マッチョウィルス vs ゾンビウィルス

亜久里遊馬

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第2話:恐怖の日記

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 マッチョの全てがゾンビに勝てるか? というとそんなことはない。マッチョウィルスは、感染するたびに多少力を落としてしまう。僕たちのように片手でゾンビをひねり倒したりはできない。

 それでも、マッチョ軍隊を作ろうとする政府の試みはあった。が……そもそも人工的にマッチョウィルスを感染させようとすると、その手段に大きな問題があった。


①マッチョ菌保持者が、普通の人間を抱きしめる
 この時、大体の人間は複雑骨折して病院に運ばれていく。

②プロテインを口移しで飲ませる
 とても嫌がる人間が続出する。

③最後に頬を手で張り気合を入れる
 ①②を何とかクリアしてきた人間も、ここで顔面が潰れて外科へと連れて行かれる。もちろん、マッチョになるためには①からやり直さねばならない。

 というわけで、結局、初期型マッチョの僕たちが基本戦力となっている。

 部屋を分担して探索していると、ノリスケの声が上がった。

「日記を見つけたぞい!」

 ミキタケと僕は、用務員室のような場所へとかけつける。

「日記か。貴重な資料ですね」

「いるの? それ。僕も日記書かされるけど、鋼のえんぴつを何回もおるだけで全然面白くなかったよ」

 日記はな、と説明するノリスケをおいて、僕は実際のものを手にとって見る。

 どうやら、ここにいた人間が書いたもののようだ。


1月14日
 犬たちが怯えている。動物の勘というものはよく当たるという。少し気をつけておきたい。

1月24日
 鳥が落ちたようだ、カラス。本来ならばカラスの死体を見ることはない。不吉だ。

2月5日
 夢を見る。自分が何かに絡みつかれてしまう夢だ。決してそこからは抜け出せない。

2月18日
 俺はいったいどうなってしまうのだろう。早く……早く……何とかしなければ。

3月1日
 だめだ。耐えられない。俺は逃げる……。

3月3日
 プロ……テ……イ……ン。すて……な……い……と……。


 ああ、これはさっき僕が倒したゾンビの日記か。最後の日付も今日になってる。ここまで知能があると僕もやっぱり躊躇しちゃいそうなんだけど、放っておくと人類滅びちゃうからな。

 僕は日記の前で手を合わせてから、ゴミ箱に捨てた。

 いつの間にか、ノリスケはニンニク卵という精力の塊のような卵を食べている。ミキタケは日記の素晴らしさに感動したのか、そこら辺のロッカーを殴りながら探している。

 次、行くか。

 途中で数十体の大量ゾンビが出てきたけど、ニンニク卵を食べたノリスケの回転ライアットで全滅した。

 さらに、先導していくノリスケは、ある場所で止まった。

「おう、ここは良い匂いがするのお」

 マッチョセンスはあらゆる匂いを嗅ぎ分ける。ただ、ノリスケの言う良い匂いというのはあまり期待できない。

「ふふふ、あったあった。隠してあるわ。大量に酒が。日本酒の大吟醸がこんなにも。これだけでも来たかいがあったわ」

 ああ、やはりBARか。
 
 ノリスケがどこからかドラム缶のように大きな容器を持ってきて、酒をすべて入れる。

「そんなに混ぜたら、味わかんないんじゃないですか?」

「しょうがないのじゃ。お前も知っているじゃろ。マッチョ菌のおかげで物凄い勢いでアルコールを分解しちまうもんだから、ちょっとの量じゃ酔えんのじゃ」

 酒を飲み干すノリスケと、つまみを袋ごとのみこむキミタケ。
 もういいか。というか、これ以上探索できないな、こりゃ。

 どうせ、地下に全部あるんだから、大丈夫だろう。

 僕は渾身の力で2人を突き飛ばす。壁をいくつも突き抜け、彼らは無理やり玄関前へと移動した。壁……は、まあ仕方がない。
 
 これは僕の持ち技と言ってもいい。マッチョウィルスをコントロールすることで、両手に力を集めて解放する。戦車の大砲よりも強力なもので、そうそう使えないんだけど、こんな時には便利だ。

 こんな技を使うことになると知っていたら、過去の自分はどう思ってたのかな。絶対に信じないよな。
 あの時の僕は、人一人だって動かせなかったんだから。
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