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第7章 また混乱

19 博多攻囲戦 18 ダミアン4度の突撃

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午後2時

    ダミアンにより押し戻された真田騎馬隊。無事別働隊と合流したが、ダミアン騎馬隊の都合4度の突撃をもって、塹壕を越えて押し戻される。

    だが、真田の兵はこの頃、ダミアンの旗印に気づき始める。

    「おい、あの旗印、ダミアンじゃないか?」

    「なんと、先代公の仇(かたき)、あのダミアンか?」

    ザワリと真田勢の気配が変わる。ダミアン、ダミアンと言う声が伝播(でんぱ)して行く。










ルシア軍司令部アーネン・ニコライ

    「ダミアンのおかげで押し返せたか。だが、ランキン砲台がやられたのは痛いな。さすが、マジックシゲノブ、油断も隙もない。」

    左翼こそ押し込まれたが、ルシアは中央・右翼は皇国の前進を許していない。山の上のルンキン砲台から皇国軍の左翼・中央に猛射を加え、皇国軍は全く前進出来ない。

    アーネン・ニコライは山の上のルンキン砲台に実に500門の砲を集めた。ほとんどが取り回しのしやすい3ポンド砲である。兵4名で砲が撃てる。そいつを3グループに分けて、高い所から撃ち下ろして来る。だいたい150門ぐらいの砲で1グループを作り、中央担当・右翼担当・休憩グループに分けている。

    この砲台の猛射のため、皇国軍の中央と左翼は前になかなか進めない。150門もあって、そいつらが突撃阻止用に散弾を一斉に撃って来たら、突撃した歩兵は確実に全滅する。

    しかも今回は気合いが入っているらしく、弾を惜しむ気配がない。全力で撃って来るのだ。これでは工夫もなく密集隊形で突撃でもしようものなら、累々としかばねをさらすだけだろう。




火山攻撃隊    島津家本田正守

    本田正守、島津家の家老である。兵1万を与えられ、火山の攻略を任されている。守るは松平の将、大須賀。兵5千で守りを固めている。兵力的には倍であるが、相手は山の上。攻者3倍の法則からいくと、兵力的には不足だ。だが、本田隊の役目は牽制で山の上の松平勢に余計なことをさせないことにある。

    そう。肝心かなめの時に山の上から逆落としに突撃をかけられたりしないように。

    そのためには、間断なく圧迫をかけ続けなければならない。しかし、攻撃が継続出来ないような損害は負ってはならない。けっこうむずかしい、戦場熟練者じゃないと務まらない役目だ。

    島津の本田も園田も長年久豊に付き従った歴戦のつわものだ。その点の心配はなかった。だが、相手の松平の大須賀も板倉も又、同じ。

    山の戦いは膠着状態である。



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    ストックがつきました。

    今後は毎週月曜日午後5時更新とさせてください。
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