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1章:俺は魔王見習いのようです
第15話:チートスキルの恐ろしさ
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「スキル発動、『こんにゃく』!」
危うい所で、俺は雰囲気に流される事を避けられた。
こんにゃくで彼女の身体全体を覆った。
『こんにゃく』の触感の効果か、キラクは身体をくねくねと動かしたかと思うと、赤くなってベッドに倒れ込んでしまった。
ひとまずは、なんとかなったな……。
意外と『こんにゃく』は使えるのか?
もう一度『ハッピー』の解除を試みる。
が、やはり駄目だった。
せめて鎧姿で眠っていると見えるように、頭の上から鎧をかぶせる。
こんにゃくで滑りがよくなっていたのか、わりと簡単に鎧を着せることができた。
さらに毛布で偽装する。
これで一応、つい変なものを食べてしまって、俺の部屋で寝たと言い訳ができる。
近づいてみると、「ふぉー! ふぉー!」と奇妙な寝息をたてているのがわかる。
「はー、良かった」
と力を抜いた時、彼女の最後の反撃があった!
腕を俺の身体に回し、羽交い締めにしてくる。
抱擁ではなく、相撲のさば折りだ。
息が……できな……い。
俺はかすれる声で『こんにゃく』を呼び出した。
彼女の口の中に。
なんとか腕が離れ、もぐもぐとこんにゃくを食べる音が聞こえる。
美味かろう! 日本のこんにゃくは!
俺はしばらくキラクを眺めていたが、近づいたら死にかけるという状況に我慢できなくなってラジャを呼んだ。
仕事中、申し訳ないと頭を下げながら。
「リュウジ君、何をどうしたら勇者がこんな事になるの?」
「い、いやー。俺にもまったく見当がつかないんです。あ、でもさっき変なキノコを食べていたような……」
「なるほどね。毒キノコに当たったってわけ。勇者なのに情けないなあ。じゃあ、私が連れて行くね」
「ちょっと待って下さい!! 今近づくのはとても危険で、下手すると首を締められるかも……。なので、ラジャさんには勇者の着替えを準備してもらって……あと、食堂の隅で寝るんで毛布貸してもらえます?」
木製のシングルベッドは、キラクの鎧の重さで悲鳴を上げていた。
朝までもつだろうか?
「食堂は寒いわよ。毛布はもってきてあげるから、せめてこの部屋で寝たらどうかしら?」
以前俺が部屋と見間違えたほどのテントだ。床には一応薄い絨毯が敷かれている。対して、食堂の床は土である。
土の匂いで起きる朝、というのも言葉としては悪くない。
けれど、俺の森遭難の思い出がフラッシュバックしてくる。
「で、では……証人になってもらえますか? 俺がここで寝るとなると色々とマズい……というか魔王様に叱られてしまうので。もし雷が落ちそうな時は、助けてください。俺が、紳士で潔白であったと」
雷、というのは比喩じゃない。
魔王ならば、雷雲を呼び寄せ、俺に目掛けて雷魔法を撃ってくる可能性もある。
『魔王見習い』ならばこれぐらい、なんともあるまい、と。
俺は、冤罪の恐怖に部屋の隅で震えている男だし、おそらく魔法耐性なんて無い。
だが、それを言った所で認めてくれるか疑わしい。
「わかったわ」
ラジャさんはそう言って、すべて準備してくれた
勇者の着替えはやはりメイド服だった。
「ほ、本当に助かりました」
礼を言うと、ラジャさんは長い鱗の付いた足を振りながら挨拶をし、自分のテントへと帰っていった。
「食事といい、お世話になってるよな。今度なにかお礼をしなきゃ」
俺は勇者のいるベッドの対角線に寝転ぶと毛布を被った。
できれば……無事明日を迎えられますように……。
色々と動き回っていた俺は、固い絨毯の上でもすぐに眠ってしまった。
----------
「……殿、……殿!」
どこかで聞いた声だな。ごく最近。
『殿』って……。
目をこすりながら、顔を立ち上がると……そこにはナビがいた。
危うい所で、俺は雰囲気に流される事を避けられた。
こんにゃくで彼女の身体全体を覆った。
『こんにゃく』の触感の効果か、キラクは身体をくねくねと動かしたかと思うと、赤くなってベッドに倒れ込んでしまった。
ひとまずは、なんとかなったな……。
意外と『こんにゃく』は使えるのか?
もう一度『ハッピー』の解除を試みる。
が、やはり駄目だった。
せめて鎧姿で眠っていると見えるように、頭の上から鎧をかぶせる。
こんにゃくで滑りがよくなっていたのか、わりと簡単に鎧を着せることができた。
さらに毛布で偽装する。
これで一応、つい変なものを食べてしまって、俺の部屋で寝たと言い訳ができる。
近づいてみると、「ふぉー! ふぉー!」と奇妙な寝息をたてているのがわかる。
「はー、良かった」
と力を抜いた時、彼女の最後の反撃があった!
腕を俺の身体に回し、羽交い締めにしてくる。
抱擁ではなく、相撲のさば折りだ。
息が……できな……い。
俺はかすれる声で『こんにゃく』を呼び出した。
彼女の口の中に。
なんとか腕が離れ、もぐもぐとこんにゃくを食べる音が聞こえる。
美味かろう! 日本のこんにゃくは!
俺はしばらくキラクを眺めていたが、近づいたら死にかけるという状況に我慢できなくなってラジャを呼んだ。
仕事中、申し訳ないと頭を下げながら。
「リュウジ君、何をどうしたら勇者がこんな事になるの?」
「い、いやー。俺にもまったく見当がつかないんです。あ、でもさっき変なキノコを食べていたような……」
「なるほどね。毒キノコに当たったってわけ。勇者なのに情けないなあ。じゃあ、私が連れて行くね」
「ちょっと待って下さい!! 今近づくのはとても危険で、下手すると首を締められるかも……。なので、ラジャさんには勇者の着替えを準備してもらって……あと、食堂の隅で寝るんで毛布貸してもらえます?」
木製のシングルベッドは、キラクの鎧の重さで悲鳴を上げていた。
朝までもつだろうか?
「食堂は寒いわよ。毛布はもってきてあげるから、せめてこの部屋で寝たらどうかしら?」
以前俺が部屋と見間違えたほどのテントだ。床には一応薄い絨毯が敷かれている。対して、食堂の床は土である。
土の匂いで起きる朝、というのも言葉としては悪くない。
けれど、俺の森遭難の思い出がフラッシュバックしてくる。
「で、では……証人になってもらえますか? 俺がここで寝るとなると色々とマズい……というか魔王様に叱られてしまうので。もし雷が落ちそうな時は、助けてください。俺が、紳士で潔白であったと」
雷、というのは比喩じゃない。
魔王ならば、雷雲を呼び寄せ、俺に目掛けて雷魔法を撃ってくる可能性もある。
『魔王見習い』ならばこれぐらい、なんともあるまい、と。
俺は、冤罪の恐怖に部屋の隅で震えている男だし、おそらく魔法耐性なんて無い。
だが、それを言った所で認めてくれるか疑わしい。
「わかったわ」
ラジャさんはそう言って、すべて準備してくれた
勇者の着替えはやはりメイド服だった。
「ほ、本当に助かりました」
礼を言うと、ラジャさんは長い鱗の付いた足を振りながら挨拶をし、自分のテントへと帰っていった。
「食事といい、お世話になってるよな。今度なにかお礼をしなきゃ」
俺は勇者のいるベッドの対角線に寝転ぶと毛布を被った。
できれば……無事明日を迎えられますように……。
色々と動き回っていた俺は、固い絨毯の上でもすぐに眠ってしまった。
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「……殿、……殿!」
どこかで聞いた声だな。ごく最近。
『殿』って……。
目をこすりながら、顔を立ち上がると……そこにはナビがいた。
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