魔王見習いは、最強魔王を超えるか

亜久里遊馬

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1章:俺は魔王見習いのようです

第13話:初めての部下(少女)ができる!

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 俺は肩を落として、自分の露店へと向かった。
 そちらは、スキルとは違い良い成果が出ていた。
 思った通り、折り紙は『当たり』だ。
 ほぼ完売のようで、残りのいくつかをナビが折っている。
 ん……ゴザの上に鶴ではない生き物の紙細工もおかれているな。

「おお、ご無事でしたか」

「もしかして……これ作ったの、君?」

「あ、わわ。申し訳ございません。勝手に作ったりしてしまって……」

 少女は手を地面につき、それは見事な土下座をした。
 や、そんな事をさせるつもりは……。
 周囲には、まだ人がいる。
 「えー」「子供に……」という声が聞こえてくる。

「いや、怒ってるわけじゃないよ。むしろ驚いてるんだ。よくオリジナルで作れたね」

「ありがとうざいま……いや、ありがたき幸せ」

 ごっこ遊びなのかな。
 武士語と普通の言葉が混ざっている。

 手を器用に動かしながら、けれど言葉はたどたどしく、ナビは説明してくれた。
 凄いな、教えておいてなんだけど、俺自身は鶴と兜しか折れないぜ。

「説明が長くなってしまいまいました。こちらが代金となります。どうかお収めください」

 彼女の手には銅貨が数十枚ある。
 俺が材料を買うのに使ったのは、銅貨数枚ほどだ。
 驚くべき商才。
 これで食っていけないかな。

「お、なかなかだね。じゃあ半分にしよう」

「そ、そんな事は! 拙者はお力になれただけで満足です……金なんて……」

「でもなあ。お礼をしないと気になっちゃうんだよ。俺を助けると思ってさ。お金以外のものでもいいよ」

 と言っても俺がもっているものはたかが知れているので、あとで魔王からもらうことにしよう。

「な、なんでも……」

「ああ、なんでも……うん、なんでもいいよ」

 なんでもいい、と答えるのには若干のためらいを感じる。
 これも俺の世界から持ってきてしまった悪い風習だ。たぶん。

 ナビはキョロキョロと辺りを見渡しながら、落ち着かない様子で言った。

「で、では……拙者をぜひお側に!」

 再び土下座に近い体勢になるのを、慌てて押しとどめる。

「そんなことならお安い御用……って、ええ!? なんで?」

「楽しかったんです。これを作るのも楽しかったですし、お店を任せたのも楽しかったです。リュウジさんが喜んでくれたのは私も嬉しかったです」

 もう武士の欠片も残っていないな。
 
 だが……俺の下で?
 それはもしかして……。

 俺は、スキル表を取り出してみた。
 部下値が1/50となっているのは、まあ子供が覚えてたのかな? ぐらいで済ませることが出来る。
 でも、この1の部分……光ってるんだよなあ。
 凄い意味ありげに。

「あ、えーと。ごほん! 俺の下で働きたいということは、『部下』ということになっちゃうんだけど」

「もとよりそのつもりです。拙者の希望を申しました。しかし‥…やはり……ご迷惑で……?」

 こんな俺についてくる?
 ランや子供たちみたいに、一時的に騙したような形じゃなくて?

 魔王の言っていた言葉を思い出す。
 「部下は勝手についてくる」……本当にそういう事があり得るのか……。
 俺は自分の事を『魔王見習い』とは伝えてないのに。

「え、えと。どうなされました、リュウジ殿?」

「ごめん。ちょっと嬉しくてね」

「では、ご奉公させていただけるのですね!」

「ああ、でも少し変わった仕事になるけどいいかな? 鶴を折るのとはかなり違うよ」

「拙者、この命にかけても!」

 いちいち大げさな子だなあ。
 でも……今の俺にとって、それは小さなことだ。
 俺には部下が1人できた。
 かけがえのない1人だ。

 「よし、明日は……学校あるんだよね、たぶん」

 あくまで見た目から推測すると、日本で言うところの中学1年生だ。
 義務教育中だ。
 遊んでいた子供たちはまだ幼かったけれど、ナビぐらいになれば学校に通っているかもしれない。
 
 「はい、通っております」

 「じゃあ、それが終わってからでいいよ」
 
 明日の集合場所を指定すると、4足歩行にでもなりそうなぐらい跳ねて帰っていった。

 ……誰かに、自慢しよ。
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