ノ岳の南のふもとの海岸)から山を登り、やっと着いたところだ。まだ暗い。現地の猟師が案内してくれなければ、絶対道に迷った自信がある。付き従うは参謀団と信号弾部隊。

    

    夜が明けた。

    アーネンと繁信、どちらが驚いただろうか?


可也山アーネン・ニコライ

    「なんだと・・・。」

    船が引津湾をおおっていた。一部は既に砂浜に乗り上げて、兵を吐き出していた。

    「敵前上陸・・・。やってくれたな。」

    連れてきた4万と唐津方面軍1万。5千を唐津方面への押さえに残して、4万5千を可也山の防衛に投入する。

    「火山(ひやま)を押えろ。可也山(かやさん)と火山の間に陣を構えろ。一ノ岳と立石山はもう仕方ない。だが、これ以上、山を渡すな!」



一ノ岳真田繁信

    「なんだと・・・。」

    糸島にルシアの大部隊がいるではないか。

    「灘山目標がバレた?」

    実は繁信、可也山から博多湾が見えることをまだ知らない。だが、アーネンは知っている。可也山を取られたら終わりだ。いきなり、可也山が博多攻囲戦の天王山となった。






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申し訳ありませんが、今月いっぱいお休みです。8月1日から再開します。
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