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プロローグ
プロローグ ①
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それは、君が反応を欲しているからじゃないのか、と修太郎さんは僕に言った。すかさずコーヒーカップに視線を逃がした僕は、ほとんど飲んでいない琥珀色の表面に、僕を見つめる修太郎さんが映っているのに気がつく。なので、そこからも目をそむけた。視線の持っていく先は、テーブルの隅だ。僕の視線の軌跡すべてが修太郎さんの計算通りみたいな気がしてきて、僕は心の中でため息をつく。
修太郎さんは続ける。
「自己顕示欲? 他人に認められたいから? それとも、自分の存在を確かめたいからかな?」
マシンガンのような質問攻めが、僕の心にいちいち突き刺さってくる。テーブルを挟んで向き合っているという状態では、彼の攻撃から逃げるすべはない。唯一の逃亡手段は、こっちが言葉を発して、彼の矢を止めることだけだ。
「そんな大層なことは考えていませんよ」僕は、笑いたくないと細胞を固くしている頬を強引に緩めた。引きつらなかったことが奇跡かもしれない。「僕はただ、他人が楽しんでくれればそれでいいと思っているだけです」
「ほう。なるほどね。君はだからスマホで自分に起こっているすべての事象を実況中継しているわけか」うなずきながら、修太郎さんはコーヒーカップの取っ手に触れた。親指と人差し指を擦り合わすようにして取っ手に触れていたけれど、別に飲むふうもない。無意味に遊ばせた手を引っ込めながら、修太郎さんは続ける。「俺がトイレに行っている間も、君は熱心にスマホをいじっていただろ。あれ、俺とのやり取りをツイッターかなにかに書き込んでいたわけか? 『今、僕はこんな出来事に遭遇しています、ちょっとばかりピンチかも』みたいな。それ、高校生の間で流行っているのか?」
「いえ、そんなわけでは」僕は上目遣いにちらと修太郎さんの顔を見る。すぐにコーヒーカップに視線を落とす。水面で揺れている修太郎さんは、本物ほどトゲを感じない。だから、まだマシだ。
数秒間置いてから、修太郎さんはテーブルの上に両肘をつき、僕のほうへ身を乗り出した。「だったら、今から俺たちがやることなんて、君が最も中継したいことなんじゃないかな。極上のネタになるぞ」
ついにきた、と僕は細く長いため息をついた。姉貴のために話し合いに来たのに、まさか交換条件を出されるとは。
話が違うじゃないか、と僕は姉貴の顔を思い浮かべてそれに大きくバッテンをつけた。こんな相手だということを知っていたら、ここへは来なかったのに。うわべだけの姉弟愛の演出に酔いしれた僕が愚かだった。
僕はゆっくりと店内を見渡した。小さな古い喫茶店。カウンター席の真ん中に、男性客が二人。身振り手振りを交えながら話に熱中している。カウンターの端には新聞を読んでいる初老の男性客。あとはボックス席に一組。大学生らしいカップルがサンドイッチを分け合っている。カウンターの中にはサイフォンをかき混ぜている髭のマスター。それが今現在、店内にいる人間の数だ。僕と修太郎さんを除けば、六人の人間を相手にしなきゃいけないのか。さっきからついているため息が、おのずと大きなものに変わる。どう考えても、僕には荷が重い。
修太郎さんは続ける。
「自己顕示欲? 他人に認められたいから? それとも、自分の存在を確かめたいからかな?」
マシンガンのような質問攻めが、僕の心にいちいち突き刺さってくる。テーブルを挟んで向き合っているという状態では、彼の攻撃から逃げるすべはない。唯一の逃亡手段は、こっちが言葉を発して、彼の矢を止めることだけだ。
「そんな大層なことは考えていませんよ」僕は、笑いたくないと細胞を固くしている頬を強引に緩めた。引きつらなかったことが奇跡かもしれない。「僕はただ、他人が楽しんでくれればそれでいいと思っているだけです」
「ほう。なるほどね。君はだからスマホで自分に起こっているすべての事象を実況中継しているわけか」うなずきながら、修太郎さんはコーヒーカップの取っ手に触れた。親指と人差し指を擦り合わすようにして取っ手に触れていたけれど、別に飲むふうもない。無意味に遊ばせた手を引っ込めながら、修太郎さんは続ける。「俺がトイレに行っている間も、君は熱心にスマホをいじっていただろ。あれ、俺とのやり取りをツイッターかなにかに書き込んでいたわけか? 『今、僕はこんな出来事に遭遇しています、ちょっとばかりピンチかも』みたいな。それ、高校生の間で流行っているのか?」
「いえ、そんなわけでは」僕は上目遣いにちらと修太郎さんの顔を見る。すぐにコーヒーカップに視線を落とす。水面で揺れている修太郎さんは、本物ほどトゲを感じない。だから、まだマシだ。
数秒間置いてから、修太郎さんはテーブルの上に両肘をつき、僕のほうへ身を乗り出した。「だったら、今から俺たちがやることなんて、君が最も中継したいことなんじゃないかな。極上のネタになるぞ」
ついにきた、と僕は細く長いため息をついた。姉貴のために話し合いに来たのに、まさか交換条件を出されるとは。
話が違うじゃないか、と僕は姉貴の顔を思い浮かべてそれに大きくバッテンをつけた。こんな相手だということを知っていたら、ここへは来なかったのに。うわべだけの姉弟愛の演出に酔いしれた僕が愚かだった。
僕はゆっくりと店内を見渡した。小さな古い喫茶店。カウンター席の真ん中に、男性客が二人。身振り手振りを交えながら話に熱中している。カウンターの端には新聞を読んでいる初老の男性客。あとはボックス席に一組。大学生らしいカップルがサンドイッチを分け合っている。カウンターの中にはサイフォンをかき混ぜている髭のマスター。それが今現在、店内にいる人間の数だ。僕と修太郎さんを除けば、六人の人間を相手にしなきゃいけないのか。さっきからついているため息が、おのずと大きなものに変わる。どう考えても、僕には荷が重い。
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