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【第一部】 6章
10 空side
ぼんやりした頭の中に
千秋がいなくなった。
その言葉だけが聞こえた。
必死で目を開けろと僕自身に叫ぶ。
さっきまで人の声がしていたのに目が覚めた時には誰も病室にいなかった。
撃たれたことは覚えている。どのぐらい寝ていたんだ。千秋はどのぐらいの間1人だったんだ。
きっとまだ動かせる状態ではないだろう自分の体を必死に動かす。
今無理しないでどうするんだ。
何度も転びそうになりながら、進む。
千秋が居る場所なんてすぐわかる。
千秋待ってて。僕ちゃんと側に行くから。
そう思って屋上への階段を必死に上がる。
どうにかしてドアの前にたどり着いた。
ここは病室のある棟の屋上ではなくて病院の敷地内で1番高い建物の屋上。
ここなら何も邪魔されずに空が見えるもんね。
ここにいるんでしょ?千秋。
ドアを開けると屋上の外に足を出した状態で座って空を見上げている千秋がいた。
「千秋!!!!!!!!!!」
声を発するのは久しぶりだが全力で叫ぶ。
こちらを振り向いた千秋は、もう限界だった。
うまく動かない足を動かして、悲鳴を上げる体を無視してどうにか近づく。
千秋もトボトボとこちらに近づく。
ようやく僕の腕に包まれた千秋は静かに、静かに涙を流しながら、もう離さないと言いたいのか病院着を強く握りしめる。
泣く時はいつも少し声をあげて僕の名前を呼ぶ千秋が静かに泣いている。まるで子供のように僕に縋っている。
ごめんね千秋。こんな君を1人にしてごめん。
千秋の心が限界だったことは容易に考えつく。
屋上に来たことも、空を見る以外に目的があったのかもしれない。昔も海で死のうとしたのは空と繋がってるみたいだったから。って言ってたしね。
千秋が落ち着いたのを見てから病室に戻る。
病室に戻ると僕までいなくなったと大騒ぎになっていた。でもみんな僕と千秋が一緒に戻ってきたのを見て安心したみたいだ。
千秋はずっと片手で僕の手を握り、もう片手で僕の服を握りしめて顔は背中に埋めている。
病室に戻ってくる間もずっと一言も話はしていない。
病室に戻ってからは一緒にベッドに潜り込み僕の腰に顔を埋めている。
僕は明先生に診察をしてもらい食事の時間になったので特別に千秋のご飯も用意してもらった。
父さんから聞くには僕が目覚めるまでの1週間、僕の名前を呼ぶ以外は声を出していないし、食事もほとんど取らなかったみたいだ。だから、僕と同じメニューの食事を一緒に取り始めることにした。
一緒に食べようと言っても手をつけないが、僕が口まで持っていくと口を開けて食べる。
一口食べるごとに偉いねって言って頭を撫でると嬉しそうにまた口を開けてくれた。
千秋が眠った後、明先生から話を聞く。
「今の千秋は幼児退行的な症状だろうな。千秋が診てもらっていた先生に病室に来てもらうか?」
と言われたが僕は断った。
「今の状態の千秋に診てもらいたい意思を聞くのは難しい。千秋がやりたいことならさせるけど、わからないことはさせない。」
「だが空、千秋がそのまま戻らなかったらどうするんだ。」
「そうだよ空君。早めに医者に診てもらった方がいいんじゃないかと私も思うんだが。」
僕たちのお父さんは心配性だね、千秋。
そんな心配いらないのに。
「別にいい。千秋がどんな状態になっても僕は離れないし、一生千秋を養っていけるだけ稼げる自信もある。僕は千秋っていう存在があればそれでいいんだから。」
そう言って眠っている千秋の頬を撫でる。
千秋がいなくなった。
その言葉だけが聞こえた。
必死で目を開けろと僕自身に叫ぶ。
さっきまで人の声がしていたのに目が覚めた時には誰も病室にいなかった。
撃たれたことは覚えている。どのぐらい寝ていたんだ。千秋はどのぐらいの間1人だったんだ。
きっとまだ動かせる状態ではないだろう自分の体を必死に動かす。
今無理しないでどうするんだ。
何度も転びそうになりながら、進む。
千秋が居る場所なんてすぐわかる。
千秋待ってて。僕ちゃんと側に行くから。
そう思って屋上への階段を必死に上がる。
どうにかしてドアの前にたどり着いた。
ここは病室のある棟の屋上ではなくて病院の敷地内で1番高い建物の屋上。
ここなら何も邪魔されずに空が見えるもんね。
ここにいるんでしょ?千秋。
ドアを開けると屋上の外に足を出した状態で座って空を見上げている千秋がいた。
「千秋!!!!!!!!!!」
声を発するのは久しぶりだが全力で叫ぶ。
こちらを振り向いた千秋は、もう限界だった。
うまく動かない足を動かして、悲鳴を上げる体を無視してどうにか近づく。
千秋もトボトボとこちらに近づく。
ようやく僕の腕に包まれた千秋は静かに、静かに涙を流しながら、もう離さないと言いたいのか病院着を強く握りしめる。
泣く時はいつも少し声をあげて僕の名前を呼ぶ千秋が静かに泣いている。まるで子供のように僕に縋っている。
ごめんね千秋。こんな君を1人にしてごめん。
千秋の心が限界だったことは容易に考えつく。
屋上に来たことも、空を見る以外に目的があったのかもしれない。昔も海で死のうとしたのは空と繋がってるみたいだったから。って言ってたしね。
千秋が落ち着いたのを見てから病室に戻る。
病室に戻ると僕までいなくなったと大騒ぎになっていた。でもみんな僕と千秋が一緒に戻ってきたのを見て安心したみたいだ。
千秋はずっと片手で僕の手を握り、もう片手で僕の服を握りしめて顔は背中に埋めている。
病室に戻ってくる間もずっと一言も話はしていない。
病室に戻ってからは一緒にベッドに潜り込み僕の腰に顔を埋めている。
僕は明先生に診察をしてもらい食事の時間になったので特別に千秋のご飯も用意してもらった。
父さんから聞くには僕が目覚めるまでの1週間、僕の名前を呼ぶ以外は声を出していないし、食事もほとんど取らなかったみたいだ。だから、僕と同じメニューの食事を一緒に取り始めることにした。
一緒に食べようと言っても手をつけないが、僕が口まで持っていくと口を開けて食べる。
一口食べるごとに偉いねって言って頭を撫でると嬉しそうにまた口を開けてくれた。
千秋が眠った後、明先生から話を聞く。
「今の千秋は幼児退行的な症状だろうな。千秋が診てもらっていた先生に病室に来てもらうか?」
と言われたが僕は断った。
「今の状態の千秋に診てもらいたい意思を聞くのは難しい。千秋がやりたいことならさせるけど、わからないことはさせない。」
「だが空、千秋がそのまま戻らなかったらどうするんだ。」
「そうだよ空君。早めに医者に診てもらった方がいいんじゃないかと私も思うんだが。」
僕たちのお父さんは心配性だね、千秋。
そんな心配いらないのに。
「別にいい。千秋がどんな状態になっても僕は離れないし、一生千秋を養っていけるだけ稼げる自信もある。僕は千秋っていう存在があればそれでいいんだから。」
そう言って眠っている千秋の頬を撫でる。
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