『双子石』とペンダント 年下だけど年上です2

あべ鈴峰

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助っ人登場

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エミリアは 何も知らずに、のうのうとお茶を飲んでいる殿下を見て内心がっかりした。
(クロエの手紙では、事件を次々と解決する優秀な人だと書いてあったのに……)
子供一人、ちゃんと管理もできない。大切だと言いながら、ほったらかし。
全く、これでは安心して任せられない。 

捜査は 私が主体になってするから、見張っていることは出来ない。
あの子は自分勝手に判断して、行動しがちだから 一人にするのは……。
だけど……。どうしようかと、殿下をチラリと見る。
おは様の看病すると言っていたから、外出することは少ないだろう。 
(まあ、大人だし。クロエの性格を知っているだろうから大丈夫だろう)
 少々心配ではあるが、それとなく匂わせとけば、殿下も 気にかけるてくれるだろう。


*****

ネイサンは エミリアの値踏みするような視線に耐えながら話し出すのを待っていた。
「殿下は クロエが隠れて何してるか知っていてますか?」
「いや、初耳だ」
エミリアにそう聞かれて 知らないと首を振る。言われてみれば、2、3度 部屋を訪ねたが留守だったことがあった。母親の看病をしてるんだろうと、気にもとめなかったが 何かしていたのだろう。 私の返事に エミリアの表情が変わる。
それを見て自分が期待に応えられなかったことを悟る。 
(まいったな……母親が病気だから、おとなしくすると思っていたんだが……)

「それで、何をしていたんだい?」
「それを調べて頂きたいんです」
「 ……… 」
にっこり笑っているエミリアを見て閉口する。
エミリアの気持ちも分かるし、クロエの性格を考えると心配だ。
(もちろん、やぶさかではないが……)
しかし、そう表立って 頼まれると、何か裏があるのではと 勘ぐってしまう。なにせ、クロエを煙に巻く人間だ。
侮れない。

笑顔を崩さないエミリアを見て内心ため息をつく。
(ヒントもくれないらしい)
とりあえず様子を見てみよう。
「分かった。気をつける。危険なことだったら止めるなら、安心してくれ」
約束すると頷く。 
すると、申し訳なさそうにエミリアが
はため息をつく。
「はぁ~、本当に私が面倒を見たいんですけど……」
「婚約したばかりで忙しいんだから気にすることはない」
クロエを 心配している姿は 自分を見ているようで 苦笑いする。
きっと無茶するなと、小さいころから口酸っぱく注意していたのだろう。
自分と同じ苦労をしてきたのかと思うとシンパシーを感じる。
カップを掴むとエミリアに向かって微笑む。

友達を心配する。そのことに幼馴染とは良いものだと羨ましくなる。
私には同世代の知り合いが 一人もいない。兄弟とも疎遠で、弟のクリストファーとは一歳の時に別れた切りだ。
ネイサンは寂しさを隠すようにカップを覗き込む。

生まれた時から魔力量が、人の何倍もあった。それだけなら良かったが、私は魔力を作るのを止めることが出来なかった。王家では稀に、そういう体質の子供が生まれるそうだ。
(もっと早く分かっていれば……)
過剰なまでに魔力を摂取すると酔っ払ったような酩酊状態になる。
その状態が続くと、魔力の池に落ちて溺れるみたいに息ができなくなるらしい。
 
そんな体質だったから、物心つく前から必然的に一人で過ごさなくてはいけなかった。周りにいるのは年寄や、病人ばかり だったから、読書ばかりで、稽古以外で体を動かした事などなかったな……。
(友達がいるというのは、どういう感じなんだろう)

 「ありがとうございます。殿下」
エミリアの 明るい声に顔をあげる。 
「クロエのことは任せてくれ」
自分のことの様に喜んでいる。
今度こそ期待に応えたい。エミリアの分もクロエを見守ろう。

*****

クロエは1人、組んだ腕を指でトントンと叩きながら、 部屋の中をうろうろしていた。
(本当に良かったんだろうか ……)

全てをエミリアに丸投げしたことにジレンマを抱えていた。
犯人を捕まえて 睡眠薬に何を使用したか突き止めるの力を入れるべきか、それとも エミリアに任せて母様の看病に専念した方がいいのか。
それが問題だ。
ピタリと立ち止まると顎に手をやる。
悩ましいところだが、やっぱり、母様
そっちのけで調査は出来ない。
今までの恩返しもかねて身の回りの世話をしよう。うん。 そうしよう。
ゴクリと頷く。

だけど一体、どうやって母様だけに睡眠薬をもったんだろう?
その方法を考えていると急にテレビのワンシーンが浮かぶ。
そうか!アレだ。と、指をぱちんとならしす。
本人だけが口にするものに、粉をかふりかけらるとかの アレだ。
(でもそれだと……)
クロエは引き出しから手帳を出すと 机に置いて、横線ばかりのページを腕を組んで 見つめる。
この中の誰かが犯人ということになる。偶然ではなく故意の犯行。
次々と皆の顔が思い出す。
誰一人犯人とは思えない。
だけど、そうでないと辻褄が合わない 。
(動機か……)
前世の記憶を頼りに考えれば、お金か怨恨。テレビや新聞でよく見たし、聞いた。世界は変わってもその辺は同じだろう。

金品が盗まれた形跡はない。となると、恨み。でも、母様は人当たりが良くて、人の恨みを買うようなタイプの人間ではない。他所から嫁いで来たわけでもないから、いじめの対象にならない。どの使用人たちも、私が転生する前からこの家で働いていて、不満を抱えているように思えない。    
もしそうだとしても、その気持ちのまま何年も働けないだろう。
母様を陥れようと考える人間だとは思えない。みんな良い人だ 。

 だけど、誰かが母様に睡眠効果のあるものを口にさせたのは間違いない
もう一度、1人、1人、リストアップされた人物を 今度は動機に繋がるかどうかで考えた。グルグルと使用人たちの顔が浮かんでは消えていく。 
駄目だー!と、机に突っ伏す。全く犯人が浮上しない。 
いきなり壁にぶち当たってしまった。
(ああ、 もう分からない……)

そうだ。こんな時はと、机に手をついて立ち上がる。

気分を変えようと窓の外を見る。
ここビックス領は、ポンペイ国の東のはずれにあり、隣国の デイサプとマトバデ公国を分断するほど大きな山脈に囲まれている。 全体的に土地が傾斜しているから
牧羊が盛んな場所だ。四季を通して素晴らしい景色が広がる。春は水仙、夏はラベンダー、秋は紅葉。冬は樹氷。そんな素敵な土地を統治しているのが我が愛しの父である。 サングレード伯爵。金茶の髪に黄昏色の瞳。背が高く細身の身体。
父様は見た目もさることながら、性格も良い。優しくて、強くて、頼りになる。そして、妻と娘に甘い。
 使用人にも恵まれ、私が帰るたびにみんな色々してくれる。こんな良い
城はない。

そんな自画自賛をしているとパッと
ある考えが閃いた。
外部の人間の犯行ということも考えられる。人目を盗んで厨房に入りパパッと、ふりかければ任務完了。
ほんの数分で終わる。その線も考えられる。これは重要なことだ。ページに『外部犯人説もあり』と、メモして丸で囲んだ。今度、エミリアにあったら相談してみよう。

*****

ネイサンはエミリアが 帰ると、そのままクロエの部屋に向かった。エミリアが、わざわざそのことを伝えに来たことを考えれば、すでにクロエが何かしらのモーション起こしていると考えるのが妥当だろう。
(危険なことをしていないといいけど……)

コンコン
「は~い」
今日はちゃんと居たようだ。
ドアが開いてクロエが顔を覗かせる。
無理して、やつれている様子はない。顔色も良い。体力的なことでは無い。
となると……。
「どうか、なさったんですか?」
「ちょっと、いいか?」
「はい」
クロエが脇に退けるとら中に入ってぐるりと見回す。何かしらの手がかりを見つけないと、止めることも出来ない。その目が机の上に広げてある手帳に吸い寄せられる。

クロエは日記を書いていない。何を書いたんだ?
手を触れずに上から覗き込むと"睡眠薬"と"外部犯人説あり"という文字が丸で囲んでいる。睡眠薬? 外部犯?
その文字に 眉をひそめる。
(一人で犯人探しをしているのか?)
母親の件をクロエは事故ではなく事件
だと思ってるんだな。それはネイサン
自身も引っかかっていたことだった。

 まさかという気持ちと、やっぱりという気持ちを 同時に持つ。振り返ると、お茶を入れようとしていたクロエと目が合う。


ネイサンの視線に手帳を出しぱなしだことを思い出した。
(もう勝手に見ないで!)
私のプライバシーは無いの!
持っていたものを投げ出すと、慌てて手帳を掴んで後ろに隠す。
「クロエ、説明してもらおうか?」
穏やかな表情、穏やかな声音、だけど私を見る目は厳しい。

これは誤魔化せない。言い逃れできない。あきらめて覚悟を決める。良い機会だ。前向きに捉えよう。
説明して 調べる手助けをしてもらおう。ネイサンなら強力な戦力になる。

次回予告
*容疑者と不審車両
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