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【第一部】 5章
11 湊side
「あなた、千秋のことで電話だったの?」
心配そうな顔で美織が聞いてくる。
言いづらいが言うしかない。
俺は空君から電話で聞いたことを全て話した。
すると美織は泣き崩れてしまった。
「私があのとに、しっかり守ってあげれれば、あの子はそんな目に遭わなかったのに、っっ」
美織のせいじゃない。平和ボケしていた俺の責任なんだ。
「あのときも言ったが、美織のせいじゃない。あのあと犯人が分かったのに見つけられなかった俺が悪かったんだよ。」
それは違うと首を振る美織。
「30年だ。30年、どこかで生きていてくれと願ったが、会えるだなんて俺は思ってなかった。もうすっかり千秋も大人だが、俺は会えたことが奇跡だと思って少しでも千秋と過ごせたらそれでいいと思っている。美織はどう?」
「えぇ、そうね、あの子が元気でいてくれるならそれでいい。本当に、生きててよかったっ。」
30年、諦めたことはなかった。でも、もう会えないだろう。とどうしてもそう思ってしまったことなんて何度もある。
「空君から千秋の好きなもの聞いたから、一緒にご飯を食べて、千秋に俺たちのこと知ってもらおう?千秋のことも教えてもらおう。」
「そうね。千秋の好きなものいっぱい知りたいもの。」
俺たちは千秋に少しでも近づきたい。
そうしてあっという間に食事の日になった。
始まって数分、まだどちらも話し出せていない。
千秋はとても緊張していて、俺たちも緊張していた。
ここは俺が行くしかない。
「急に親子だって言われて混乱するよね。今日は千秋の好きなもの用意させたから、お腹いっぱい食べていってほしい。そして、少しでも君のことが知りたい。好きな食べ物、嫌いなもの、なんでもいから君のことが知りたいんだ。」
「あ、あの、俺まだちょっとよく分かってなくて、でも、話してみたい、です。」
少し不安なんだろう。空君をちらちら見ながらそう言ってくれた千秋。
千秋の好きな食べ物、嫌いな食べ物、好きなこと、嫌いなこと、いろんなことを聞いた。
「千秋、俺たちは君にお父さん、お母さんと呼んでほしいと思ってる。」
「千秋に会えたことが本当に嬉しいの。この日を30年待ち望んでいたのよ。あなたが生まれたことの次に嬉しいわ。」
美織がそう言った途端、千秋は固まった。
何かいけないことを言っただろうか。
空君も千秋を先ほど以上に気にしている。
なんだ。それほどまでに千秋にとって嫌なことを言ってしまったのだろうか。
俺たちと千秋をただ血が繋がっているだけの他人から親子に戻るのにはこの30年という年月は長すぎた。
俺たちも千秋もお互いを分からない。
「・・・お2人にどうしても聞きたいことがあって、今日はそれを聞くために来たと言っても過言ではありません。」
「なんだい?何でも聞いてくれて構わないよ?」
空君が千秋に大丈夫だよと言っている。
そんなに聞きづらいことなのか?
それとも、自分を守ってくれなかった私たちに怒っているのだろうか。
私たちが守れていれば千秋は虐待など受けずに元気に成長していたかもしれない。心に傷など負わなかったかもしれない。
千秋から何を言われても受け入れよう。
どれだけ責められても、受け入れたい。
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