ロリコンの珍事情

tattsu君

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10話 とある日の悲しい思い出

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 あれ?俺今なにしてたんだっけ?確かあの光に包まれてから牧野とリリスに物凄く扱われて…。

 あれ?そこから先の記憶がない。なんかすごい事が起きたような?

『怜君どうしたの?急に立ち止まって』

 聞き覚えのある声。俺は声の聞こえた方に顔を上げると幼い頃の桜が目の前にいた。

『ほら、ゲームコーナーもうすぐそこだよ、早く行こうよ!』

 そう言って笑顔で手を引く桜のままに俺も続いていく。

 そうだ、俺は桜と一緒にルルポートに来てて、今からゲームコーナーに行くんだった。

 でも、何か嫌な予感がする。このままゲームコーナーに行ってはいけない、そんな気がする。理由はわからない。でも、今すぐに引き返せと頭が命令している。本能がそう告げている。

 …なんでだよ。俺は桜と一緒にゲームコーナーで遊ぶのを楽しみにしてたんだ。この日の為に少ないお小遣いを貯めて1日を精一杯楽しもうって思ってたんだ。こんな所で引き返すなんて意味がわからない。

 そして、ゲームコーナーに着いた。そこで色々なゲームを桜と遊んだ。クレーンゲームやカーゲーム、エアホッケーなど、とことん遊び尽くした。
 だが、次のゲームをして遊ぼうとした時に事件が起こった。

 突如現れた覆面の連中がゲームコーナーにいた人達を捕まえ始めた。俺たちもそいつらに捕まって他の人質と一緒に隅の方に固められた。

 そうだ思い出した。これは夢だ。昔、俺と桜は一緒に行ったデパートで運悪く立て篭り犯に人質とされたんだ。

 その時の俺は無力で他の人質と同じでビクビクと震えていることしか出来なかった。言われるがままに荷物を全て渡し、言われるがままに隅に移動して、言われるがままにただ大人しくしているだけだった。

 何時間経ったかもわからない。ただ分かるのは時間が経つごとに立て篭もり犯達が苛立っていくことだけだ。

 立て篭り犯が苛立ちから機材を蹴る度にビクッと震える事しかできない。怖かった。とにかく怖かった。ここで死ぬのだと思った。死にたくなかった。こうなるなんて思ってなかった。初めから分かってたらこんな所なんて来なかった。

 自分でも薄情な奴だと思う。幼かった俺は捕まってる時、こんなことばかり考えていた。自分から誘ったのに、被害者面してただ自分の不幸を呪う事しかしていなかった。
 誰よりも怖がりな桜が隣にいるのに、気遣ってやるこもせず。

 今、思えば俺はただ弱かった。小さかった。だから、俺は桜をこの手で守ってやる事が出来なかったんだ。

 苛立ちが頂点に達した立て篭もり犯のリーダーだと思われる男がゲーム機を思いっきり殴るとその機体が爆発した。

『もう我慢の限界だ!チックショウ!こうすればたんまり金が手に入ると思ったら大間違いだったぜ!もういい、てめぇーらも今見ただろ?この力さえあればサツどもがどんなにかかってこようが怖かねぇーんだよ!クッソ!イライラしてたまんねぇー!おい、そこのチビこっち来いや!』

 そう言って桜は腕を引かれ連れてかれた。

『やめて!助けて!怜君、怖いよ!助けてぇ!!』

 そう言って必死に助けを求める桜。俺はあの爆発した光景を見てから呆然としていた。
 現実とは思えない光景を見て現実逃避をしていた。
 これは悪い夢だ。そうだ、この夢が覚めたらいつも通りの生活が待ってる。そしたら、また桜と会って遊ぶんだ。遊ぶんだ…。

『……なせよ』

 俺は気づいたら立っていた。ここで立ったら俺も暴力を受けて死ぬかもしれない。それを分かっていたが止まらなかった。

『桜を離せよ!!』

 そう言って俺は走りだした。自分でも驚くほどに頭がクリアな状態で桜を掴む立て篭もり犯に突っ込んだ。幼かった俺にはその男を押し倒す力はなかった。
 立て篭もり犯の男は一瞬驚いたが、直ぐに俺に蹴りを入れて吹き飛ばす。物凄く痛かった。男の睨む顔が怖かった。近づいてくる男から逃げ出したかった。
 でも、俺はまた男に向かって走り出す。敵わない事は幼い自分でも分かっていた。それでも止まらなかった。やめられなかった。俺は何度も何度も殴られ蹴られ吹き飛ばされ、とうとう立てなくなった。意識が朦朧とする。
 そして、意識が途絶える前に見えたのは、武装した集団が立て篭り犯達を襲っている光景と、涙を流しながら俺の名前を呼ぶ桜の泣き顔だった…。

「……!……い!…怜!!」

 俺は牧野の呼び掛けで目が覚めた。体中が痛い。起き上がろうとすると鈍い痛みがして動くことすら出来ない。
「だめよ、ゆっくりしてて!今、リリスが治療能力を持つ仲間を連れに行ってるからじっとしてて!」
 牧野が不安と焦りを顔に滲ませながら叫んでいる。
「俺は…なに…を?」
「修行中にS級モンスターと遭遇したのよ。リリスが、不意を突かれて攻撃を食らいそうになったところを貴方が生身で庇ったのよ。」
 そうだった。急に現れたあの大きな化け物に反応が遅れたリリスを守ろうとしたんだ。
 俺は痛む体を無理矢理動かして牧野を見る。少しボロボロにはなっているが見た所、無傷だった。
「よかった。俺は、仲間を守る事ができたんだな…」
「何言ってるの!?貴方が死んだら元も子もないでしょ!!何でこんな無茶をしたの!?」
 怒鳴る牧野。しかし、俺はそれとは真逆に安心していた。
「人を守るのが俺の夢だか、ら…。」
そう言って俺はまた意識を失った。




 時は怜が吹き飛ばされた直前に戻る。


  まさか、こいつがここで出てくるとは……
  
  S級第八番の魔王。蒼天黒陽馬…。真っ黒な胴体に、青白い雷を纏った白銀の角。通った跡には大地を枯らすと言われていて、災厄を撒き散らす黒の化身である魔王の八番目。この番号は強さではなく魔王と呼ばれ始めた順番だ。

  大庭くんはリリスさんを庇って吹き飛ばされた。戦いを見ていた限りではかなり強い恩恵、それも遠距離高速型の恩恵を保持しているであろう大庭くんを始めに吹き飛ばした。恐らくだが、先程までの戦いを見ていたのだろう。大庭くんが厄介な恩恵保持者だということと、リリスさんを無意識に庇っていたこと。それを理解していたのだろう。
  本当にめんどくさい状況だ。私の本気を出せば、余裕で切り抜けれるだろう。だが、ここにはリリスさんがいる。今、自分の本気を見せたくはない。奥の手も使えない、使いたくはない。
  リリスさんと共闘すればなんとか……いけるかな…?

「牧野さん、少し下がっててくれる?巻き込んでしまうかもしれないから」

  覚悟を決めたのかリリスさんが私を見て言う。
  頼めるのなら頼んでおこう。厳しそうなら私も覚悟を決める。大庭くんをここで死なせるわけにはいかない。

「わかったわ。大庭くんをつれて離れる。ここは任せていいのかしら?」

「ええ、よろしく頼むわ」

  私は今出せるMAXでここから逃げる。
  数秒たったほどで2km程度離れられた。私が本気を出せば一秒とかからず戻れる距離だが、蒼天黒陽馬もそれは可能。一か八か、こちらに来たらリリスさんとは関係なく本気を出す。

  ドゴンッッ!

  爆音と共に地面が揺れる。音源の方向に向くと、リリスさんが蒼天黒陽馬を地面に叩きつけているところだった。
  かなり消耗しているようだが、相手も瀕死だ。それに、リリスさんの周りの木や、地面などありとあらゆるものが蒼天黒陽馬側に鋭く尖っている。リリスさんの勝ちだろう。
  八番目の魔王を単独撃破するということは、魔界の中でも上位なのだろう。アルクさんが教えてくれた悪魔王の幹部の中には名前がなかったから、幹部のひとつ下の魔隊長クラスだと思う。
  
「牧野さん、怜をありがとね。助かったわ」

  いつの間にここまで来たのか、リリスさんの能力だろうか…だとしたらさっきのは身体能力だけで、戦っていたのだろうか……。

「いえ、リリスさんもありがとうござい…危ないッッ!!」

  リリスさんの後ろに蒼天黒陽馬が雷を纏って襲いかからんとする。

「ッッ!!」
 
  油断していたせいか、このままではリリスさんの回避は間に合わない。やるしかないかっ!
  私は復讐者だ。自分の都合の悪いことを排除する。それに特化した力。こいつを殺す。二人をこちらサイドに引き込むなら殺させるわけにはいかない。

  コード…復讐者の枷をサードステージまで解除。
  絶対に…コロス…。

「……シね」

  蒼天黒陽馬の腹を蹴り飛ばす。それだけで、先程の位置までもどされる。全速力で相手に肉薄する。
  逃げようとしてか、体をおこし走り始める。たが、蒼天黒陽馬は体が思い通りに動かないのか、ひどく遅い。
  それもそのはず、復讐者は敵対者の身体能力を三分の一まで落とし、恩恵だろうが能力であろうが封印する。

  これで…コロス…

『グギャァァァァァァアス』

  蒼天黒陽馬の首を持ち捻って千切る。胴体と首の切れ目から血が吹き出し、辺り一体を赤く染める。

コード…復讐者の枷を再接続……

  ふぅ、なんとか倒したわね…。危なかったわ……。

「牧野さん…強かったのね……ビックリしたわ…」

「まぁこれでも、復讐者の頂点なので。これくらいはできないと」

  気絶した大庭くんを背負ったリリスさんが近づいてくる。
  
「それでもよ、魔王を倒せる程だとは思わなかったわ。さすがはアルクの契約者ってとこかしら」

「あそこまで削ったのはあなたよ。悪魔王の側近って娘までつよいのね。反則ものじゃない」

「私よりお姉さまの方が数倍強いわよ?……そういえば牧野さんは魔界誕生祭には来るのかしら?」

  魔界の誕生祭……アルクさんが言うには、神界に支配されていた魔界を取り返し、魔界が魔界として返り咲いた記念の日だっけ。生還祭のほうがよくない?

「一応いくわ。アルクさんと一緒に出るわ。最強祭にはでないけど。…あと、私のことは智美って呼び捨てでいいわよ。牧野さんって他人行儀過ぎるわ」

「わかったわ。じゃぁ私のことはリリスね?」

「リリス…これからよろしくお願いするわ」

「えぇ、こちらこそ。智美」

  二人で爽やかな笑みをうかべてお互いの手をとり握手を交わす。

「…って、それどころじゃなかったわ!怜を早く介護しなくちゃ!!!」

 魔王を倒した余韻に浸ってた2人はようやく現実を思い出し、慌てるのであった。


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