大砲と馬と 戦術と戦略の天才が帝国を翻弄する

高見信州翁

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第7章 また混乱

16 博多攻囲戦 15 志摩の戦い 繁信vsアーネン

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    ドラコンと姫島の砲撃戦が終わるのを待っていたかのように、霧が出て来た。糸島や志摩の周辺を濃い霧が包み込む。何も見えない。


    「砲撃中止。」

    無駄弾を撃っていては、あっと言う間に弾が尽きてしまう。

    アーネンは右翼騎馬隊に本陣を置いていた。火山と可也山に松平から5千出させて山を守備させている。計1万。残りの松平勢1万5千を中央に配置。鳥居元忠の騎馬隊5千を左翼に置いた。自身は歩兵5千・騎馬隊5千を直卒している。予備として後方にスヴォーロフ中将の8千を置いている。

    平地にいるのは3万8千。一番の心配は松平の兵の方が多いことだ。小倉・佐賀を松平に守備させて、ルシア兵をここに連れて来ればよかったと後悔している。

    「霧が出ている今のうちに塹壕を掘ってしまえ。それと佐賀方面軍のクリモヴィッチに命令。5千を守備に残し、1万を唐津によこせ。佐賀にいる皇国軍に気取られるな。」

    「ああ、それと可也山の背後と志摩稲留の街の南の火山のふもとの丘に野戦砲台を設置。」



    一方、繁信も霧で動けない間に塹壕を掘るよう命じていた。但し、こちらは大砲を主に配置するための塹壕だった。ルシアの塹壕が守備的なのに対して、多分に攻撃的な塹壕であった。5メートルごとに1.5キロ砲を配置、緑の枝でカムフラージュした板を、撃つときだけヒモで引っ張り開けて放つ。まあ、戦列艦の砲甲板に近いノリになっている。

    4輪の砲架に乗せられ、その砲架は壁にロープでつながれている。発射の反動で後ろに下がった砲をロープを引っ張って元に戻す。撃つのは丸い鉄のかたまり、実体弾だ。射程は1.5キロ。これで前進してくる歩兵を平射して、砲弾の進路上にあるものを全てなぎ倒す。最低4人で動かせるようになっており、移動も簡単だ。

    塹壕の前方には敵味方双方とも鉄条網が敷かれている。ちょうど、投擲弾が届かない距離だ。



午前11時

    霧が晴れた。








    火山と可也山の松平勢を牽制するために、島津の本田と園田がそれぞれ1万で山登りをしている。肝心な時に山からなだれ落としをされないためだ。

    繁信は皇国軍右翼に陣取っている。狙いは騎馬隊の突進力でもってルシアの陣のすきまを食い破り、背後から襲いかかることだ。

    アーネンはルシア軍右翼騎馬隊にいる。

    今、初めて、お互いが指揮権を持った司令官として対峙している。長い長い一日の始まりだった。
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