伸ばしたこの手を掴むのは〜愛されない俺は番の道具〜

にゃーつ

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病室には点滴に繋がれ眠っている楓君の姿があった。番解除の処置がされた後なんだろう首には包帯が巻かれていた。蔵は少し薄暗かったから、明るいところでよく見ると外に出ていなかったから異様に肌は白くて頬はこけ、見えている腕は怖いほどに細い。

先ほど園長に施設にいた時の写真を見せてもらったがその写真が嘘なんじゃないかと思うほどに変わり果てた姿。

園長はその場に崩れ落ちた。

「、っぅ、、結婚なんてさせなければ、、」

言葉で聞いた時には現実味のなかった事実が目の前の姿から嫌なほどに襲ってくる。楓君のことを知らない人だってこの姿を見たら何か外的要因があったことをら察する。29歳とは思えないその姿、そしてこれから先以前のように完全に元気になる可能性はほぼ0に近いという説明を松本先生に受けた。

人を殺すことの方が罪は重い。だが、これから先の人生も傷つけ、心も傷つけた。考え方によっては殺人よりも残忍なことをしていることを兄さんと義姉さんは分かっているのか?あと数時間で彼らはマスコミと世間の注目の的。バッシングは免れないだろう。それに、今回彼が目覚めたら被害届を出そうと動いている。幹也先輩が以前勤めていた弁護士事務所の所長が協力してくれることになり民事でも訴訟を起こす予定だ。

「園長先生、大丈夫です。俺が絶対に楓を元気にしてみせます。俺が医者の家に引き取られたのはこのためだったんだと思えてならないんです。大事な友達救えなくて医者なんて名乗れない。俺の医者人生全てをかけて楓のことを救ってみせます。」

「隼人くん、、そうね、信じなきゃ。こんなに優しい子を神様が見放すはずないわ。きっと元気になる。」

松本先生の話だと今は眠っているだけなのでじきに目を覚ますとのことだった。

少ない量でも1日3回食べるところか始め、徐々に量を増やしていくみたいだ。それと同時にホルモン剤を使用して番欠乏による身体機能の低下を回復させる。

あの蔵から出す時に兄さんを求めていたから目が覚めて番解除されたことがわかると パニックになる可能性が高い。それに、治療をしていく中でも混乱するかもしれない。

そのため、兄さんの弟である俺のホルモンを治療に少量使うみたいだ。詳しいことは専門的すぎて分からないが、徐々に兄さん離れさせるそうだ。

優を会わせるかどうかは目が覚めた時の状況によって松本先生が判断してくれることになった。

「理玖おじさん、ママ元気になる?」

「優、大丈夫だよ。松本先生がママのこと治してくれるよ。」

「先生、ママを治してください。俺、ママに授業参観来て欲しいんです!」

「授業参観?」

松本先生も園長も不思議そうな顔をしていたので優がお腹の頃の記憶や産まれた時の記憶があることを話した。2人はかなり驚いていたが、優に楓君のことを聞いてくれていて優もずっと話したかったママの話を俺以外にもできることが嬉しいのか子供らしく饒舌になっていた。

2人も楓君の小さい頃の話を優にしてくれていて、実は小さい頃からずっと茄子が嫌いで食べられなかったんだとしると優はすごく嬉しそうな顔をして

「俺も!俺も茄子が嫌いなんだ!ママと一緒だ・・・ママと一緒。」

共通点を見つけられたことがよっぽど嬉しかったのか目の前で聞いていた俺に同じ話を聞かせてくれた。

まだ目が覚めない楓君の病室で今後のことを全員で話し合う。自分の父親と母親の話だからと優は部屋を出そうとしたが頑として出ようとはしなかった。

「柊結弦の方は証拠が十分ですが、妻の方は何も見つかっていない。里子だと聞かされていたと言われればそれで終わりになります。」

「・・・お母さんはママのこと嫌いだって言ってたよ?お父さんに。それに、お母さんの日記に全部書いてあるよ。」

日記だと!?自分の字で書いてあるものなら十分な証拠になるじゃないか!!

「優、それどこにあるかわかる?」

「うん、お母さんのドレッサーの中だよ!」

留守にしている今なら取れる。そうすれば兄さんも義姉さんも立件できる。

「他に、お父さんが大事なもの隠してるところとかわかる?」

「お父さんは書斎の机の2段目の引き出しの中に入ってるよ。」

優がこんなにも大事な情報を知っていたとは。知っていたというか気づいたという感じか?

「優、ありがとうな。おかげでママのことをいじめていた人を全員懲らしめられる。でもいいのか?それはお前のお父さんとお母さんなんだぞ?」

「・・・別にいい。俺はママの記憶があるからお母さんのことはずっと他人だと思っていたし、時々見ていたママがいつも苦しそうなのに放置していたお父さんも嫌いだ。それに、2人してママの悪口よく言ってた。俺を産んでくれたママなのに。お腹にいた俺にあんなに優しく話をしてくれたママなのに。だからいいんだ。」

「優、、、」

「俺、もう2度とママに会えなくなってもいいよ?ママが俺に会いたくなかったら会わなくていい。でも、ママのことだけは元気にしてほしいんだ。」

きっと抱きしめてほしいだろうに。

さっき言ってたように授業参観にもきてほしいはずなのに、、、。

「優君、俺の話を聞いて?」

松本先生、、?
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