ロリコンの珍事情

tattsu君

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19話 男の誓い

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 燦燦と輝く太陽が世界を照らし、夜明けを告げる。
悪魔界最大の祭典『悪魔界誕生祭』。そのイベントの一つ、舞踏祭では人や悪魔、神霊、精霊など別世界の住人も参加が許され、己の全力を持って競い合う。
悪魔側の恩恵保持者の一人である怜も新参の武者修行ということで参加させられ、同じ恩恵保持者や、英雄の師などなどと四戦を戦い死に物狂いで生き残ってきた。
 そんな死線をくぐり抜けてきた怜の目の前には大きな吸血鬼が……。

 話は変わり
昨夜、サキュと牧野の短くも高レベルの戦いはサキュの勝利で幕を閉じた。相性悪く牧野は敗北したが、二人共魔界では上から数えた方が早いような強者なのだ。決して負けた牧野をフォローしている訳では無い。
 そしてそんな牧野は舞踏祭を棄権し、現在行方をくらましていたりする。

 そして時は戻り、目の前に立つ大きな真祖たる吸血鬼のお兄さん。

「ったく。智美ちゃんの為とはいえ、なんで俺がこんなのに……しかも相手がお嬢んとこの契約者って……」

 吸血鬼のお兄ちゃんことアルク・タルシエルは悪態をつきため息を漏らす。アルクと牧野智美は契約関係にある。牧野の持つ復讐の恩恵はアルクとの契約の賜物である。人間とは思えない程の負の感情に見惚れ、彼女の幸せを願う悪魔である。

「おい、怜とやら、てめぇお嬢や智美ちゃんと仲いいからって調子乗ってんじゃねーぞ?」
 
 実際はこんな悪魔ではないはずなのだが、牧野が棄権したことの穴埋めとして参加させられ苛立っているのだろう。
 荒れ狂ういかつい兄ちゃんを目の前に怜は言葉を失っていた。牧野との契約悪魔が強力であることは知っていたが、ここまでだとは思わなかったのだ。

こんな……こんな……

「ブーメランパンツの変態だったなんて……!」

 麦わら帽子に、虹色のサングラス、そして黄色のブーメランパンツ。いくら顔が良くても、背中に羽が生えた吸血鬼だとしても、それはないだろうと……。
怜はここまで四人の強者と争ってきたが、ここまで個性の強い敵はいなかった。完全に出オチである。
 厳かな雰囲気を醸し出すこの闘技場にはあまりに合わないこの吸血鬼を見て、悪魔軍と聞いているお偉いさんがたは頭を抱えている。

ドオオオーン

 アホな吸血鬼とロリコンが睨み合っていた状態を見兼ねて進行役が勝負開始のゴングを鳴らす。悪魔軍の恥晒しを早めに引っ込めたい意志が伝わってくる。

 ゴングと同時にアルクと怜は気合を入れ直し、同時に気配察知を展開する。
怜は巫山戯た吸血鬼の兄ちゃんに対する怒りを無理やり捻り出し、恩恵の準備を始める。
 一方悪魔軍幹部の一人であるアルクは元の位置から一度も動こうとしない。しかし、その眼光は怜を確かに捉えている。

「かかってきなクソ餓鬼。ここでてめぇの力、意志、全てを叩き潰してやる」

 先程までの変態あんちゃんはどこへやら。なおも一向に動こうとせず怜を見続けるアルクの気合いは彼が真祖であることを示していた。

 その雰囲気に怪しさを感じた怜は大地を蹴り、動かないアルクに肉薄する。アルクが事前にリリスから悪魔軍幹部であることを教えられていた。怜の恩恵は強力で、やりようによっては必殺の力だ。
 だが、それは当たればの話。今までの敵は音速を超えた一撃に反応出来ていなかった為なんとかなったが、今回は相手が違う。そう簡単にいくはずがないのだ。故に相手の近くで発動すれば倒せると判断した。

「いくぞ、んのイケメン野郎がっ!!」
「はっ!悪くない判断だ。単純だが有効な手だ」

 怜の恩恵が放たれる。音を置き去りにする協力無比な一撃はアルクへと近付いていく。このままではアルクの体は貫かれるだろう。

 そこで、アルクはただ殴ることにした。

ドガッッッン!!!

 非常識な選択は真祖の腕を破壊したが、同時に怜の恩恵を弾き返して見せた。

「言ったろ。てめぇの力、意志、全てを叩き潰してやるってな。確かにお前の恩恵は強い。強いが汎用性がねぇ。てか、お前はその恩恵の本質を見誤ってる。その使い方でも通用するっちゃするが、俺みてぇなやつには通じねぇよ」

 破壊された腕を軽く振るうアルク。すると、腕から吹き出た血は一本の大きな槍に形を変え、折れた骨は瞬時に再生を始める。
 怜が唖然としている間にはアルクは完全再生し、武器も手に入れていた。

「俺の能力もこの場ではたいした使い方はできない。それにこの観衆の前じゃどっちにしろ本気は出せねぇしな。さぁ、どうする?お嬢の契約者。このままじゃ師匠に殺されるぜ?」

 血で形作られた赤い槍をぶんぶん回して台詞を決めるが、思い出して欲しい。彼はブーメランパンツの変態だ。幹部メンバーは頭を抱え、エアルは腹を抱えて笑っている。本来はここで観客がドッと湧くところなんだが、今はただ静寂が場を支配している。客は混乱し、軍の人間は笑ったら殺されるからだ。

 そんな静寂も相まって怜に重圧がかかる。
簡単には動けない。今の力では通用しないと思い知らされたからだ。相手は血槍を持っているし、それだけの能力というわけではないだろう。

怜はなにもできないままだった。

「おいおい、どうしたんだ?攻めてこないならこっちから行かせてもらうぜ?」
「くっ…」

 アルクは槍を構えて猛突進しその勢いのまま槍で突く、それを躱し手の甲で槍を弾いた瞬間、手に激痛が走る。

「なっ…!?」
「おせぇぇ!!」

 怯んだ怜の隙を見逃すことなく怜を蹴り飛ばす。数メートル吹き飛ばされるがすぐに体勢を整え、さっき弾いた手を見る。
その瞬間、戦慄が走った。
怜の掌に穴が空いていたのだ。血の気が引くのを感じるのと同時に今まで以上の激痛が掌に襲う。

「どういうことだ…!」
「あんま生身で突っ込めばその掌みたく蜂の巣になるぜクソガキ。この槍は俺の血から出来てる。俺が望めばどんな形状にだって変化させることができんだよ間抜けがぁ!」

 怜が槍を弾こうとした瞬間、怜が触れた槍の柄の部分から棘が生まれ怜の掌を貫いたのだ。

「まじか、なんでもありかよ…」
「お前は確かに人間にしては動ける。だがなぁ、最強の俺様から言わせて貰えばお前は赤子同然なんだよくそったれ!!」

1人でどんどんヒートアップしていくアルクはまたも槍を構えて突進してくる。乱暴に振り回された槍の嵐を紙一重で避けていくが

(くそっ…めちゃくちゃな攻撃に見えて全く間合いがとれねぇ!)

 アルクの攻撃は確かに乱暴で力任せに振り回しているようにしか見えない。だが、怜が得意とする素手の届く近距離には怜が踏み込めないように槍を操っていたのだ。

「どうしたクソガキ!避けるだけかよつまんねぇーぞ!!」

 そう言って槍を横振りするが、怜はそれをバックステップをしながら体をくの字に曲げ避け…れなかった。槍の刃の先が急に伸び、怜の腹に浅く切れ込みを入れたのだ。

「ぐっ…!!」
「さっさと降参しなクソガキ。翁のおっさんを倒したのは流石だが、それでも俺には届きはしねぇよくそったれが。」
「…アルク、1つ聞いてもいいか?」
「なんだよ?」

 怜はこの試合が始まってからずっと疑問だった事を体力回復の時間稼ぎを名目に聞くことにした。

「なんでそんなに不機嫌なんだよ?」
「あぁ!?そんなの決まってんだろ!」

アルクは叫ぶ。

「今日はな、お嬢とデートする約束だったんだよ!!!」
「…は?」

 アルクは溜めてた苛立ちを全て吐き出すかのように大声で怒鳴り散らかし始める。

「お嬢が1人立ちしてから構ってくれねぇんだよ!何回もデートの約束をお願いしてやっとオッケーもらったと思ったら牧野が参加予定だった舞踏祭出ないとか急に言い出すわ、対戦相手はお嬢を誑かすクズとくれば誰だっていらつくだろぉぉがぁぁぁ!!!」

 会場に沈黙か訪れる。
アルクが切れてる理由。それはデートの予定が崩れたことに対する八つ当たりであった。

「そ、そんなことで俺は手を貫かれたのかよ…」
「そんなこと…?そんなことだとぉぉ!?」
「!?」

瞬時にアルクは怜の目の前に移動し胸倉を掴んでいた。

「毎日お嬢といちゃいちゃしてるテメェからしたらそうでもないことかもしんねーけどな、俺にとっちゃ一年の中の唯一の楽しみだったんだよぉ!!!」

 そう言って今にも怜のことを串刺しにしようとするアルクに怜は慌てて静止を促す。

「ちょちょ、待った待った!!」
「うっせぇ!おれがぁどんだけ楽しみにしてたと思ってんダァ!」

アルクは涙すら流していた。

(ま、まじかよ…そこまでリリスとデートしたかったのかよ…)

 その時、怜はある賭けを思いつく。怜は声を落とし2人だけにしか聞こえない声で話しかける。

「なぁ、アルク。俺と1つ賭けをしないか?」
「誰がテメェなんかとそんなことするかぁ!!」
「話は最後まで聞いてから決めたらどうだ?まず俺にこの試合勝たせろ」
「テンメェ、八百長を俺にしろっ」
「だぁぁぁ!!最後まで話を聞け!その代わり!勝たせてくれたら………」

 そして、怜はアルクが必ず首を縦に振るであろうある条件をアルクに出す。

「…その話は本当か?」

かかった。

「さっきはあんなこと言ったが漢にとって女との時間ほど尊い物はない!それを奪ってしまった罪滅ぼしだ気にしないでくれ…」
「うぅ、ありがてぇ…!俺はこんな頼りになる漢にあんな失礼な事を…すまなかった許してくれ!」

「謝るな!まだ戦いはこれからだろ?」
「ふっ、そうだな…!!」

そう言って距離を取り合う2人。

「まさか、この俺の拘束から抜け出すとはな!おもってたよりできるよぉだなぁ!!」
「まだまだだ!これで決めるぞアルクゥゥ!!!」
「来い!!怜ぃぃぃぃ!!」
「「うぉぉぉぉぉ!!!」」
 
 そう言って怜は能力(ち◯こ)による音速攻撃を、アルクは渾身の力を込めた槍を放つ。ぶつかり合う2つの膨大な力。しかし、アルクの槍にヒビが入る。

「!?」

その瞬間、アルクの槍を突き破り怜の一撃が決まる。

「くっ、油断したぜ…。まさかお前がここまで強かったとはな…負けを認めるぜ…(がくっ)」

 そう言って倒れるアルク。
その瞬間どっと会場が舞い上がる。無名の人間が悪魔幹部の1人を倒したように見えたからだ。

 そう、この戦いが怜の勝利で終わったのが怜からリリスにデートをアルクとする事を頼みつけると約束をしたからということを今は2人しか知らないのだ…。

こうして怜の本戦突入が決定した。
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