大砲と馬と 戦術と戦略の天才が帝国を翻弄する

高見信州翁

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第1章 ウスリーの戦い

4 ルシア本陣

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   ライナ(総勢18,000)                                       
         ウエキン         真田                
          騎騎騎         騎 騎
          騎 騎         騎 
          5,000          騎 騎
                      5,000
       ライナ選帝侯
          歩歩          松平(伊井)   恭仁(うやひと)親王
          歩歩          歩歩      歩
          歩歩          歩歩      歩
          歩歩砲         歩歩      歩
      8,000(砲30)         歩歩      3,000
                      歩歩
   ルーデンドルフ            10,000
          騎騎騎           ★松平康元
          騎 騎         松平(本多)
          5,000          歩歩
                      歩歩
   ルシア(総勢27,000)          歩歩
                      歩歩
    ダミアン ルビンスキ        歩歩
    騎騎騎   騎騎騎         10,000
    3,000    3,000
★アーネン・ニコライ皇太弟         松平(酒井)
  ↖︎【★★★ルシア本陣★★★】      歩歩
   アーネン  アーネン         歩歩
   騎 騎   歩歩歩砲→        歩歩
   騎 騎   歩歩歩砲→        歩歩
   4,000    歩歩歩砲→       ←砲歩歩
         歩 歩           
     11,000(砲100)          10,000(砲36)
                      島津
   フリアネン  ダレン         騎 騎
   騎騎騎    騎騎騎         騎
   3,000     3,000          騎 騎                      
                      5,000

ルシア、アーネン・ニコライ陣営
 
 目の前に平野が広がっている。すり鉢状に少しへこんだ先には、なだらかな丘があった。薄く、冬の雪がおおっているその丘には大軍勢が陣取っていた。皇国と自称する蛮族の軍勢である。中央に歩兵の方陣が3つ、横に並んでいる。それぞれ1万ほどであろうか。両翼には五千ほどの騎兵が展開している。

 「総勢4万というところか」ルシアン・ウクライナ連合軍総帥、皇太弟アーネン・ニコライはつぶやいた。正軍師クツーゾフ侯爵が答える。「敵総帥はマツダイラ・ヤスモト、左翼の騎兵は旗印からするとシマズ、右翼の騎兵はサナダのようですな。」
 
 「ライナの連中の様子はどうだ?」アーネン・ニコライの下問にクツーゾフが答える。
「規律がなっていませんな。特に騎兵は指揮系統が混乱ぎみです。この場においても貴族同士の勢力争いをやっております。ライナ選定候の支配力はあまり期待出来ませんな。」
 「やれやれ、ライナの連中が泣きついてきたから助っ人に来たが、最悪帝国だけで対処せねばならんかもしれんな。」
 「皇帝陛下の勅命でございますれば、致し方なしかと。」
 「ふん、まあな」

 「凧は上げたか?」
 「は、夜明け前に既に上がっております。」

 凧とはアーネン・ニコライの特殊偵察部隊で、凧に人をぶら下げて敵を空から俯瞰して報告する任務を帯びている。まず馬で台車を引っ張り、台車から伸びたロープで凧を上げる。凧が上がったら、凧のすぐ下のロープに取り付けられた滑車に通した別のロープを引っ張り、人が一人乗ったゴンドラをロープに沿って滑車の近くまで引っ張り上げる。凧を空に飛ばすのは熟練の風読みでも至難の業であり、当然風のないときは飛ばせないし部隊をここまで育てるのに5年の歳月を費やしている。凧を使えるときのアーネン・ニコライの勝率は格段に上がっている。高い空からの視点を確保できるのだから。

 「丘の後ろに伏勢はいないな?」
 「中央の方陣の背後に3千ほどの歩兵が見えるとのことにございます。丘の背後に隠れていました。」
 「ふむ、予備兵力は3千か。歩兵方陣は槍兵と銃兵を組み合わせた重厚で分厚い備えだが、鈍重そうだな。」
 「蛮族の伝統的な歩兵方陣かと」
 「ふん、太陽が昇った。戦を始めるとしよう。」

 アーネン・ニコライが皇帝より預けられた指揮丈を高く掲げ、振り下ろした。

 「諸君、蛮族に泡を吹かせてやれ。」

 後にウスリーの戦いと呼称されることになる戦闘が始まった。
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