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第7話:私に秘策あり!
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「神的レビューで続ききちんと書いてよー」と叫びながら吸い込まれる私に、遠くから声が聞こえた。
「お嬢様!! スマホを落としてください!」
言われるままにスマホを地面に落とすも、吸引力は変わらない。
どこかの掃除機みたいだ。
ここからの逆転なんて……。
「特技発動『かばう』!」
一瞬にして、私の位置が移動し外壁の横に立つ。
ジキルが全力で私とは逆方向に走っていたらしい。
さらに引っ張られる私をニコルが掴んでいてくれる。
やがてスマホから離れたジキルも加勢する。
約10mぐらい離れた所で、スマホからの吸い込みはなくなった。
「無事で良かったです」
ニコルが顔を赤くし、汗をかきつつ言う。
「本当に間に合いまして、わたくしも嬉しいです。しかしながら、あのスマホをどうするか……わたくしたちアプリでは操作できません。かと言ってお嬢様が近づいてしまうと、吸い込まれる。わたくしの服をご覧になってください。服がこうもなってしまうということは、威力は相当なものです」
ジキルは少し破れたシャツを整えている。
ということは、私の服が破れてたんだ……。
「酷いアプリね。スマホの中をきれいするんじゃなくて、外の人間を吸い込もうとするなんて。ウィルスが入っているってレベルじゃないわよ、それ」
「一瞬でお嬢様がアプリを終了できれば、可能性はありますが……わたくしとしましては、そんな確率に頼ることはしたくありません」
「僕も、できれば他の方法を考えたいです」
ジキルに天から明るい輪が下りてくる。
回復魔法だ。
「ありがとうございます」と丁寧に、しかし堅苦しくお辞儀をしている。
「さて……どうしようかな。踏まれて壊れても困るから2人のどちらかにはスマホについていてもらいたいけど、肝心の私が近寄れないんじゃどうしようもないわね。んー、例えばさ、マッチョを10人ぐらい連れてきて、私を引っ張ってもらえばいいんじゃない?」
吸引という点に関しては、これでクリアできる……のか?
「でも、ナオさんを吸い込むってことはスマホから近づいてくるかもしれないんですよね。どこかに縛り付けておきますか?」
3人で周囲を見回してみるも、木の一本さえ見当たらない。
「ニコル様、仮に縛るものがあったとしても、その方法も危険かと。お嬢様への身体の負担も大きいものですが、スマホ自体が壊れてしまうかもしれません」
吸引力を無理やり押さえつけてしまうのなら、可能性としてはあり得るかも。
その時、私の頭に少し前の出来事が思い浮かんだ。
そう、あれはジキルをインストールする直前――
「アイディアが1つ。試してみましょう。ジキルはスマホを守って。ニコルは今から言うものを買ってきてちょうだい。ほとんどお金残っていないけど、大したものではないわ」
妙な威圧感のある執事の近くには誰も近寄らないようで「何アレ?」「格好いいけど、少し変じゃない?」などと言われながらも、スマホの前で仁王立ちしていた。
やがて、ニコルが戻ってくる。
重そうだったけれど、これで私が考えている作戦がとれる。
ニコルが地面に広げたもの……それは『布』だ!
色や質は気にせずに、とにかく分厚いもの。
中には布というよりも絨毯に近いものも混じっている。
「さあ! それをスマホにかぶせて!!」
スマホの充電は太陽光でしかできない。
それなら、ずっと太陽が当たらないようにすればいい!!
あのアプリの威力なら、バッテリーの減り具合も、すごいことになっていると思う。
「ここからは持久戦ね。ジキル、本当に悪いんだけど、スマホの見張り頼んでいいかな? その間にニコルとスライムを倒して簡単なキャンプ道具と食事を買ってくるわ」
「承知いたしました。戦略としてはお嬢様のおっしゃることが最適でございます。わたくしは恥ずかしながら長期戦には不向き。対してニコル様は安定しております。ここはフリーズしても私が守り抜きますので、いってらっしゃいませ」
確かにこの執事なら固まっていても誰も近づかないな。
逆に不気味がって避けるかもしれない。
それからは長く苦しい戦い? が続いた。
以前の戦闘で少し慣れてきたので、スライムも1日10匹ぐらい倒せるようになっている。
私がなるべく消化液を避けて、回復は少なく。
1日30の経験値。30Gを手に入れた。
それが1週間ほど続いた。
ちなみに1日目に「街の人に終了してもらえばいいじゃん!」という当たり前の考えを思いついたけど、どうやら街の人にはスマホが見えていないようだった。
さすが別世界のアイテム。
「経験値210も貯めたのに、まだレベルアップしない」と愚痴を言っている私を、ニコルが困ったようにな顔で励ましてくれる。
優しさが染み渡る。
キャンプ道具を買って、外でのご飯。そしてテントでの就寝。
小学校の頃を思い出すなあ。
と、気楽に考えていた。
ジキルはただ立っていたせいもあって、幸いにもフリーズはしなかった。
7日目までは……。
食事の時間だけ動いていたのが問題だったのか、私たちが帰ってみると、白目になって、けれど地面にしっかりと足をつけているジキルがいた。
か、かっこいい!!
少年漫画でこんなシーン見たことがあるよ。
皆を守り抜いたヒーロー。
1人が近づくと息をしていないことに気づいて「し、死んでる」って言って……泣きながら感謝をする場面だ。
もっとも、ジキルは死んでいるわけではなくてフリーズしているだけだ。
しかし……妙に身体が透けている。
「わ、わ! 僕の身体が!!」
透明になっていく。
しばらくすると、ジキルとニコルは消えてしまった。
急に心細くなるとともに、当然の答えに私は行き着いた。
「やっと充電がきれた!!」
急いでスマホを取り出すと画面は真っ黒になっている。
3時間ほど太陽に当ててから、起動してみた。
まずは、速攻でクリーナーをアンインストール。
次にニコルとジキルを呼び出した。
「お、お、お嬢様。成功したのですね。わたくし、途中で身体が動かなくなったときは、どのように守ればよいのかと……」
ジキルは眼鏡を外してハンカチで溢れる涙を拭っている。
大げさ……にもなるよね。
私だって怖かったし。
ニコルは自分が消えるのは初めてだったので、まだ震えていた。
「大丈夫」と何回も声をかけて落ち着かせる。
「さて、今日は太陽の当たるレストランでご飯を食べましょう!! まだ少ししか充電されてないし、休もう休もう」
私の腰の袋には、100G以上お金が入っているから豪華なものが食べられる!
私たちは久しぶりに穏やかな気持ちで街へと向けて歩いた。
クリーナーが動いているときはろくに空も見なかったし、太陽を恨んでいたけれど……。
雲一つない空を見ていると、気持ちがいい!
やっぱり太陽ってサイコー!!
「お嬢様!! スマホを落としてください!」
言われるままにスマホを地面に落とすも、吸引力は変わらない。
どこかの掃除機みたいだ。
ここからの逆転なんて……。
「特技発動『かばう』!」
一瞬にして、私の位置が移動し外壁の横に立つ。
ジキルが全力で私とは逆方向に走っていたらしい。
さらに引っ張られる私をニコルが掴んでいてくれる。
やがてスマホから離れたジキルも加勢する。
約10mぐらい離れた所で、スマホからの吸い込みはなくなった。
「無事で良かったです」
ニコルが顔を赤くし、汗をかきつつ言う。
「本当に間に合いまして、わたくしも嬉しいです。しかしながら、あのスマホをどうするか……わたくしたちアプリでは操作できません。かと言ってお嬢様が近づいてしまうと、吸い込まれる。わたくしの服をご覧になってください。服がこうもなってしまうということは、威力は相当なものです」
ジキルは少し破れたシャツを整えている。
ということは、私の服が破れてたんだ……。
「酷いアプリね。スマホの中をきれいするんじゃなくて、外の人間を吸い込もうとするなんて。ウィルスが入っているってレベルじゃないわよ、それ」
「一瞬でお嬢様がアプリを終了できれば、可能性はありますが……わたくしとしましては、そんな確率に頼ることはしたくありません」
「僕も、できれば他の方法を考えたいです」
ジキルに天から明るい輪が下りてくる。
回復魔法だ。
「ありがとうございます」と丁寧に、しかし堅苦しくお辞儀をしている。
「さて……どうしようかな。踏まれて壊れても困るから2人のどちらかにはスマホについていてもらいたいけど、肝心の私が近寄れないんじゃどうしようもないわね。んー、例えばさ、マッチョを10人ぐらい連れてきて、私を引っ張ってもらえばいいんじゃない?」
吸引という点に関しては、これでクリアできる……のか?
「でも、ナオさんを吸い込むってことはスマホから近づいてくるかもしれないんですよね。どこかに縛り付けておきますか?」
3人で周囲を見回してみるも、木の一本さえ見当たらない。
「ニコル様、仮に縛るものがあったとしても、その方法も危険かと。お嬢様への身体の負担も大きいものですが、スマホ自体が壊れてしまうかもしれません」
吸引力を無理やり押さえつけてしまうのなら、可能性としてはあり得るかも。
その時、私の頭に少し前の出来事が思い浮かんだ。
そう、あれはジキルをインストールする直前――
「アイディアが1つ。試してみましょう。ジキルはスマホを守って。ニコルは今から言うものを買ってきてちょうだい。ほとんどお金残っていないけど、大したものではないわ」
妙な威圧感のある執事の近くには誰も近寄らないようで「何アレ?」「格好いいけど、少し変じゃない?」などと言われながらも、スマホの前で仁王立ちしていた。
やがて、ニコルが戻ってくる。
重そうだったけれど、これで私が考えている作戦がとれる。
ニコルが地面に広げたもの……それは『布』だ!
色や質は気にせずに、とにかく分厚いもの。
中には布というよりも絨毯に近いものも混じっている。
「さあ! それをスマホにかぶせて!!」
スマホの充電は太陽光でしかできない。
それなら、ずっと太陽が当たらないようにすればいい!!
あのアプリの威力なら、バッテリーの減り具合も、すごいことになっていると思う。
「ここからは持久戦ね。ジキル、本当に悪いんだけど、スマホの見張り頼んでいいかな? その間にニコルとスライムを倒して簡単なキャンプ道具と食事を買ってくるわ」
「承知いたしました。戦略としてはお嬢様のおっしゃることが最適でございます。わたくしは恥ずかしながら長期戦には不向き。対してニコル様は安定しております。ここはフリーズしても私が守り抜きますので、いってらっしゃいませ」
確かにこの執事なら固まっていても誰も近づかないな。
逆に不気味がって避けるかもしれない。
それからは長く苦しい戦い? が続いた。
以前の戦闘で少し慣れてきたので、スライムも1日10匹ぐらい倒せるようになっている。
私がなるべく消化液を避けて、回復は少なく。
1日30の経験値。30Gを手に入れた。
それが1週間ほど続いた。
ちなみに1日目に「街の人に終了してもらえばいいじゃん!」という当たり前の考えを思いついたけど、どうやら街の人にはスマホが見えていないようだった。
さすが別世界のアイテム。
「経験値210も貯めたのに、まだレベルアップしない」と愚痴を言っている私を、ニコルが困ったようにな顔で励ましてくれる。
優しさが染み渡る。
キャンプ道具を買って、外でのご飯。そしてテントでの就寝。
小学校の頃を思い出すなあ。
と、気楽に考えていた。
ジキルはただ立っていたせいもあって、幸いにもフリーズはしなかった。
7日目までは……。
食事の時間だけ動いていたのが問題だったのか、私たちが帰ってみると、白目になって、けれど地面にしっかりと足をつけているジキルがいた。
か、かっこいい!!
少年漫画でこんなシーン見たことがあるよ。
皆を守り抜いたヒーロー。
1人が近づくと息をしていないことに気づいて「し、死んでる」って言って……泣きながら感謝をする場面だ。
もっとも、ジキルは死んでいるわけではなくてフリーズしているだけだ。
しかし……妙に身体が透けている。
「わ、わ! 僕の身体が!!」
透明になっていく。
しばらくすると、ジキルとニコルは消えてしまった。
急に心細くなるとともに、当然の答えに私は行き着いた。
「やっと充電がきれた!!」
急いでスマホを取り出すと画面は真っ黒になっている。
3時間ほど太陽に当ててから、起動してみた。
まずは、速攻でクリーナーをアンインストール。
次にニコルとジキルを呼び出した。
「お、お、お嬢様。成功したのですね。わたくし、途中で身体が動かなくなったときは、どのように守ればよいのかと……」
ジキルは眼鏡を外してハンカチで溢れる涙を拭っている。
大げさ……にもなるよね。
私だって怖かったし。
ニコルは自分が消えるのは初めてだったので、まだ震えていた。
「大丈夫」と何回も声をかけて落ち着かせる。
「さて、今日は太陽の当たるレストランでご飯を食べましょう!! まだ少ししか充電されてないし、休もう休もう」
私の腰の袋には、100G以上お金が入っているから豪華なものが食べられる!
私たちは久しぶりに穏やかな気持ちで街へと向けて歩いた。
クリーナーが動いているときはろくに空も見なかったし、太陽を恨んでいたけれど……。
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やっぱり太陽ってサイコー!!
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