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しおりを挟む「お茶です。」
優が学校に行ってすぐに訪ねてきたお客さんにお茶を出すが、その手が少し震える。これからどんな話をされるのか、何を言われるのか、どうすればいいのかわからない。
「ありがとうございます。」
彼女の名前は太田絵理沙さん。海外に拠点を多く持つ太田グループの娘さんだそうで、幼少期から理玖さんと婚約関係を結んでいたそうだ。元婚約者って言ってるけど、そんな人が俺に何の用なんだろう。
「あの、柊理玖さんの元婚約者っていうのはその・・」
「はい、私は柊理玖さんの元婚約者です。幼少期から太田家と柊家で結んだ婚約でした。私は物心がついた時から柊家に嫁ぐための教育を受けてきました。太田グループの娘ですから、ある程度の教育は受けてきましたがそれに加えて柊家は不動産などもありましたし太田グループとは違い国内が中心ですので日本の時事や財政などもしっかりと学ぶ必要がありました。理玖さんを支えていくための教育をずっと、ずっと受けてきました。それに、何度も会う中で理玖さんのことをどんどん好きになっていきました。この人のためならどんなに大変な勉強だって頑張れた、、でもある日突然婚約を破棄されて、理玖さんは柊とは関係のない会社の経営を始めた。それでも仕事に一生懸命な理玖さんを尊敬したし、いずれ理玖さんが柊家を継ぐときにはきっとまた私を必要としてくれる、私のことをまた婚約者として迎えてくれる。だから理玖さんが多少いろんな女と遊んでいても我慢していました。その間にも理玖さんの元へいつでも行けるように炊事に洗濯に掃除に勉強に毎日毎日勤しんできました。なのにっ!!!!なんであなたみたいな人が急に現れたの!あなたは柊結弦の子供を作るための存在だったはずよ!おとなしく蔵にいればよかったのよ!3人目を生んでからなんて死ぬまで秒読みだったじゃない!!」
痛い、、突き刺さってくる、、、
なんて言っていいのかがわからない。この人は理玖さんのことが好きで、理玖さんのためにたくさん努力してきて、たくさんの時間を費やして、ずっと待っていたんだ。ずっとずっと、、
「・・・・・。その、、、」
なんて言っていいのかがわからず言葉に詰まってしまったことが気に障ったようで絵理沙さんの表情がどんどんきつくなっていく。
「あなたに何ができるって言うの!体もボロボロで理玖さんとの子供だって望めない!理玖さんにも迷惑をかけて!あなたの子供もかわいそうよね!せっかく柊の家に生まれたのにあなたみたいな人と暮らすなんて教育に悪いわ!あなた施設で育ったんでしょう?大学も出ていないのに柊の家に嫁ぐだなんて無理よ!私こそが理玖さんにふさわしいの!私はαよ!理玖さんと私が結婚して子供を産めばαが生まれてくる可能性が高いわ!将来の柊家を支える子供を産める!あなたが産んだ子供は半分は柊の血だけど、もう半分はあなたみたいな高卒の血が流れているなんて、柊も終わりね!そんな子供柊家にいらないでしょうからね!」
「・・・・て、、、」
「何?ぼそぼそしゃべんないでよ!イライラするわね!」
「やめて!!!!!!!!!!!!!」
自分でもびっくりするぐらい大きな声が出た。怒りっていう感情をすごく強く感じる。俺のことは何と言われてもよかった。高卒なのも事実だし、理玖さんに迷惑をかけてしまっているのも事実だし、理玖さんを支えていけるような学や能力がないことも事実。
・・・でも、優のことを、日和のことを、陽介のことをいらないという表現されたのには本当に腹が立った。
「優は、優しい子なんです。俺みたいなのをママって呼んで、たくさん支えてくれる。優がいなかったら俺はもうとっくに死んでいたと思う。優は頭もよくて、運動もできて、俺に似てるところあるのかなっていうくらい優秀な子です。日和は、いつもニコニコしていて、話すのも上手だし、人の話もよく聞いてくれてパズルを解くのもうまい。陽介はどんどん言葉を覚えてどんどんしゃべってどんどん吸収して日々成長してくれています。俺の子供たち3人は優秀な子です。本当にいい子たちなんです。俺の宝物です。俺のかけがえのない宝物なんです。俺の子供たちを悪く言うことはやめてください。俺のことは何と言ってもいいですから。」
この人は、俺のことが恨めしいんだろう。あの日、妊娠中に柊さんの奥さんが訪ねてきたときと同じような目をしている。柊さんの奥さんが表情はあまりなく、目だけ怒りが燃えていたのに比べ絵理沙さんは目でも表情でも口調の強さでも怒りを表している。
「生意気ね。私から未来を奪ておいて、私の幸せな未来を奪っておいて、、、っ、、、。私は何のためにっ、、、理玖さんと幸せな家庭を築いて、理玖さんを支えて、理玖さんと一緒に柊家をもっと発展させていこうと思っていたのに、、、、、つ!!!あなたなんかにどうして邪魔されなきゃいけないっていうのよ!!あなたは、自分の子供のことを宝物だって言ったけど、私にとっては理玖さんが、理玖さんとの未来が宝物だったの!!それをあなたは奪ったのよ!!!」
彼女の表情から怒りは変わらず伝わってくるが、悲しいという感情も強く感じる、、、。理玖さんが宝物、、か。
彼女の過ごしてきたこれまではすべて中心に理玖さんがいたんだろう。
でも、俺にだって譲れないものは、、ある。
「、、、、俺にとっても、理玖さんは宝物なんです、、、、子供たちと同じくらいいとおしい、大切な宝物なんです、、」
「うるさい!!あなたは子供も宝物なんでしょ!!4つもあるなら1つは私に譲ってよ!!譲れ!!私のほうが理玖さんのことを愛している!!」
理玖さん、、、どうしたらいいの。俺は、どうしたらいいの。
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