女勇者をゾンビにしたら、回復魔法でダメージを受けるし、聖剣も持てません……

亜久里遊馬

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第2話:新鮮な勇者の死体(2)

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「女!? それにこの紋章は間違いなく……勇者だ。しかし……そんな馬鹿なことが」

 首から下げた金のロザリオは、勇者であることを示す剣の形になっている。
 鎧も見たことがないものだ。

 そして何よりも……。

「実在していたのか、聖剣リガール」

 おとぎ話の中のものだと思っていたが、ここにあるのは本物、あるいは本物に限りなく近いレプリカだ。
 ランク外の自分でも、そこに秘められた膨大な魔力がわかる。

 やはり、勇者なのか?

 姿はまだ少女だ。
 年齢は15,6歳ほどに見え愛らしい顔つきをしている。
 何故か笑いながら死んでいるが、それはこの際どうでもいいだろう。

 彼女が勇者?
 俺はもう一度自問する。
 華奢な腕に、聖剣は似合わないような気がした。
 
 だが……数々の証拠は彼女が勇者であることを示している。
 わからない……。

 ……それにしても、勇者と思われるものがどうしてここで死んでいるんだ?
 死体はきれいなもので、外傷は加えられていない。
 
 手を伸ばした先の毒キノコを食った、なんていう馬鹿げた原因はないよな。さすがにな。

 さて……この死体、どうしようか。

 死体を扱う以上、教会へ持っていっても手遅れな事はわかっている。
 人間とわからないほどの肉体の崩壊、あるいは死から短時間しかたっていないならば、教会で治癒することも可能だ。

 しかし、この死体は時間がたちすぎている。
 仕方がない。
 葬るか、ここで動物に食われるか、あるいは……。

 ……俺は、誘惑に勝てなかった。
 人間としての意志をもったゾンビ。
 俺の最終目標。
 
 術の熟練度はまったく足りていないだろう。
 それでも、もし、もし作れるのなら――

 勇者の顔に血をたらし、目を閉じ集中して呪文を唱える。
 圧縮ではない、正式な呪文だ。

「光より出て、闇に帰りしもの。我、その一瞬の時を借りる。我が名はカフカ。我が名の下に今一度仮初めの生を受けよ。顕現せよ! クリエイト・アンデッド!!」

 久しぶりの呪文詠唱だ。
 言葉の端々に魔力を込めたつもりだ。

 だが……目を開けるのが怖い。
 自分が人間に対して術を使ってしまったことよりも、本当に効果があるのか?
 それが怖い。

 14歳でギルドに登録して、もう6年だ。
 ずっとクリエイト・アンデッドのみの修行を行ってきた。
 ゾンビにさえならなかったら、この6年間に意味を見いだせなくなってしまう。

 しかし……呪文を唱えてしまったのならば、最後まで見なくては。
 俺は目を見開いた。

 1分ほどすると、指が動いた。
 早い。早すぎるぐらいだ。
 ゾンビ化には成功したようだが、この先までいけるのか?

 さらに1分ほど待つと、何故か肉が焼ける臭いがしてきた。
 あまりいい臭いとは言えない。

「なんだ、これは。誰か害獣退治でもやってるのか?」

 悪態をついていると、臭いの発生源が遠くないことに気がついた。
 遠くないどころか、目の前だ。

「え!?」

「あっちいいいいいいい!!」

 聖剣を放り出し、ロザリオを地面に投げ捨てた少女が、そこに立っていた。
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