異世界最強の武器は私のスマホでした~勇者ダウンロード中~

亜久里遊馬

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第8話:機種変、機種変!

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 クリーナーは一時諦めて、地道にスライム狩りにをしていたある日、私のスマホが突然鳴った。

『レベルアップ! レベルが10になりました!!』

 ん、んんー??

 私レベル1だったはずだよね?
 なんで、こんなに一気にレベルが上ってるの?

 不思議に思って、スマホを開いてみると、『緊急、神からのお知らせ』という文字が。

「どうしたんです?」

「何かありましたか、お嬢様?」

 2人の声が聞こえるけど、私はスマホ画面に集中していた。

『10日前よりレベルが上がらないバグが発生していました。皆様には大変ご迷惑をおかけし、申し訳ありません。お詫びとして、100Gを配布させていただきます』

 表示が消えた瞬間、パサリと音をたてて、草むらに銀色の硬貨が落ちる。私たちは換金したことはないけど、銅貨100枚分と同等の銀貨だ。

 でも今は100Gよりも……。

「レベルがあがったーー!!」

 草原に、私の心からの声が響き渡る。
 最初は不思議そうに思っていた彼らも、私の声で状況を把握した。

「とうとう2レベルですね! 機種変できるかなあ」

「最初のレベルアップですから、それは上がるように設定されているでしょう。そうでなくては、皆様のモチベーションが下がってしまいます」

 遠くに見える街がいつもよりきれいに見える。
 ニコルやジキルもいつもよりカッコよく見える。
 それもこれも、レベルアップのため。
 しかも一気に10レベル!?

「信じられないと思うけど、10レベルになったのよ、私。なんかスマホがバグってたみたいで」

 10という数字に2人の目が点になる。

「そ、それは……つまり、今までの経験値が一度に入ってきたと……。10レベルとなるとどれぐらい強くなられるのでしょう! 私は喜び半分、悲しさ半分でございます。もうわたくしがお役にたてる場面がないかもしれません」

「そんなことはないわ! 機種変とニコルの機能制限解除を一気にやる! そうしたら、機種の速度に依存してるジキルもフリーズせずに戦えるようになるはず」

 私たちは3人とも興奮で震えていた。
 とても街へつくまで待ってられない。

「とにかく、街道まで出て早速試してみましょう!」

 自然と足早になっていく。
 初めての機種変だ。
 しかもニコルは成長して……もしかしてイケメンになるかもしれないし、ジキルは安定感バツグンの執事……戦士になる!

 草原より少し高くなっている街道へはすぐに着いた。道は広く、シートをひいて商品を売っている人もいた。
 私たちは、その証人から少し離れた場所に座る。
 石畳の冷たさが、心地いい。

「じゃあ……まずは、機種変。たぶんこの『神的チュートリアル』の中にやり方載ってるでしょ?」

 チュートリアルなのだから、レベルアップまで説明してくれるのは当たり前。
 まさか、レベル10になって初めて見ることになるとは思わなかったけど。

 チュートリアルを起動すると、『マイメニュー』というボタンが右端に出来ていた。
 普通チュートリアルにマイメニューくっつけたりしないよね。
 変なとこで手を抜いた作りだなあ。

 気を取り直して、マイメニューを押すと、さらにいくつかの選択肢が出てくる。
 その中には『機種変』もあった。

「つ、ついに機種変ができるんですね。僕はそれほど強くはなれないですけど、フリーズしないジキルさんは頼もしいです」

「そう言っていただけると光栄ですね。私の剣技、心ゆくまでお店いたします」

 剣じゃなくてソーサーだけどね。

 機種変を選択すると、いくつかの機種の画像が並んだ。
 「おお」と思わず声が出る。
 意外にもバリエーション豊富だ。

「ええと……レベル10までなら……ここまで選べるんだ。けっこういいヤツあるよ!」

 私の今のスマホはZperia3、画面にはZperia6が映っている。
 レベル100以上になるとZperia100やiphen100というわけのわからないものもダウンロードできるみたいだけど……今の私にはZperia6で十分。
 私の世界と同じだったら、2倍ぐらい性能が違うはずだ。
 容量は128GB、今持っているやつの4倍だ。

 画面下には、変えたい機種名を選んで機種変と叫べ、と書かれている。
 何故叫ぶ必要があるのか……確かに変身みたいにかっこいいかもしれないけど、スマホだよ。

 けれど、そう書かれているのなら仕方がない。
 私はZperia6を選択すると、スマホを天にかかげ、『機種変』と高らかに叫んだ。

 横のおじさんが驚いてこっちを見ている。

 ただ、驚くのはここからだった。
 ぷしゅんと音をたてて、機種はあっけなく変わった。 10レベルだから演出もしょぼいのかもしれない。
 まあ、手触りは良いし、これでジキルのフリーズも……と彼を見た時だった。

 何故か、ジキルが光り輝いていた。
 私のスマホじゃなくて、彼が輝いている。

「お、お嬢様これはどういうことでしょうか!?」

「私にもわからないよ! 機種変しただけなのに何で光ってるの!?」

 目がくらむほどの光があたりに満ちて……やがて収縮していく。
 そこにいたのは……。
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