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第三章
第三章 ⑧
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「ところで、さっきの自己紹介のとき、思ったんだけど」僕はジャックに向き直った。なんだい? とジャック。
「みんなの自己紹介、必ず郵便局が出てきたよね? なんで郵便局が絡んでいるの? それって偶然? そんなはずないよね?」
「さあ。それもわからないな。でも、不思議なことがある。みんな郵便局に集まるのが日課になっているんだ。なぜだかわからないが、勝手に足が郵便局に向かうんだ」
「私もだ」とゾンビ。
「あたしだって、そうさ」これはお絹さん。
「何時ごろ?」
「昼過ぎかな。二時ごろが多いな」
「じゃあ、とりあえず、その郵便局に行ってみましょう。よそ者の僕たちが見れば、案外なにかわかるような気もするし。生ハム組の記憶についてだけじゃなく、もしかしたらダイヴ者の増加についても」
「双方の利害が一致したな」ジャックは僕と拳を合わせた。「ようし。じゃあ、いつ来るかい?」
「善は急げ、で、明日さっそく」僕は冴子と信良、花江を見る。みんなうなずく。
「明日かあ」ジャックがちょっと困った顔をする。「ここまで迎えに来てやりたいんだけど、明日の午前中は診療所のレクリエーション会があるんだ。これは外せないんだよ。レクリエーションと言っても、ちゃんとした治療の一環だから」
「ううん、地図さえ描いてもらえれば、僕たちだけで行けると思います。じゃあ、とりあえず、その診療所へ行けばいいんですね?」
「ああ。そうしてくれると助かる。そこから全員で郵便局に行こう」
ジャックは手帳の紙を破って、診療所までの地図を描き始めた。描いている途中、生ハム組のメンバーが横からのぞき込み、そこは道がまっすぐだ、その横はイケメンの店長がいるガソリンスタンドだ、その右側に今朝は犬のウンコがあったはずだ、などと邪魔をするので、ジャックは、「全員、俺へ近寄るな。離れていろ」と一喝していた。
生ハム組と僕たちの別れ際、ジャックがこっそり僕に耳打ちしてきた。「あのなあ、生ハム組はやめてくれないか。やっぱり第一グループのほうがしっくりこないか?」
僕はきっぱりと言ってやった。「正式名称で呼ぶのが筋ですよ。ジャックさんは筋を通す人でしょう?」
そうかあ、そうだろうなやっぱりとジャックは頭をかいていたけれど、じゃあ明日はよろしく、と手を振った。
思ったより帰りが遅くなってしまった。僕たちは、冴子が隠している舟のところまで急いだ。
「ここで、みんな危ないから明日はやめておいたほうがいいなんて言うと、ぶっ飛ばされるんだろうね」僕は冗談混じりに言った。
「町の外までぶっ飛ばされるんじゃないかしら」冴子が微笑む。
「だろうね」と僕。「とりあえず、言ってみただけさ。たとえば危険なゲームなんかをする場合、一応、注意事項を説明するだろう? でも、そんなもの、誰も聞いちゃいないだろ。説明するほうもそんなことは百も承知で、義務的に説明しているだけ。それと同じさ。一応、僕は注意をしたからね。あとは個人で気をつけるように」
言われなくてもわかってるさ、と信良が言う。花江もうなずく。
「じゃあ、明日のバイトが終わってから、ここへこよう。帰りが多少遅くなるかもしれないから、家の人には適当に理由付けしておくように」
僕がそう言った後、冴子があそこよ、と指さした。
僕たちは舟を岸辺から押し出し、冴子と花江を乗せた後、信良、僕の順に飛び乗った。
帰りは冴子と花江のおかげで楽勝だ。僕たちにとって舟を漕ぐのは朝飯前だから。
「みんなの自己紹介、必ず郵便局が出てきたよね? なんで郵便局が絡んでいるの? それって偶然? そんなはずないよね?」
「さあ。それもわからないな。でも、不思議なことがある。みんな郵便局に集まるのが日課になっているんだ。なぜだかわからないが、勝手に足が郵便局に向かうんだ」
「私もだ」とゾンビ。
「あたしだって、そうさ」これはお絹さん。
「何時ごろ?」
「昼過ぎかな。二時ごろが多いな」
「じゃあ、とりあえず、その郵便局に行ってみましょう。よそ者の僕たちが見れば、案外なにかわかるような気もするし。生ハム組の記憶についてだけじゃなく、もしかしたらダイヴ者の増加についても」
「双方の利害が一致したな」ジャックは僕と拳を合わせた。「ようし。じゃあ、いつ来るかい?」
「善は急げ、で、明日さっそく」僕は冴子と信良、花江を見る。みんなうなずく。
「明日かあ」ジャックがちょっと困った顔をする。「ここまで迎えに来てやりたいんだけど、明日の午前中は診療所のレクリエーション会があるんだ。これは外せないんだよ。レクリエーションと言っても、ちゃんとした治療の一環だから」
「ううん、地図さえ描いてもらえれば、僕たちだけで行けると思います。じゃあ、とりあえず、その診療所へ行けばいいんですね?」
「ああ。そうしてくれると助かる。そこから全員で郵便局に行こう」
ジャックは手帳の紙を破って、診療所までの地図を描き始めた。描いている途中、生ハム組のメンバーが横からのぞき込み、そこは道がまっすぐだ、その横はイケメンの店長がいるガソリンスタンドだ、その右側に今朝は犬のウンコがあったはずだ、などと邪魔をするので、ジャックは、「全員、俺へ近寄るな。離れていろ」と一喝していた。
生ハム組と僕たちの別れ際、ジャックがこっそり僕に耳打ちしてきた。「あのなあ、生ハム組はやめてくれないか。やっぱり第一グループのほうがしっくりこないか?」
僕はきっぱりと言ってやった。「正式名称で呼ぶのが筋ですよ。ジャックさんは筋を通す人でしょう?」
そうかあ、そうだろうなやっぱりとジャックは頭をかいていたけれど、じゃあ明日はよろしく、と手を振った。
思ったより帰りが遅くなってしまった。僕たちは、冴子が隠している舟のところまで急いだ。
「ここで、みんな危ないから明日はやめておいたほうがいいなんて言うと、ぶっ飛ばされるんだろうね」僕は冗談混じりに言った。
「町の外までぶっ飛ばされるんじゃないかしら」冴子が微笑む。
「だろうね」と僕。「とりあえず、言ってみただけさ。たとえば危険なゲームなんかをする場合、一応、注意事項を説明するだろう? でも、そんなもの、誰も聞いちゃいないだろ。説明するほうもそんなことは百も承知で、義務的に説明しているだけ。それと同じさ。一応、僕は注意をしたからね。あとは個人で気をつけるように」
言われなくてもわかってるさ、と信良が言う。花江もうなずく。
「じゃあ、明日のバイトが終わってから、ここへこよう。帰りが多少遅くなるかもしれないから、家の人には適当に理由付けしておくように」
僕がそう言った後、冴子があそこよ、と指さした。
僕たちは舟を岸辺から押し出し、冴子と花江を乗せた後、信良、僕の順に飛び乗った。
帰りは冴子と花江のおかげで楽勝だ。僕たちにとって舟を漕ぐのは朝飯前だから。
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