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しおりを挟む「じゃあな、奏多。頑張るんだぞ。」
手術の時に家族に見送ってもらうなんて初めてで、なんて言えばいいのかわからない。
「うん、、ありがとう。」
嬉しくて、なんで言えばいいのかわからない。
「荒木先生、奏多をよろしくお願いします。」
「俺にとっても息子みたいなものだ、お前の息子を俺が絶対助けるから。」
「あぁ、頼んだ。」
荒木先生とお父さんがこうして砕けて話しているのを見るのはまだ違和感がある。
ギリギリまでお父さんが横に着いて手を握ってくれたけど、これ以上先にはお父さんはいけない。
不安な顔をしたお父さんに頑張ってくるからと言い残し手術室へと入った。
移植手術は5時間ほどで終わるみたいだ。僕は何度か手術しているし、発作も何度も起きてるからもしかしたらもっと長くなるかもしれないとも言われた。
僕に取っては眠っているだけだから、お父さんは待ってる間暇なのかなとか考えてしまっていた。
「奏多、大丈夫だからな。手術が終わって、退院したら何でも好きなことできるからな。」
「奏多くん、頑張ろうね。」
柏木先生って、マスクして顔が隠れててもかっこいいんだな。そんな呑気なことを考えているとだんだんと意識が薄くなってきた。
最後に目に入ったのは手術服を身につけた僕の好きな人。
ん、、、
ゆっくりと目を開けるといつもの部屋にいた。いつもより器具はたくさんついているけど。
時計を見ると、夕方だった。朝から手術だったのに、もう夕方か。
手を握られている感覚があったから横を見てみると、お父さんが手を握ったまま眠っていた。
「お父さん、、」
「っ!!!奏多っ、目が覚めたか。」
お父さんは僕をギュッと抱きしめて
「頑張ったな。手術は成功したからなっ、、よかった、、本当に良かった。」
「うんっ、、ありがとう。」
少し前までは生きていたくないってそう思っていたのに。今は手術が成功したことがこんなにも嬉しく感じている。
その後も荒木先生にも抱きつかれた。荒木先生は誰よりも泣いていて、良かった、、本当に良かったと言っていた。
お父さんはこれから会議があって少し外すがまた戻ってくると言って部屋を出た。
「・・・」
「柏木先生、戻らなくていいんですか?」
いつもと違い私服の柏木先生にドキドキしてるのを隠したくてそんな言葉が口を出た。
「今日はもう上がったんだよ。奏多くん、俺が今から何言うか分かってるでしょ?」
「・・・」
「国本奏多さん、あなたのことが好きです。大切にします。俺と付き合ってください。」
「・・・僕、学校に行ってなかったしずっと入院生活だったからあなたに相応しい人間じゃないのに、いいんですか。」
「俺は君の全てが好きだ。」
「柏木先生、僕、あなたのことが好きです。あなたの恋人になりたいです。」
僕は今日、新しい心臓と初めての恋人を手に入れました。
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