大砲と馬と 戦術と戦略の天才が帝国を翻弄する

高見信州翁

文字の大きさ
96 / 96
第7章 また混乱

30 博多攻囲戦 28 最期の死闘 1

しおりを挟む
 博多は皇国の大陸への窓口である。その博多を占領されて、皇国は全力をあげて取り返しにかかっている。九州の大名の危機感は狂騒と言ってもよいぐらいに高まっている。それはそうだろう。元寇の時でも上陸はされたが博多が占領されたことなどないからだ。

    陽はまだ落ちていない。午後6時を回ったというのに。だが、暗闇はそう遠くない時間に訪れるだろう。両軍は死闘を繰り広げている。可也山と火山の間は延々と続く田園地帯だ。形勢は互角に見えるが、よく見ると皇国側がジリジリと押している。もちろん多大な損害を出しながら。

中央

    島津と松平が対峙している。互いに陣を組み、島津が突撃を繰り返し、松平が押し返す。久豊と家光、互いの意地のぶつかり合いだ。家光の後ろにはアーネンがいる。簡単に崩れないよう、助言と励ましを繰り返している。一方で久豊は臥薪嘗胆(がしんしょうたん    薪の上で寝、動物の胆を舐めて耐え忍ぶ)の刻は終わったとばかり、恨み重なる松平を攻め立てる。

    島津久豊が叫ぶ。

    「ウスリーからこのかた、散々いじめてくれたな。重なる借りは、今返そうぞ。」

    島津の将校が叫ぶ。

    「ねらえ~!撃て!」

    連続する発砲音。松平の兵がバタバタ倒れる。

    松平家光が叫ぶ。

    「日の本南端の辺地大名ずれが!我は東海一の弓取り(松平家康のこと)の孫ぞ。源氏長者の強さを見せてやろうず!」

    松平の将校が叫ぶ。

    「下がるなあ!ねらえ~!撃て!」

    連続する発砲音。今度は島津の兵がバタバタ倒れる。

    撃ち終わった後も島津の兵は下がらない。

    「ダンジン(皇国の銃剣のこと)着剣!とつげきぃ~!」

    松平も同じダンジンをもって迎えうつ。

    島津も松平もダンジンの扱いにはまだ慣れていない。が、気力は十分である。血みどろの銃剣突撃がそこここで起こる。


左翼

    皇国側は千門を越える砲を配置しつつあった。だが、ここで予想外の事態に遭遇する。皇国もルシアも移動に便利な1.5キロ砲と3ポンド砲だが、ルシア側は苦労して火山の上に上げてルンキン砲台を作った。山の上にある分、ルシアの方が射程距離が長くなったのだ。

    このことによって皇国側がルンキン砲台を射程におさめる位置に持って行くまでに、一方的に叩かれ、数の優位が揺らぐことになる。なお悪いことに、苦労して射程内にもっていっても山の上のルンキン砲台が見えず、めくら撃ちになってしまった。だが、この頃になると皇国砲兵隊の練度は多分に上がっており、姿の見えないルンキン砲台からの砲撃からおおよその諸元を推測し、反撃して見せる技量は有していた。権蔵が砲兵隊に居たことも大きい。この頃の権蔵は自他共に許す砲兵隊のエースだった。ウスリー帰りの生え抜きである。なおかつ、あの真田繁信から名をもらっている。もはや伝説上の人物の一歩手前だった。その権蔵が反撃のための諸元算定を一手に引き受けていた。

    ルンキン砲台からの着弾。皇国側の大砲が叩き潰される。

    「・・・風は南東。仰角X度、方広角Y度で撃ち返せ!」

    効果はあるのだが、圧倒するまでには至らない。砲撃戦はまだまだ続く。まあ、不利な状況でよくやってると言っていいだろう。頑張れゴンゾウ!


右翼

    「司令官閣下のご帰還です!」

    歓声が皇国陣を包む。

    「みな、心配をかけた。帰って来たぞ。さあ、ルシアに反撃だ。ダミアンに目にもの見せてやろう。先代公のかたきだ!」




ーーーーーーーーーーー

終わらない。なんで?もう終わってる予定だったのに。

え~、次回は市街戦に突入しちゃいます。
しおりを挟む
感想 10

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(10件)

坂崎文明
2018.09.27 坂崎文明

感想ありがとうございます。
こちらの作品も読ませて頂きます。

解除
masatoamemiya
2018.07.08 masatoamemiya

やはり松平は敵に通じたか。

2018.07.08 高見信州翁

行方不明でしたからね。
なにか企んでたんですよ。

解除
masatoamemiya
2018.06.16 masatoamemiya

東北の大名が悲惨だな。

2018.06.16 高見信州翁

伊達家の嫡男は捕虜になっちゃいましたねえ

解除

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。