魔王見習いは、最強魔王を超えるか

亜久里遊馬

文字の大きさ
8 / 17
1章:俺は魔王見習いのようです

第7話:魔王見習い、公認となる!

しおりを挟む
「あ、着きましたよ! ここです!!」

 テントの列がなくなり、開けた場所に出た。
 ここが魔王城の建設場所なのだろう。
 多くの人間が働いている。

 1階部分の骨組みは、ほぼ完成しているようだ。
 地下は……これから作るのかな?
 魔王城には必須だと思う。

「魔王様ー、リュウジさんが来ましたー!!」

「わかった。しばし、待ってくれ」

 魔王はかなり集中しているらしく、こちらも振り向かない。
 まるで指揮者のように指を動かしている。

「うむ。これで問題なかろう」

「我、土の魔に命ず。解放せよ!」

 激励とも取れる言葉は、建築場所の一部へと向いていた。
 骨組みに沿うようにして、土の中からレンガの壁が盛り上がってくる。
 ただの壁ではなくレンガが積み重なったものだ。

 それはやがて上部も多い、完全な箱の形になった。
 魔王が息を吐き出す。かなり消耗している。

 これなら時々しかできない理由もわかった。
 ただの土の壁ではなくレンガの生成と組み上げを同時に行ったのだ。
 それも一瞬で。
 あの大きさを見るに……人間たちが作るのなら、数日はかかるだろう。

 変態だと思ったけど、やっぱ魔王だな。
 すげえや。
 と、思ったのは一瞬。

「おお、来てくれたのかリュウジ。どうだ、絶景であろう。俺はここを人間とモンスターが共存できるテーマパークにしたいと思っておるのだ」

 て、てーまぱーく!?
 
 おそらく、俺の覚えている言葉に変換されたのだろうが、意味は同じ。
 何言ってんだ、この魔王は。

「共存は素晴らしいと思うんですが、他に方法はないんですか?」

「ある。共存だけを考えるのならば、他にも施策は幾つも存在しておるぞ」

「じゃあ、テーマパークは止めて……」

「金がないのだっ!! この城の建築もドワーフから借金をしておる。金を返す手段を考えねばならん。かと言って人間を襲うのでは本末転倒だ。威厳などは捨てねばならん時だ」

 言いたいことはわかる。
 けど、さすがにど真ん中ストレートで「金が無い」と魔王に言われると、虚しさを感じざるを得ない……。

 ただ……金欠を解消する意味で言えば、テーマパーク的なものはアリかもしれない。
 なぜかと言えば、魔王の元に集まるモンスターたちの能力で、コストをかけずにアトラクションを作ることも可能だからだ。

「……具体的には、どんなものを考えているんですか?」

「具体的……そうであるな。例えば魔王城の食堂の一般開放は一番に行おうと思っておる。モンスターの食べ物は、人間にも興味深かろう?」

 食堂を先に?
 俺の常識に照らし合わせば、それはサブメニューだ。
 ラーメンと餃子のセットだったら、餃子の方だ。
 餃子の好きな人がいたら申し訳ないが。

 メインメニューだな。
 足りないのは。
 もちろん魔王城見学だけで、十分に心踊ると思う。
 でも飽きるのも早い。
 刺激的なメニューは必要なはず。

 なんだろうな、俺。
 異世界に来て、なんでこんなことしてるんだろう?

「うむ……食堂はお前にとってはあまり重要ではないと見えるな」

「いえ、食堂は必要ですね。例えば……あの辺りに」

 俺は入り口らしき場所の横を指差す。

「あそこなら、門からすぐに入れますし。ちょっと中の様子も見えます。もしかしたら、そのまま他の場所にも行ってくれるかもしれません」

「む。確かにその通りであるな。実は人間の設計者に任せたところ、同じような配置にしていた。リュウジ、お前はそれを瞬時にやってのけたというのか?」

「いえ、そこまでのものじゃないです。勘ですかね。たぶんそこが良いだろうな、という想像です」

 これは半分本当、半分嘘。
 実際にテーマパークには入口近くに軽食売っているところは多いと思う。
 つまり、ただそれを知っているってだけのことで。

「……さて……どうするか」


 ランは全然話に付いてきていないどころか、座って建設を眺めている。目をこすりながら眠そうに。

「うむ! 決めたぞ!!」

「な、何をですか!!」

「お前を『魔王見習い』に任命する。リュウジ……お前には資質がある。俺の後に付き従い、学べ。そして、いずれ……」

 ちょ、ちょっと待って!
 なんか異常に過大評価してるし、決断が早すぎる!

 ランがあまりのことに飛び跳ねている。
 あの足で飛び跳ねるとは……さすがモンスターっ娘。

 というか、俺も飛び跳ねたいんだが。
 『魔王見習い』なんて響きだけでも恐ろしい。
 この魔王に付き従う?
 少しずつ学ぶのならば可能かもしれない。
 けど……絶対にそんな事にならない気がする!

 そんな形で魔王になるのはちょっと遠慮したいです、はい。

「待ってください! 俺には『魔王見習い』という役目は重すぎます!」

 俺は必死である。
 建設現場で働いて、スキルを少し覚えるだけで良いんだ。

 そりゃあ、最初は魔王軍を作ろうと思ったさ。
 でも、勇者と魔王の現状を知ったら、とても自分がそれになろうなんて考えられない!

「よもや……俺の命令を拒否しようとするつもりではあるまいな」

 あ、これはもう駄目なヤツだ。
 共存とか言ってるけど、断ったらヤバイという気配が伝わってくる。

 俺は、諦めて首を縦に振った。

「うむ。お前には各所を見て、助言をして欲しいと考えている。さらに魔法を覚えるため、教師をつけよう。お前ならばできるはずだ」

 く、くっそおおお!!
 もう断れないじゃん!
 しかも魔法の勉強とかいうおまけ付きときた!!

 ……もう、こうなったらやってやろうじゃないか!!

 俺のスキルを使い、俺の世界の知識を使い、この世界で無双してやる!!
 
 今までの勇者と魔王の歴史を塗り替えてやる!!

 こうして俺の『魔王見習い』生活は、半ば強引に始まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています

きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

追放された悪役令嬢、農業チートと“もふもふ”で国を救い、いつの間にか騎士団長と宰相に溺愛されていました

黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢のエリナは、婚約者である第一王子から「とんでもない悪役令嬢だ!」と罵られ、婚約破棄されてしまう。しかも、見知らぬ辺境の地に追放されることに。 絶望の淵に立たされたエリナだったが、彼女には誰にも知られていない秘密のスキルがあった。それは、植物を育て、その成長を何倍にも加速させる規格外の「農業チート」! 畑を耕し、作物を育て始めたエリナの周りには、なぜか不思議な生き物たちが集まってきて……。もふもふな魔物たちに囲まれ、マイペースに農業に勤しむエリナ。 はじめは彼女を蔑んでいた辺境の人々も、彼女が作る美味しくて不思議な作物に魅了されていく。そして、彼女を追放したはずの元婚約者や、彼女の力を狙う者たちも現れて……。 これは、追放された悪役令嬢が、農業の力と少しのもふもふに助けられ、世界の常識をひっくり返していく、痛快でハートフルな成り上がりストーリー!

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

処理中です...