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31話 睡眠
しおりを挟むさて、新しい性癖に目覚めてしまった俺だったが、当初の目的であった修行を通り越し、舞踏祭という名の殺し合いに参加させられたり、契約者としてリリスの両親に認めてもらったりと、バラエティー豊かな体験を一気にしたんだが、誰かの思いつきでポンポン話を追加されていったように感じるのは気のせいだろうか?(はい、すいません。作者より)
まぁ、いいや。なんだかんだ色々あった魔界であったけどようやく人間界に帰ることが決まったんだし、魔界ツアー最終日の夜の今日はゆっくり眠るとしよう。とにかく驚きの連続で俺は疲れましたよ…。
自分にあてられた城の客室のベットにボフン!っと飛び込んでそのまま眠りにつこうとする怜だが、疲れているはずなのになかなか寝付けない。
「…トイレいこ」
特に行きたいわけでもなかったが、ソワソワしてしまい何もせずにはいられなかったため、ベットから起き上がる。扉の前まで行きノブに手を伸ばすと、外側から扉がそっと開いた。
「うわっ!な、なによ怜。扉の前なんかに立って、寝てなかったの?」
「トイレに行こうと思ってな。んで?逆に聞くけどなんでリリスがここにいるんだ?」
「いや、それはその…」
急にモジモジし始めるリリスに怜は首を傾げる。
「…って思ったの」
「え?なんだって?」
リリスの声が小さく聴こえなかったら反射的にそう返してしまった。すると、リリスは顔を真っ赤にし、上目遣いになりながらそれでもいつもより勢いのないボソボソとした声で言い返す。
「だ、だから、あ、あんたと一緒に…」
そう言い篭るリリス。
ん?俺と一緒に?夜、リリスと何か一緒にする予定なんてあったっけ?
無言のままポカーンとしてる怜を見てムッとするリリス。
「あぁもう!このバカ鈍感スケコマシ!!」
「ちょっっっっとまて!!バカで鈍感ではあるかもしれないけどスケコマシって言われるようなことはしたことねーからな!?」
なんで急に罵倒!?俺、なにもいってないよ!?今回に限ってはやましいことも何も本当にしてないよ!?
「…本当に私が来た理由がわからないって顔ね。もういいわ言うわよ。あんたと一緒に寝ようと思って来たのよ」
呆れたと言わんばかりにため息をつくリリス。それを見て目をぱちくりする俺。
一緒に寝る?寝る。…寝る!?リリスと俺が一緒に寝る!?ベットの上で!?まじでまじでまじかぁぁぁ!!!!!
「それは本当のことでしょうかリリス様ぁぁぁ!?」
「きもいわよ」
「ぶごほぉっっっ!!!」
なぐ、殴った!みぞおちなぐった!!相変わらず容赦ないネ!?
「いや、勝手に妄想膨らますあんたの自業自得でしょ」
「…はいごもっともです」
俺は目にも見えない速さで額を顔につけ跪く。いわゆる土下座だ。
「あぁ、もう!そんなのいいから早く来なさいよ」
顔を上げたらすでにリリスはベットの上にいた。
幼女(リリス)の隣に座る俺。
2人して俯き続ける。
「…取り敢えず布団の中に入るか?」
「そ、そうね!寝るんだもの!お布団にはいらないとね!!」
「お、おう」
もぞもぞと布団の中に入り寝転がる2人だが会話はない。いや、寝るんだから会話がないのは当たり前か…。にしても、寝れねぇよなぁ…。
2人揃って反対側を剥き寝転がっているふたり。
ぴたっ、ぎゅっ。
「あ、あれ?リリスさん。なんかものすごく近いというか当たってるような気がするのですが…」
「わざとやってるのよ、悪い?」
「いやそんなことないよ!むしろウェルカムドントウォーリー!!」
「………」
いつもなら「うるさい」と言って一発二発は暴行してきそうな場面だったがリリスは、黙って抱きついたままだった。
「…なんかあったのか?」
背中越しにコクンっと小さく頷く気配を感じた。
「ここに来てから色々なことがあったじゃない。」
「まぁ、そうだな」
「それも命がけなこともあったし」
「あぁ、あったな」
「私が無理やり連れてこなかったら怜をそんな危険なことさせなくても良かったのかなって…」
「それは違うぞ、リリス」
「…え?」
リリスは抱きついたまま、俺はリリスに背中を預けたまま話を続ける。
「そりゃ、確かに危険なことはたくさんあった。何度も死ぬかもしれないって思ったし、それに、……なんで俺がこんな目にって思ったこともあった」
「………」
「でもな、俺は後悔なんてしてない」
リリスがどんな思いで俺の話を聞いてるかわからない。でも、それでも、この言葉はリリスに届いて欲しい。
「人を守るための力を得たからじゃない。俺は、お前と出会えたことに感謝してるんだ。まぁ、出会い方はあんまよくなかったけど、いまじゃ、お前がいない日常が想像できないぐらいなんだ。危なかっしぃ体験をするのも俺の日常の1つになったんだ。だから、今回のこともちょっと大きめな日常の1つなんだよ」
リリスの握る力が少し強くなった気がした。
「…私のこと怒ったりしてないの?」
その声は震えていた。いや、声だけじゃなくリリスの体も震えていた。その震えがリリスの不安なのだと伝わってくる。
「怒る?そんなわけないだろ!逆に大好きだよばーか!」
だから、そんな不安を笑い飛ばすかのように敢えて、いつものような口調で、しかし、それでいてストレートに俺は、想いを告げる。
「…ふふ。あんたらしいわね。」
気付けばさっきまでの震えは無くなっていた。
「私のことが大好きなんてとんだロリコンね!この変態!!」
「へっ!そんなロリコンに抱きついてるお前も同じ変態なんじゃねーのか??」
「「ぷっ…」」
「「あははははははは!!!」」
俺とリリスの笑い声はこの広いようで狭い室内に留まらず、城全体へと響き渡ったような気がした。
俺とリリスとの関係は、人間と悪魔、契約者と提供者。決まりや秩序から見たらそんな上下関係にしかないのかもしれない。でも、今の俺にとっては友達。いや、もはや家族のような関係に感じる。今のこの感じは長く感じることのなかった家族の温かさのそれだった。
しばらく笑いあった俺とリリスは、笑い疲れてやめると、しばらくもしないうちに眠りに落ちていった。
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