大砲と馬と 戦術と戦略の天才が帝国を翻弄する

高見信州翁

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第7章 また混乱

27 博多攻囲戦 25 逆落とし

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風邪をひきました。あたまがぼうっとする。短いですが、勘弁してください。
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皇国博多攻囲軍最高司令官真田信繁大将    但し、ただ1騎。

    あれからほどなくして、新たに追撃者が現れ、しつこく追跡されている。5百ほどもいるだろうか。よく統制されている。だが、囲まれたわけでもなく、可也山のふもとを回り込む形で一の岳を目指して赤雷を走らせている。

    眼の色を変えて追いかけて来ているということは、ルシア側に生き残っていたのがいたのだろう。せいぜい1人だな。2人以上生き残っていたら、探しに来ていただろう。2人以上なら、1人を圧倒出来るからだ。

    だが、残念だが赤雷が健在な以上、追いつくことは出来ないよ。赤雷は赤兎馬の長男だ。座光寺家が代々努力してきた品種改良の頂点に位置する汗血馬だ。馬体の大きさ、速さ、持久力、全てにおいて他を圧倒している。もうしばらくすれば逃げ切れるだろう。待て。山の上に軍がいる。うん、こっちに気づいてそうだな。後ろに騎馬の大軍を引っ張ってれば気がつくか。

   ああ、島津の騎馬隊だな。馬を山へ上げるとは山岳地方の馬術家でもいるのか、そうでなければよほどの考えなしか。信濃も日本有数の山岳地方だが、峠を越えた平地へ馬を持って行く時以外には馬を山へ入れることはない。

    ともあれ、どっちにしろ援軍はありがたい。赤雷が穴に足を突っ込んで骨折する可能性だってあるのだ。可也山よりに進路を変える。ルシア騎馬隊を引き離し過ぎないように調整しながら、可也山の影から崖の下に飛び出る進路を取る。ルシア軍の様子を伺う。人参(繁信のこと)しか見えていないようだ。これなら奇襲も可能だろう。あとは島津騎馬隊の力量しだいだ。

    繁信とルシア騎馬隊の距離は5百メートルほど。繁信と赤雷が崖の下を走る。島津騎馬隊が崖を下り始めた。本当はルシアの走っているよこ腹を突き破る形で崖を駆け下りるのが理想だが無理だろう。人も馬も恐怖を感じるほどの急勾配の坂だ。まさに崖。下りるのでせいいっぱい。

    馬は尻に重心を移し、前足を突っ張りながら下りる。人はあぶみで足をせいいっぱい突っ張り、片手で鞍の尻をつかみ上体を後ろにそらし、そっくりかえる。2・3頭が前足を滑らせ、崩れそうになる。乗り手もあせる。

    い、いかん。自ら体を投げ出して馬の骨折を防ごうとする。

    その時。

    「ヒヒーン!」(何をタラタラやってるかあ!シャキッとせい! ー 繁信が聞いた赤雷のいななきの脳内翻訳(ほんやく))

    赤雷のいななきがとどろいた。

    今にも崩れそうだった馬がビクッとして立ち直る。鍛え抜かれた軍隊で鬼軍曹の気合の入った号令をかけられて直立不動する精鋭兵のように。

    「ヒヒーン!」(集合して整列!急げえ! ー 繁信が聞いた赤雷の・・・)

    もう坂に対しておっかなびっくりの馬は1頭もいなかった。
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