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しおりを挟むその日から、理玖さんとの電話は日常になった。最初は慣れなかった普段より少し低く聞こえる理玖さんの声も今では耳から聞こえた途端に安心する声になった。
大半は2人で話す時間だが、優も会話に入ることもあって3人でその日の出来事を話すことも多い。小さい頃から優たちの面倒も見ていたのもあって理玖さんは優の話を聞くのが本当にうまい。これは前々から思っていた。
理玖さんは電話だけじゃなくてオーストラリアで食べた食事や町の風景などもたくさん送ってくれる。俺は海外なんて行ったことないのもあって理玖さんが送ってくれる写真に驚かされてばかりだ。
特にびっくりしたのは、コアラを理玖さんが抱っこしている写真だ。向こうの会社の社長さんに連れられて行ったみたいなんだけど俺はコアラを絵本の中でしか知らなかったから、本当に実在していたなんてびっくりしたと伝えると理玖さんにも優にも笑われてしまった。
優は生で見たことはないけれど、学校の英語の先生がオーストラリアの人だから写真を見せてもらったことがあったらしい。
「そんなに笑うことないだろ・・」
と少し悲しくなっていると、2人が焦ったように俺を励ますんだ。ちょっとだけそれがおもしろかったのは2人には秘密だけど。
「楓君、いつか優たちを連れてオーストラリアに行ってみようよ。コアラも抱っこできるし、公園に行くとカンガルーやワラビがぴょんぴょん跳ねているし自然も豊かで楽しいところだよ。」
「はい、俺行ってみたいです。理玖さんや優たちとならどこに行ったって楽しそうだけど、理玖さんが今行って感動したものとか美味しかったものを俺も優も見せてもらえているから、自分の目でも見てみたいです。」
きっと素敵だと思うんだ。自分の好きな人や大切な人と思い出を共有できるのって。俺にはまだまだ少ないけれど、パスタを見れば退院した日に食べたパスタを今でも思い出すし、優のランドセル姿を見ると優の参観日のことを思い出すし、飛行機を見たり理玖さんの声を聞くとあの日空港で理玖さんに告白したことやキスしたことを思い出す。その度に嬉しくなるし幸せになる。
「じゃあ理玖おじさんにはオーストラリアに詳しくなってもらわないとだめだね。おじさん行ってる間に僕たちに案内できるぐらい詳しくなってね!!ご飯も美味しいところ見つけてね!!!」
「優たちがびっくりするくらい美味しいところ見つけておくよ。ほら、優も楓君もそろそろ寝ないとだろ。明日楓君は本宅に行くんだろ?日和や陽介にもよろしく言っといてくれ。」
「はい。2人も理玖さんの帰り楽しみにしてると思いますから。理玖さん、お仕事頑張ってください。」
「うん。ありがとう。おやすみ、楓君、優。」
「おやすみなさい、理玖さん。」
「おじさん、おやすみなさい!!!!!!」
なんだかこうしていると・・・
「なんか、僕とママと理玖おじさんで家族みたいだね。」
そう、俺もそう思ったんだ。
「うん、そうだな。」
いつか、そうなれたら良いなとは思う。でも俺にとっては初めての恋愛で何もかもが分からない。理玖さんはきっと今までに彼女とか彼氏とかいたんだろうし、俺、嫌なことしちゃわないかが心配だ。
.............................ズキッ
ん?今なんか、胸がズキってなった。好きだって気づいたときもドキドキしていたし、これも好きって事の現れ?それとも不安な気持ちの表れ?んー?よく分からない。
「ママ?寝ないの??」
「あ、ごめんごめん!寝よっか。」
さっきのズキッは気のせいだったんだ。そう思って優と手をつないで寝室まで行き2人で布団に入った。もう1月も終わる。3月には3学期も終わる。そうしたら優は6年生になるのか・・そして1年後には中学生か。
「優は春休み行きたいところとかあるか??」
「んー、ママとならどこでもいいよ。」
そうなんだよな~俺も優とならどこでもいい。でもどこに行こう、車もないし。そもそも俺免許すら持ってないもんな。
優が喜んでくれそうなところ、新年度からは日和や陽介とも一緒に暮らすってことで話が進んでいるし4人でもどこか行って、優とも2人でどこか行きたいんだよな・・・。
「あ、なあ優、日和たち連れて動物園に行こう。俺あんまり行ったことないから行ってみたい。それで、2人でお花見しよう?この間教えてもらったんだ。ここの近くの桜並木がすごくきれいなんだって。それにそのすぐ近くで桜祭りも春にはあるみたいだから、昼はお花見して、夜はお祭りに行こう!」
桜を最後に生で見たのはいつだっただろう。柊のお屋敷に桜はあったけど、あの倉からは見ることが出来なかったから卒業式の日に見たのが最後だったかな。園には桜の木が1本あって、春になるとみんなでお花見ごっこをするのが定番だった。そしたら園長先生たちがお花見しているところにおやつを持ってきてくれてみんなでおやつを食べながらお花見したんだ。
今になって唐突にそんなことを思い出して、優と2人でお花見したいなって思ったんだ。
どうかなと思って隣を見てみると、いつもの嬉しそうな優の目がこちらを向いていてこれは決定したなって確信を持った。
「行く!絶対楽しい!!!!!!ママ、ママのお弁当が食べたい!いい?」
「もちろん!優の好きなものいっぱいいれような。ジュースも優の好きなやつにしよう」
そして、優にはまだ何も言っていないが優の誕生日が2月に迫っている。今回嬉しくも三連休の中日が
優の誕生日だから当日に盛大に祝ってやりたいんだ。これまでの10年分も含めて盛大に。
優が産まれたぐらいの季節になると日付が分からないからただただ心の中で産まれてきてくれてありがとうって言い続けていた。外から聞こえてくる声で成長を感じて1人で泣いていた。でも、今年は目の前で直接おめでとう、産まれてきてくれてありがとう。ってこの約1年優の成長を見守りながら言える。それが何より嬉しい。
優には秘密で計画を進めている。もちろん俺1人では出来ないことも多かったから理玖さんがオーストラリアから協力してくれている。
今年の優の誕生日は
2人で1泊2日の旅行に行く
近場だけどね。
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