ロリコンの珍事情

tattsu君

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26話 才能と実力

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 怜と守の試合が終わって盛り上がりを見せる会場の中央には1人の人間と1人の悪魔が対面していた。

 神崎冬馬は目の前に立ち塞がる一体の悪魔を見つめる。
 内包する力は自分よりも目の前の悪魔の方が遥かに上。他の幹部とはまるで違う。その大きな体は地獄の王を思わせる。

「あなたは淫魔族と聞いているんですが」
「間違ってねぇだろうよ。俺も自分の認識が間違ってなければ淫魔族だと思っている」

 淫魔族とは本来非力な種族。それこそ武の才能で言えばゴブリンと同等。肉体一つで他者を圧倒することなど不可能なはず。

(遺伝子の問題かなにかは知らないけど、ここで勝たないと魔族側の恩恵保持者の実力を測ることはできない。なんとかしないとね……)

 魔族お抱えの恩恵保持者の中で王から一目おかれている男。これから先の本戦で必ず敵対するであろう男の実力を測ることが神崎冬馬の目的。精霊界の衛藤護にも興味があったが、その二人の対決を見てある程度の強さは分かっている。なので、今の目的は魔界のあの男の限界を知ること。

 しかし……

「ちっ。幸村が負けたっつうからその尻拭い戦を俺がすることになったわけだが……。想像してたよりも弱そうだな」

 この悪魔は神崎冬馬がどれだけ殺気を送っても微動だにしない。
 圧倒的上位者のオーラ。神王に会ったときに感じたものと似ている。恐怖と興味。ただの木っ端悪魔とはレベルが違う。

エアル・アスフィール

 武帝と呼ばれる魔界きっての武人。
 本来持つ能力は己の肉体とは全くの別物と言われており、能力を組み合わせた彼は正しく悪魔である。と、言うものが多い。

「神の力を持った程度で強者気取りならここらで現実を教えてやる」

「……」
「行くぞ……」

 瞬間、神崎冬馬は背後に迫る死を感じ取る。
すぐさま振り返り、恩恵を使う。

「神掌!」

 その金ピカの掌がエアルの拳を受け止めるが、その掌は防御の意味をなさなかった。

「甘いんだよ、てめぇは」

 なんの力も含まれていない純粋な拳は金ピカの掌を突き破り、肉体を強化した神崎冬馬の体へと吸い込まれていく。

ーードパンッ!

 数々の悪魔、精霊を相手に戦い勝利してきた恩恵使いは腹を打たれ、風穴をあける。血を吐き、地面に転がる様は神の力を持つものとは思えない。

「ガハッ、ゲホッ・・・」
「これが力の差だ。神の力を持っていようが持っていまいが、所詮貴様は人間。悪魔である俺に勝てるはずがねぇんだよ」

 圧倒的な力の差。戦闘において苦労を知らない神崎冬馬はその初めて感じる敵の恐ろしさに冷や汗を流す。間違いなく殺される。そう彼の脳では警報が鳴り続けている。しかし、風通しの良い腹となってしまった神崎冬馬はいまや満身創痍。化物相手に戦いを続けていられるはずもない。

「早くリタイアでもしたらどうだ?」

 エアルは戦いを続けるつもりは無いらしい。
 その言葉に神崎冬馬は苛立ちを感じる。殺す程でもない、またどこかで会ったとしても障害にすらならない。そう言われているようで。
 しかし、反論することも出来ない。なす術がないのは事実だからだ。

 今だ血を流し、苦しげな呼吸を続ける神崎冬馬は静かに手を挙げ、降伏の意思を試合を見守る審判に伝える。
 審判もその意思を汲み取り、試合終了の報せを告げた。

 多くの者が注目していた神霊側の人間対武帝の戦い。
 その戦いは、僅か一撃。一瞬の間に終わってしまったのである。恩恵保持者の中ではトップクラスの力を持つ神崎冬馬は魔界幹部最強のエアルに完敗した。





「予想できてはいたが、無残なものだな」
「そうだね~。冬馬もまだまだかな。せっかく僕も支持してあげたのに。負けちゃうなんてね~」
「エアル相手じゃ分が悪い。単なる力押しだけだが、エアルは極めているからな。一撃の破壊力は並じゃない。風穴だけだった点は褒めてやってもいいかもしれん」

 先の試合の批評を続ける王と王。
 手元にあるコーヒーをちびちびと飲み、一回一回を噛み締めているようだ。無限の時を得ていると称しても過言ではない彼らは、一つ一つの体験を楽しむことを重視している。何度繰り返しても変わらないものだ。

「でも、エアルに手も足も出ない状態じゃまずくない?」
「まぁそりゃな。そこだけが予想外だった。甘くみすぎってことだ」
「僕の部下にでも行ってきてもらおうか?」
「いや、それはやむなしって時以外は使いたくない。影響が出すぎる」
「最後にはどうせ会うことになるんだからいいと思うんだけどな~」
「過程が問題だ」

 情報王はただ静かに経済王を否定する。
まだ早い。手を出すには時期尚早だと。

「いいけどさ。・・・そう言えばなんだけどさ、復讐者はどこへ?」
「ちょっとした旅に。あの子ではまだ足りない。いや、あの子だけじゃないか。まだまだ彼らは甘い。力も知識も判断も勇気も、足りな過ぎる。少しづつ、少しづつ起爆剤を入れ込んでいこう」
「へぇ、結構考えてるんだね」
「そりゃな。そろそろ無限ループも終わりにしたい」
「それは僕ら全員が思ってる事さ。飽き飽きしたよ。これを終わらせる為なら死んでもいい。いや、死ぬ為に終わらせるのかもしれないね」

 二人してにやりと笑う。
 無限ループの先にあるものを求めて、今日も彼らは策を練る。





「冬馬くん!大丈夫!?大丈夫!?」
「怪我ない!?いや、怪我は凄いことになってるんだけどー!?」
「大丈夫ですか!痛くないですか?私が添い寝いたしましょうか!?」

 などなど部屋を埋め尽くすほどの数いる女性に心配の声をかけられるハーレム男、神崎冬馬。まことに羨ましいことだ。その全てに優しい笑みを返し、逆に安心を送る。

 神崎冬馬を取り囲むハーレム軍団。彼女達は深手を負わせたエアルを許さないだろう。許さないからなにか出来るという訳でもないが、女性の恨みは怖いのだ。神を呪い殺す程度には。

「大丈夫だよ、ありがとう皆。ひとまず家に戻ろう。僕らが魔界にずっといてもいいことは無いだろうしね」

 腹に穴を開けられたとは思えないほどに爽やかな声で答える。
 取り巻きの女性達は無理矢理ベッドとから起き上がる神崎冬馬を心配しているが、それを制止したりはしない。あくまで、神崎冬馬の意見が優先だ。一番近くにいた女性達が彼のすぐに倒れそうな体を支え、医務室から退室していく。

 そのすぐ近くのベッドで眠っていた参加者たちは恨めしい、呪いのこもった視線を神崎冬馬に送り続けていた。いなくなった今でも舌打ちが聞こえるのは幻聴ではない。

 死にたもうハーレムマン。
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