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第1話:ゾンビが求めるもの
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そこにはドッシリと構えた洋館。その前にはドッシリと構えた僕――坂口健四郎。とその仲間たち。
威圧感では、こちらの方が数段上だ。
「じゃあ、行くぞ」
僕たち5人マッチョの中でリーダー担当である男、アガサが、鉄の柵を針金のように曲げた。
「こんな大きさじゃ入れないよ」
文句をいうのは、ミキタケ。今年、小学6年生だ。早くにマッチョ菌に感染したため、他メンバーより大きい。顔はそのままなので、物凄い小顔だ。
ミキタケは曲がった柵を根本から取り外して、近くに投げた。ブーメランのように飛んでいく。
残りのメンバーは女性と老人。そして僕は元々は虚弱な男子高校生。こう言うと何とも不安だけど、今の僕たちは……。
「そこの洋館の扉壊していいのかしら?」
物騒な事を言っているのはナコ。女性としてはマッチョになりたくないよなあ、と最初は思っていた。しかし、彼女こそマッチョの中のマッチョだ。
「こりゃ、物は大切にするもんじゃぞ。ここだって、ゾンビを掃討した後に使えるかもしれん」
老人はノリスケ。腰が曲がったマッチョは初めて見た。もう少しで曲がった背骨を筋力で無理やり真っ直ぐにすることができるらしい。筋肉は万能である。
「い、いや……さすがにそれは無いですよ」
見てくれは立派な洋館だけど、ここからゾンビが生まれたんだ。少なくとも日本では。
「じゃあ、爺ちゃんの言うようにドアを開けようかな」
ミキタケはお爺ちゃん子なので、ノリスケの言うことはよく聞く。彼は、ドアノブに手をかけて……引いた。
――バキッ!!
大きな音がしてドアノブが取れた。穴から洋館内が見える。仕方なく、ナコの意見を採用して扉を壊すことにした。
「ふん!!」
僕が蹴りを入れると、両扉が吹っ飛んだ。僕たちの攻撃方法は表面積によって破壊力が決まる。筋力は絶大なので点より面の攻撃が強い。
つまり、体当たり>蹴り>突きというわけだ。
館内は静かなものだった。僕たちの息遣いが辺りに響き渡る。肺活量も以前とは比べ物にならないのだから。
「うむ。事前に渡された館内マップでは、左側が食堂等の共用設備、右側は宿舎。2階は……とりあえず後回しににしてもいいな。そして肝心の地下施設……」
「じゃあ、グループに別れて右と左回りましょうか? 後で地下の入口前集合で」
「いいだろう。では宿舎は俺とナコが受け持つ。共用設備はケンシロウをリーダーに探索してくれ」
『了解!!』
皆が頷く。
「みんな……死ぬなよ」
「あら、そんな事言っちゃう?」
「ハッハッハ、軽いジョークだ。扉も壊してしまったし、多少部屋を破壊しても構わん。さっさとすませるぞ」
僕たちは左の扉を開ける。今度は親指と人差指でつまんだので、ドアの破壊は避けられた。
「……ん? 廊下の奥に誰かいるよ」
「ほほう、生き残り……とは考えにくいの」
「とりあえず僕が行きます」
実はこんな身体になったというのにホラー映画は未だに怖い。あまり先頭にはなりたくないけど、老人と子どもに任せるわけにもいかない。
ペチャペチャ。音がする。
ゆっくりと廊下を進み、右奥を見ると……いた。身体を伏せてぺちゃぺちゃと何かを貪っている。その何かは、見る必要もない。
――そう、プロテインだ。
ゾンビたちに知能があるとはわからないが、マッチョ対策としてプロテインを盗んでいくようになった。このゾンビもそうだ。
「う、があああああ!!」
「うわーーー!!!」
つられて叫んでしまった。そのスキをついてゾンビが頭を低くして僕に飛びかかってきた。
「しまった……」
なんて。
ゾンビの牙が折れ、慌てている。僕の腕は丸太三本分の太さ、硬さはチタン合金以上。骨の牙で傷つけられるはずもない。
僕たちがこの洋館へと送られた要因の一つだ。ゾンビに噛まれることは絶対にない。さらに言うと、巨大な規格外ゾンビに噛まれたとしても、マッチョウィルスがゾンビの感染を許さない。
威圧感では、こちらの方が数段上だ。
「じゃあ、行くぞ」
僕たち5人マッチョの中でリーダー担当である男、アガサが、鉄の柵を針金のように曲げた。
「こんな大きさじゃ入れないよ」
文句をいうのは、ミキタケ。今年、小学6年生だ。早くにマッチョ菌に感染したため、他メンバーより大きい。顔はそのままなので、物凄い小顔だ。
ミキタケは曲がった柵を根本から取り外して、近くに投げた。ブーメランのように飛んでいく。
残りのメンバーは女性と老人。そして僕は元々は虚弱な男子高校生。こう言うと何とも不安だけど、今の僕たちは……。
「そこの洋館の扉壊していいのかしら?」
物騒な事を言っているのはナコ。女性としてはマッチョになりたくないよなあ、と最初は思っていた。しかし、彼女こそマッチョの中のマッチョだ。
「こりゃ、物は大切にするもんじゃぞ。ここだって、ゾンビを掃討した後に使えるかもしれん」
老人はノリスケ。腰が曲がったマッチョは初めて見た。もう少しで曲がった背骨を筋力で無理やり真っ直ぐにすることができるらしい。筋肉は万能である。
「い、いや……さすがにそれは無いですよ」
見てくれは立派な洋館だけど、ここからゾンビが生まれたんだ。少なくとも日本では。
「じゃあ、爺ちゃんの言うようにドアを開けようかな」
ミキタケはお爺ちゃん子なので、ノリスケの言うことはよく聞く。彼は、ドアノブに手をかけて……引いた。
――バキッ!!
大きな音がしてドアノブが取れた。穴から洋館内が見える。仕方なく、ナコの意見を採用して扉を壊すことにした。
「ふん!!」
僕が蹴りを入れると、両扉が吹っ飛んだ。僕たちの攻撃方法は表面積によって破壊力が決まる。筋力は絶大なので点より面の攻撃が強い。
つまり、体当たり>蹴り>突きというわけだ。
館内は静かなものだった。僕たちの息遣いが辺りに響き渡る。肺活量も以前とは比べ物にならないのだから。
「うむ。事前に渡された館内マップでは、左側が食堂等の共用設備、右側は宿舎。2階は……とりあえず後回しににしてもいいな。そして肝心の地下施設……」
「じゃあ、グループに別れて右と左回りましょうか? 後で地下の入口前集合で」
「いいだろう。では宿舎は俺とナコが受け持つ。共用設備はケンシロウをリーダーに探索してくれ」
『了解!!』
皆が頷く。
「みんな……死ぬなよ」
「あら、そんな事言っちゃう?」
「ハッハッハ、軽いジョークだ。扉も壊してしまったし、多少部屋を破壊しても構わん。さっさとすませるぞ」
僕たちは左の扉を開ける。今度は親指と人差指でつまんだので、ドアの破壊は避けられた。
「……ん? 廊下の奥に誰かいるよ」
「ほほう、生き残り……とは考えにくいの」
「とりあえず僕が行きます」
実はこんな身体になったというのにホラー映画は未だに怖い。あまり先頭にはなりたくないけど、老人と子どもに任せるわけにもいかない。
ペチャペチャ。音がする。
ゆっくりと廊下を進み、右奥を見ると……いた。身体を伏せてぺちゃぺちゃと何かを貪っている。その何かは、見る必要もない。
――そう、プロテインだ。
ゾンビたちに知能があるとはわからないが、マッチョ対策としてプロテインを盗んでいくようになった。このゾンビもそうだ。
「う、があああああ!!」
「うわーーー!!!」
つられて叫んでしまった。そのスキをついてゾンビが頭を低くして僕に飛びかかってきた。
「しまった……」
なんて。
ゾンビの牙が折れ、慌てている。僕の腕は丸太三本分の太さ、硬さはチタン合金以上。骨の牙で傷つけられるはずもない。
僕たちがこの洋館へと送られた要因の一つだ。ゾンビに噛まれることは絶対にない。さらに言うと、巨大な規格外ゾンビに噛まれたとしても、マッチョウィルスがゾンビの感染を許さない。
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