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第7章 また混乱

17 博多攻囲戦 16 志摩の戦い 塹壕突破

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    砲撃戦が続いている。が、派手な割には双方、損害は少ない。塹壕にこもっている兵は、砲弾が頭上を素通りして行くし、後方の本隊は射程外にいるからだ。

    届くのは姫島の30センチ砲だが、射撃管制が出来ないため、効果はイマイチだ。

    
皇国軍右翼司令部    真田繁信

    「さて、こちらが攻める側だ。ならば攻めなければな。」

    真田繁信、保有する300門の曲射砲(榴弾砲)の全てを右翼に集めている。

    この300門で間断なく炸裂弾を降らせる。塹壕の前の鉄条網に。前進の邪魔になる鉄条網をまず排除するつもりだ。なあに馬が一頭通れるすきまがあれば良い。だが、1箇所ではそこを通ることがバレてしまう。10箇所ぐらいが開いたところで、300門のターゲットが塹壕の左翼部分に集中される。

    「塹壕から頭を出せないぐらい弾幕を張れ。」

    炸裂弾の集中砲火がルシア軍塹壕左翼部分に集中する。

    「よし、騎馬隊、ぜ~んし~ん!我に続け!」

   右翼皇国軍騎馬隊の馬、1万。全て座光寺家の赤兎馬の血統だ。乗っているのは馬術に長けた真田家の精鋭。先頭の30騎ほどは幅50センチほどの板を抱えている。長さは4メートルほど。

    ルシア軍塹壕は幅3メートルほど。塹壕の上にこれをかけて橋にするつもりだ。

    「第1大隊、手投げ弾用意!」

    騎馬隊が塹壕に近づいたため、砲撃は中止される。

    繁信は手投げ弾の出し惜しみはしなかった。わずか数百メートルの塹壕に300以上の手投げ弾が放り込まれる。

    ルシアも手投げ弾対策はしていた。が、このような飽和攻撃は想定していない。

    グワン!というくぐもった音がして、ルシア軍左翼の塹壕数百メートルが沈黙する。

    塹壕に板を差しかけて馬が通れる橋とする。その橋を1万の騎馬が駆け抜けて行く。騎馬のうちの千騎ほどが下馬して塹壕の中に飛び込んで行く。橋の維持部隊だ。塹壕から来るルシアを防ぐ。せまい塹壕の中だ。防ぐのに大兵力は必要ない。








    真田騎馬隊はルシア軍左翼・鳥居騎馬隊に襲いかかる。

    鳥居元忠も歴戦の将軍、カウンターチャージをかけて来る。だが、鳥居騎馬隊は5千、対して真田騎馬隊は1万。倍である。数の圧力で皇国軍が松平を圧倒して、押して行く。

    だいぶ皇国騎馬隊が塹壕ラインを越えてルシア側に押し込んで行く。

    「もう一息だ。おせえ~!」

    ルシア軍左翼騎馬隊は今にも崩れそうであった。


ルシア軍司令部    アーネン・ニコライ

    「まずい、スヴォーロフに命令。左翼の援軍に入れ。・・・待て、あれはダミアンか?」
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