人間らしい妖怪様

cherry

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三話

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「ん…」
ふと目を開けると、彼女は神社の境内で眠っていた。
「…ここって」
「ああよかった、目を覚ましたのですね?」
声がしたため上を向くと先ほどの道を聞いてきた男がいた。
「…さっきの…、やっぱりあなたも妖怪なんですよね…」
「はい、大天狗です」
「ですよね…、ん?大天狗!?」
大天狗といえば、神通力を扱う天狗のなかでもより強力な神通力を持つとされる天狗だ。
しかも善悪両面を持つ存在であり、神や仙人、あるいは権現、仏菩薩として扱われ、人々の守護者となる天狗がいる。
その一方で大魔王などと畏れられ、日本妖怪の頂点として魔界に君臨するものもいるともいわれる。
「…どうかなさいました?」
それに気がついた瞬間、体が震える彼女。
それに気づいた彼が頭を撫でながら言った。
「大丈夫ですよ、あなたに神通力は使いませんから。」
「…そうですか…」
そうは言ったものの、本当かどうかは彼女にはわからなかった。
すると、ふすまが開く音がした。
目を向けると先ほどの少年がいた。
「あ、目が冷めたんですね!」
少年はとてとてと歩いて彼女の所へ行き、水が入った桶を置いて、その隣に正座をした。
「えっと、初めまして。僕は天狐の天音といいます。」
「天狐…」
天狐は狐が1000年生きた後になれる姿。
千里の先の事を見通し、尾の数は九本とも言われている。
野狐、気狐のように悪さをすることはない。
さらに生きて、3000歳を超えると空狐となると聞いたことがある。
「それから…、彼を嫌わないで欲しいんです。」
彼、あの朝笑った男だろうか。
「彼は本当は優しくて明るいいい人なんです。でも少しイタズラ好きで…、ここに運んだのも彼なんです。」
なるほど、彼はいい人なのだと千紗は思った。
(元々悪いのは私だ、やってもいない罪をなすりつけ、頬を叩いたのだから。…謝らなきゃな…)
その時に、またふすまが開いた。
「…お!人間ちゃん!」
次に来たのは朝笑った男だった。
「…あ、あの時の…」
「お!覚えててくれたんだ!俺感激~!…あ、あん時怒らせちってごめんな?」
「いえ、私の方こそすみません…」
謝ると彼はいいのいいの~と笑って許してくれた。
「あ、俺犬神な!呼び方はなんでもいいぜ!」
犬神…、四国を中心とした西日本に伝わる憑き神(狐憑きなどの類い)の一種とされる妖怪。 
強力な呪詛の力を持ち、取りついた相手をその力で祟り殺すと聞いた。 
また、犬神を氏神として祀れば大いにその家は繁栄するとされるが、同時に犬神への贄が尽きればあっという間に悲惨に没落という。 
管狐(飯綱)など同じく、式神として使役することもできたというのも聞いたが…。
「それから、そこに座ってるのは牛鬼と邪魅な!」
指さす方向を見ると確かにいた。
牛鬼は地方によって様々な姿に伝承されており、牛の頭に鬼の身体を持っていたり、その逆だったりする。 
また、土蜘蛛(鬼頭の蜘蛛)のような牛頭の蜘蛛として描かれることもある、らしいが…
「ん?どうした?」
…彼の見た目はまるで人間、角も無けれは鬼でもない。
そんな彼女の気持ちを知ってか知らずか彼は話し出した。
「…俺は父が牛鬼で母は人間だ」
「あ、だから人間の姿なんですね」
「まぁな」
それから邪魅、人間を害する妖怪の総称、山林の悪気を起こして人を害する妖怪、山神の一種。
「邪魅さんも人間なんですね。」
(顔に貼られたお札以外…)
「拙者は元々人型の妖怪、これが本来の姿なのでござる。」
「え、えっと…?」
そう言うと彼は焦ったように言った。
「こ、これは失礼、生まれが大昔なゆえ、このような口調に…」
彼の話によると、生まれは江戸の初期頃らしい。
「大丈夫です、少し驚いただけですので」
「かたじけない」
ふと、彼女は思った。
「そういえば、私の願いを叶えに来て下さったんですよね?」
「あぁ!そうだぜ!」
(そうなると、色々買わなきゃいけないよね…)
「ならば色々買わなくては…」
すると犬神が驚いた顔をした。
「あれ、いいんだ。帰れとか言ってたのに。」
(…あ、まぁいいや)
「せっかくなんで、ここに置く事にします。」
そう言うと犬神が顔をしかめる。
「なんだよー!人を居候みたいに~!」
「事実だろ。」
と、牛鬼が言った。
「それに、俺らは人間じゃない。世話になるな。」
「いえいえ、さて、買いに行きますか…」
こうして、五人の妖怪達との生活が始まったのである。
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