大砲と馬と 戦術と戦略の天才が帝国を翻弄する

高見信州翁

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第1章 ウスリーの戦い

2 皇国軍右翼真田軍作戦会議

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ルシア・ライナ連合軍(総勢45,000)      皇国軍(総勢43,000) 

一文字で千人です  歩歩で二千人です

   ライナ(総勢18,000)                                       
         ウエキン         真田←【★★★真田軍作戦会議★★★】                 
          騎騎騎         騎 騎
          騎 騎         騎 
          5,000          騎 騎
                      5,000
       ライナ選帝侯
          歩歩          松平(伊井)   恭仁(うやひと)親王
          歩歩          歩歩      歩
          歩歩          歩歩      歩
          歩歩砲         歩歩      歩
      8,000(砲30)         歩歩      3,000
                      歩歩
   ルーデンドルフ            10,000
          騎騎騎           ★松平康元
          騎 騎         松平(本多)
          5,000          歩歩
                      歩歩
   ルシア(総勢27,000)          歩歩
                      歩歩
    ダミアン ルビンスキ        歩歩
    騎騎騎   騎騎騎         10,000
    3,000    3,000
★アーネン・ニコライ皇太弟         松平(酒井)
                      歩歩
   アーネン  アーネン         歩歩
   騎 騎   歩歩歩砲→        歩歩
   騎 騎   歩歩歩砲→        歩歩
   4,000    歩歩歩砲→       ←砲歩歩
         歩 歩          10,000(砲36)
     11,000(砲100)
                      島津
   フリアネン  ダレン         騎 騎
   騎騎騎    騎騎騎         騎
   3,000     3,000          騎 騎                      
                      5,000


「これより真田軍作戦会議を始める。」

 真田成繁(なりしげ)少将52歳。真田25万石の当主だ。1万石で大名、10万石以上で大大名だ。三百諸侯と言われる中で大大名は24家しかない。押しも押されもしない太守である。坐光寺家は真田領の国人領主なので、真田軍の参謀におさまるのは自然ななりゆきだった。名前を見てもらってもわかる通り成繁の1字をいただいて繁信を名乗っている。かわいがってもらっているよ。士官学校に推薦してくれたのは真田公だし。まあ、アゴヒゲを生やしたいかついオッサンだ。

 「状況を概括する。ルシアの東進に対し松平公は大津で迎え撃つつもりであった。しかし、島津公が野戦を主張してウスリーまで進出してしまった。やむなく松平公は島津公に引きずられて、ウスリーでルシアと対峙することとなった。ルシア側が大量の大砲をゴロゴロしているという目撃情報が出て、松平公はあわてて大津にあったありったけの大砲を持ってきた。」

 真田公のゴロゴロという擬音がおかしくて、笑いが起こる。真田公は気さくな物言いで部下には親しまれている。

 「で、昨日の夕刻に薄利川(ウスリー川)の東の座間平原でルシアと遭遇して、にらみ合っているわけだ。」

 ギロリと兵站参謀を睨む。

 「今は12月、既に雪が降った。馬での移動には問題ないうっすら雪だが、いつどかっと来るか分からん。兵站参謀は耐寒・除雪装備の準備を忘れてないな?」

 「はっ、鷲巣砦には大量の橇(ソリ)・除雪道具一式が備蓄してございます。」

 「うむ、辰一郎(オレのこと)が朝に敵の陣形を見て『あ、コリャダメだ』と言いおった。おい、辰一郎、説明せい。」

 「は、ご説明します。まず大砲。皇国はありったけで36門。ルシア側は皇太弟の本陣だけで100門。ライナ本陣30門。130門対36門。砲も新式っぽい。性能は撃たれて見ないとわかりません。」

 みんなの腑に落ちるように、しばらく間を置く。

 「数の差は歴然。次に馬。ルシアだけで1万6千です。皇国騎馬は1万。砲ほどではないですが数の差は歴然。もし敗走するようなことになれば歩兵は悲惨なことになります。そしてその可能性は高いと言えます。そして、そして、この砲と馬はルシアの右翼にいます。その圧力を受けるのは皇軍左翼です。」

 「島津公が危ないか・・・」

 「はい、島津が崩れれば次は酒井勢。半包囲されかかれば皇軍は崩れます。」

 「右翼に配置されたのが不幸中の幸いか。この状況でどう立ち回る?」

 「今のところは何も出来ません。真田軍は松平公の指揮下にある右翼軍にすぎません。命令なしに動いたら、松平公のことです。騒ぎ立てるでしょう。命令があるまで待ち、命令に沿った形で身を処すしかないでしょう。なあに左翼が圧迫されはじめたら、右翼にも攻撃命令が出るはずです。ライナは戦慣れしていません。翻弄してやりましょう。」

 「ライナはそんなに弱いか?」

 「弱いというより、実戦経験がありません。ご存じの通りライナ軍は松平勢と戦って一敗地にまみれたわけですが、その時の生き残りは3千ほどが歩兵の中にいるだけです。選帝侯・ウエキン・ルーデンドルフとも戦は今回が初めてです。作戦その壱でいけるはずです。」

 「だが、ライナは崩してもルシアが崩れた我軍左翼から半包囲を仕掛けて来るだろう。その後はどうするのだ?」

 「その後は作戦その弐に移行します。撤退戦ですね。皇軍が崩れた場合、松平公は最優先で大津へ撤退いただくよう進言して下さい。しんがりは不肖真田が引き受けると大見得をきってください。」

 「何を考えている?貴様とのつきあいは長い。今の顔、相当腹黒そうだぞ。」

 「以後の最上位者を真田閣下にするためです。松平公に下がっていただき、真田閣下より上位の者たちをまとめて連れて行ってもらいます。ああ、恭仁親王にも撤退勧告を。あの方を殺しては大義名分が立ちませんから。指揮権を真田閣下が引き継げれば、逃げ惑う歩兵たちをまとめてかっさらえます。歩兵も山の上の鷲巣砦なら役に立ちます。鷲巣砦なら騎馬は使えません。ここで真田軍の名を上げましょう。」

 真田閣下がにやりと笑う。

 「お主も悪よのう。」

 どっと笑いが起こった。続けて真田閣下が締めくくる。

 「さて諸君!!真田の名を上げようぞ。」

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