結婚までの30日

あべ鈴峰

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6 新しい友達

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突然 !
白く小さな何かが、 にゅっと 目の前に現れた 。
シャーロットは、 度肝を抜かれて  飛び上がらんばかりに 驚く。 辛うじて 悲鳴は飲み込んだが 、その白いモノから 目が離せない 。

(こっ、これは ……)
私だけが見えているの ?あわわと 助けを求めるように 辺りを 見回す 。
その白いモノが 、ガチャガチャと 鉄の柵を揺らす 。
「ここから、出せよ! もう いいだろ 。何時まで 足止めする気だよ!」
  少女らしき声が 聞こえた。

人間だとホッとしたが 、新たな 疑問が浮かぶ。 どうして 牢屋に 少女が ?
「うるさい !おとなしくしてろ」
 案内役の 老人が  鉄柵を蹴る 。

目の前の 粗野な行為に、 固まっていると 負けじと 少女が 言い返す 。
「何をしやがる。 くそジジイ!」
「 騒ぐと 、明日になっても 出してやらないぞ」
「チェ!」

 一体 どうなるのかと ハラハラして 見ていたが、 少女が舌打ちしただけで 終わった 。
少女が ひどい目に 会わなくて良かったと 安堵していると 視線を感じる 。

何時の間にか 、案内役の老人が 扉を開けて 私がは入るのを待っている。

その顔には、 お嬢様の おあそびも ここまで。
すぐに泣いて 、許してくれと 言うはずだと、軽蔑した目で 私を見ている 。
 その目を見て、 持ち前の 負けん気に火がつく。

こんな男に 、見くびられたくない 。
シャーロットは 背筋をピンと 伸ばして 自ら進んで 中に入る 。
背後でガチャンと 扉の閉まる  音がして、囚人生活の 幕が切って 落とされた。

ど んな 凶悪犯と 相部屋になったのかと 戦々恐々と しながら、挨拶する。
「…はっ、初め……まし…て…?」

 誰もいない 。
 目を凝らして 周りを 見たが、やはり誰もいない 。
部屋の中には あるのは 、藁だけ。
 椅子もテーブルも 、まして ベッドも無い。
(これでは 眠ることも 足を延ばすことも 出来ませんわ …)
 ぼんやりと考えていると 足元から声がした。

「何 、ぼーっとしてるんだよ。 座りな!」
「!」
見ると 少女が 自分の横を ポンポンと叩いている 。
(すっかり 、忘れていましたわ)
 凶暴には見えないが 、牢屋に入っているのだから 気をつけないと。

少女の両目は 殴られたかの 勘違いするほど 青いアイシャドウが べったりと 塗られている。 ゴテゴテとした 派手な 安っぽい ドレスを着て、 サイズが合わないのかな胸元が大きく 開いている 。
(私より 年下ね 。たぶん 12、3歳ぐらいかしら?)

「 ええ、分かったわ 」
そう返事はしたが 、濡れた藁が あるだけで 座れるような状態では無い。
だから と言って、 無視するのも……。
「……」
 座るのを躊躇っていると、
「 ちょっと、待ってな !」
少女が そう言って 暗闇に消えていく 。

ぶっきらぼうな言葉遣いは、 私を 脅しているのか 、それともこれが普通なのか シャーロットは、はかりかねた。
生まれてこの方 、生粋の 市井の人と  喋ったことが無い シャーロットには、 見当もつか無い。もし前者なら 機嫌を損ねないように、 注意して話さないと 。

そんな事を 考えていると、 少女が 新しい藁を抱えて戻ってきた。 私の状況を察してくれたらしい 。
(とても、 親切ですわ。私の 早とちりでした)

 どうするのかと、見ていると 足元に 大きな藁の山を作る。 てっぺんを少し平らにすると、少女が手を叩いて埃を払っている 。

どうやら 、これが完成形らしい。
「ここに、 座りな 。 濡れてないから平気だろう」
「ありがとう 。助かりましたわ 」
どう座って 良いのか 分からないが 、このまま立ってもいられない 。
覚悟を決めると 、少女と同じように 腰を落としたが、藁 がチクチクと 素肌に刺さって痛い。

 とても 座り心地が悪い 。しかし、他に何も無いん だから 自分で工夫するしかない 。
「別に、たいしたことじゃ ねえよ 」
そっぽを向くと、少女が 不機嫌な声で話し出す。どうしたのかと、 様子を伺うと 鼻を掻いている 。
(…… 照れてますの ?)
何に 照れているのか 全然わからない。
「 仕方ねえな ~。こんなところへ 来るのは 初めてだろうから 、色々 教えてやる ぜ」
こちらを向くと 少女が ペラペラと 自慢にならない話を 得意気にしゃべりだした 。

「こう見えて、私は常連だ 。週に一回は 、ここに厄介になっているからな。 この藁だけど 座るだけじゃない。寝るときは 服の上から、かけると 毛布に早変わりだ 。便利だろ 」
「そうですね ……」
藁に、そんな使い道があるとは 知らなかったと 感心したが 、今晩 その方法で 寝るしかないのかと がっかりした 。

もぞもぞと ペチコート を藁の間に挟んで なんとか チクチクしないで 座ることに 成功した。
 これで 落ち着いて話ができる 。

「自己紹介が 、まだでしたわね 。私はシャーロット 。よろしくね」
 握手を求めると 少女が 目を丸くして 、私の顔と 手を 交互に見比べる 。
変なことを したのかと 思った時 、少女がスカートに 手を擦りつけながら 満面の笑みで  握手してきた。
「アタイ は キャロル 。キャル って 、 呼んでいいぜ 」
そして 、その手を 上下に ブンブン振り回してくる 。シャーロットは   、 首をガクンガクンさせながらも 凄く 喜んでいるのが ひしひしと伝わってきたので 、堪えた。

 照れたり 、喜んだりと 起伏が激しい 。
手を離した キャルが  自分の指先の匂いを 嗅いでいる 。
「 いい匂い 。やっぱ 、金持ちは違うな」
 自分でも指先の匂いを 嗅いでみるが 、何の匂いもしない 。そんなキャルを 放っておいて、 あたりに目を凝らすが、 別の部屋も 見当たらないし 他に 人の気配も無い。
「 他には誰もいませんの ?」
「うん。 今夜は アタイだけだ。 いつもは 酔っ払いが 何人かいるけど な」

なるほど 。たまたま、人が 少ない時に 当たったみたいね 。
それにしても 、こんな少女が 本当に 犯罪を犯したのかしら ?
悪びれる様子もなく 私を見ている キャルは、 犯罪者のイメージとは かけ離れている。

 「あなたは、 本当に犯罪者ですの ?」
「犯罪 ?…まぁ、一応は 」
(本当なのね…)
 きっと 、運の悪いことに、厳しい 店主にでも 突き出されたのね。
「 ところで、あんたみたいな金持ちが、いったい何したんだい?」

 「 強盗 よ」
「へー」
私の答えに キャルが感心する 。
どう言うことかしら ?犯罪の中で も 、強盗することは ステータスなの 。

「どこの店を 襲ったんだい」
「 メインストリートにある 『アンヌズ』宝石店よ」
 シャーロットは 、手をかざした。 あの 深紅の指輪 は没収されてしまった。出来れば、もう一度 この指に 填めたい 。
とても 素敵だったのに…。
「『 アンヌズ』 …。あぁ、あそこは、良心的な店で 有名だよ 。なんでも この街一番の 大富豪が 、やってるんだってさ 」

「 大富豪 …もしかして 、貴族なの ?」
嫌な予感がする 。もし 貴族の店なら、 事件が 揉み消される 公算が高い 。
恐る恐る 聞いてみると 、キャルが 首を横に振る 。
「違う 。違う 。アタイと一緒の 市井だよ 。でも 、貴族が 金を借りに来るくらい 金持ちなんだってさ 」
「それは 凄いわね 」
キャルの 話に 望みが出てきた 。

市井の者なら、 相手が 貴族でも 容赦しない。それに 利益を 追求するのが、 商売人 。
結婚間近の 伯爵令嬢の 示談金。かなり 高額な額を  要求するはず 。そうなれば 、ケチな お父様のことだから 絶対支払わない から、 交渉決裂ね 。

「しかし 、宝石強盗か …。すごいね 。アタイには、 無理だ 。そんな度胸 無い」
キャルに、背中を バンバン叩かれながら シャーロットは 戸惑う 。
悪いことをしたのに 、褒められても…。

 その上、憧れの眼差しで 見られて 、どんな態度をしていいか 分からない 。
「それで どれくらい 盗んだんだい 。こう…ダイヤとか、ルビーとか 沢山付いた 豪華なやつ なんだろうなぁ~」
身振り手振りを交えて 、楽しそうに聞いてくる。 何やら 新聞の一面を飾るような 、 強盗をしたと 勘違いしている 。

ガッカリさせそうで 、指輪一個だけとは 言え無い。
「失敗したんだし 、その話は 後でゆっくり。ねっ! それより キャルは 何をして 捕まったのか 聞かせて」

 ひきつった笑顔で 話題を変える。
すると、つまらなさそうに キャルが肩を竦める。
「縄張り を  荒らしたからだよ 。みんな 、場所が決まってるんだ 。でも、アタイみたいな 新参者は そういう場所が 無いから 。見つからないように 、ちょっと場所を 拝借するんだよ」
キャルが 、そう言って 人差し指を曲げたが 、何の意味か さっぱり分からない 。
「縄張り? 何の縄張り ですの ?」
「売春だよ 」

キャルの口から 出た 衝撃的な言葉に 、 容易に 二の句が継げない。
そういう 職業の 人が いることは 知っていたが 、本人に会うのは、初めてだ。

こんなに幼い いたいけな少女が 身を落として いるなんて ……。残酷な世界だと 知っている。でも、その現実を 目の当たりにすると 悲しい気持ちになる 。
辛い思いをしているのに  明るく振る舞って…。 
 (なんて健気なの)

「 顔が 真っ青だぜ。 大丈夫か ?」
「…」
「…もしかして 、売春婦を 見るのは 初めてか?」
「だっ、大丈夫よ 。その……」

こう言う時は、なんと云えば 良いのかしら ?
明日は 我が身かも しれないのに 。
同情するような 言葉を言ったら おこがましい。

 「気分が悪いなら  、あっちに行くぜ 」
キャルが 、そう言って 腰をあげたので 腕を掴んで 引き止めた 。誤解されたくない 。

「違いますわ 。あまりにも 若いから 、ちょっと 驚いただけです 」
「そうか?アタイ ぐらいの 歳の娘も 少なくないぜ 」
「そうなんですの …」
キャルが、 追い討ちをかけるような事を こともなげに言う。

「ああ、皆 若いぜ。アタイ みたいに 田舎から出てきたけど 、仕事が見つからない奴とか。 お針子だけじゃ 食っていけない奴とかだよ」

お針子といえば 、ちゃんとした仕事のはず 。
それなのに ……。
シャーロットは 、あまりにも厳しい現実に 絶望した 。 あわよくばと 思っていた 自分が恥ずかしい。

 「やっぱ 、何のコネもないと  仕事が見つからなくてさ 。しくじったぜ。 都会だから 簡単に見つかると、 思ったんだけど 。甘かった」
 ギャルが肩を落とす 。

明日の我が身を 見ているようだ 。
「そうね 。簡単に仕事先は 見つからないわよね…」
 シャーロットは  ふかぶかと頷く。
 やはり 、犯罪者になって正解 。
でなかったら、 今頃どうなっていたのか。 想像しただけでも 恐ろしい 。
「全くだよ 。頭ごなしに 断りやがって 。ムカつくぜ。チャンスも くれないのは 、不公平だと 思うだろう 。こちとら 養わなくちゃいけない 家族がいるのに 」
キャルが怒って 自分の太ももを打ちつける。

家族のために 出稼ぎに出るなんて 、なんて親孝行な良い子だ 。 元々 は、田舎の純粋な 娘だったのね 。 
私より 強い子なのかもしれない 。

一応 作戦成功と言えるが 、クズ男の 動向が気になる 。念には念を入れないと。
「 ところで 、キャルは 明日になれば 牢屋から出られるの?」
「うん。いつも 一泊で 帰してくれる」
(この子なら  適任かも )
望み通りの 答えにシャーロットは キャルに、 協力を頼むことにした 。

罪が確定するまで 何日かかるか、 予想も出来い。その間 、外の様子を 探ってくれる人間が 必要だ 。
それに、 今のところ キャル以外、 外での知り合いがいないの 現実。

「それじゃあ。 私の頼みを 聞いてくれるかしら? もちろん 謝礼は 弾むわ」
「 別にいいけど。アタイで良いのかい?」
 「キャルが、良いの 」
シャーロットは 、そう言ってギャルの手を握った。
「 そんな簡単に、 信じていいのかよ?」
何故、そんな事を聞くんだろう。

 「どうして 、キャルは良い子でしょ」
「……」
 キャルの反応に シャーロットは  戸惑う 。
 最初は 言葉遣いが悪くて 驚いたが 、話した印象では 中身は善良だ 。幼い時から 上流社会の 世界に身を置いて いたシャーロットは、 本能的に 相手が 自分の敵か味方か どうかを判断するように なっていた。
 苦い経験を 繰り返して 身につけたものだ。
もっとも、使用人を見る目は、無かったけど…。

「わかった 。で 、何をすればいいんだ」
 黙って私を見ていた キャルがコクリと頷く 。

 やっと、私の味方ができた 。

まだ子供だけれど この世の中の仕組みは、 私より知っている。
 
***

残り21日 。

「アラン様 。アラン様 。起きてください 」
枕元で 騒ぎ立てる 小間使いを無視して 、寝返りを打つ 。
無言の返事だ。

 全く何時に寝たと 思ってるんだ。 昨夜は 仲間たちと 明け方まで遊んで 朝帰りしたこと 、知っている。
それなのに ……。

「アラン様 。お願いでございます 。起きてください 」
回り込んでまで、しつこく 言ってくる 。
ここまで 、うるさくては 流石に目も覚める。

 片目だけ開けて 小間使いの様子を伺う 。
いつも以上に 縮こまって 、眉間のシワも深い。
(… 仕方ない 。起きるか )
これで 、どうでもいいような 用件だったら 殺す !

もぞもぞと 起き上がると 殺気のこもった声で言う 。
「何だ !」
「グラハム伯爵様から 使いの者が来ています 。火急の用だそうです 」
(伯爵が? ……)
ナイトテーブルに 置いてある 置時計を掴むと 時間を確かめた 。

5時 …。
これは 、ただならぬ事が  起きたに違いない 。
「出かける 。さっさと用意しろ!」
「 はい!」
 小間使いが出ていく。アランは ベッドから 出て、 なんとか眠気を覚ますそうと 顔を何度も擦った。

***

体の痛みで 目を覚ますと 膝の上にキャルの頭が乗っている。
一睡もできないと 思っていたのに 。いつのまにか 寝ていたらしい 。
夜中に起こされなかったという事は 、まだ私の正体が 分かっていないと 、考えて 問題ないだろう 。

寝ているキャル起こさないように 、そっと頭を外して 体を引きずり出す。

寝返りを打ったキャルの小さな寝息に 微笑む。こうしてみると 本当に幼い。
都会で 一人暮らしだけでも 寂しいだろうに。 売春をしてるなんて …。
生きて出所きたら 、孤児院で働こう。
前科が、あっても 無下にはしないだろう。

キャルの藁をかけ直すと手を組んで伸びをした。
朝の光に 照らし出された牢屋を見て、 自嘲気味に笑う。 
目の前に、広がっているのは、石壁と鉄柵に藁だけ。恐ろしい光景ではなく。 鍵付きの飼育小屋みたい 。
( 現実なんて、 こんなものなのね )

本当なら顔や体を洗って さっぱりしたいけれど 無理に決まっている 。それなら 、せめてもと 体についた わらを払っていると 足音が聞こえてきた。

**

 シャーロットは 取調室の前で ドアが開くのを待っていた 。
これで  クズ男との結婚はなくなる。

予定通りだと 満足して、 良いはずなのに ドアが 開けられた瞬間、足が床に張り付いて 動かない 。
「ほら 、入れ 」
この一歩を 踏み出せば 犯罪者の烙印が 押されて、 私の人生が ガラリと変わる。
 暇を持て余していた 優雅な 貴族の生活から、 怯えながら 1日生き延びることができたと  神に感謝して 眠りにつく 極貧の生活になる。

そう 想像すると 目の前が 真っ暗になる。
( あなたは これで良いの?間違ってない? 他に方法はないの ?後悔いしない ?)
次々と 思いとどまるように 促す感情が浮かんで 来て腰が引ける。

 自分から進んで、 闇に落ちると 決めたくせに いざ現実になると思うと 怖くてたまらない。そんな弱気になっている 自分に  ここでやめたら クズ男の腕の中に 逆戻りなのよと 、言い聞かせる 。

クズ男の顔が浮かんだ途端 体に力がみなぎる。
 贅沢な暮らしより 、プライドが勝った。

 取調室の中では、スーツ姿の 背の高い男性が 役人と話している 。
(たぶん この人が社長ね)
 後ろ姿なのに 眩しい光が 溢れている。
 生命力に 満ちたその姿に シャーロットは 目が離せない 。
こんなに異性に惹かれるのは、 初めて 。一体、どんな男性なんだろう 。
胸が ドキドキして 早く顔が 見たくて そわそわする 。

「連れてきました 。こちらのレディが 、そうです」
 役人の声に その男性が、やっとこちらを見た。

 こげ茶の 癖のある髪が 輪郭をなぞり、 男らしく意志の強い 顎を和らげている。
 明るく 煌めく 翡翠色の 瞳は 、大きく見開かれて こぼれ落ちそうになっている。
 純粋に 驚いている様子から 、どうやら 私を知っているらしい。
 けれど シャーロットには、全く覚えがない。

 こう見えても 記憶力には 自信がある。 それに こんなに魅力的な 男性を 忘れるはずがない 。この姿で 見覚えがないと 言うことは 子供の頃の 知り合いなのかしら?
「 …どっ、どうして ?……そんな…バカな …。嘘に決まってる 」
社長が本当に 私が盗んだのかと 役人に 詰問している。

 先に喋らない。 これが思い出せ無い人物への  ベストな対処法。
 二人のやり取りを 上の空で見ながら、 思い出そうと 細部にわたってチェックする。
 太い首、 厚い胸板。筋肉のつき方からして 貴族というより 一昔前の騎士のよう 。

シャーロット は首をひねる。
 親しい 市井の知り合いはいない 。
だが、社長の あの髪の毛 、確か どこかで見た気がする。 
それに あの翡翠色の瞳 も。
何かが頭の中で引っかかる。

 出てきそうなのに出てこない。 もう一度 、社長の顔を見ると 眉毛の上にギザギザの形をした 古傷を発見した。
 そのキスを見て  昔の記憶が甦る。 
こめかみに怪我をした 暗く絶望の色が 浮かべていた 緑色の瞳の少年。
(あっ!)

シャーロットは 思わず 自分の口を覆った。
 クズ男が いじめていた あの少年だ。
 どうして ここに ?あの少年が 成長して 社長にまで出世したの ?

役人の反応からして 社長本人らしい。
 そう言えば …とても優秀な成績で 大学を卒業したと 聞いた 。
( 善行は しておくものね 。運が回ってきた )
クズ男は 私たちにとって 共通の敵。ならば 力を貸してくれるはず。


最初の計画では 犯罪者になって クズ男との結婚を  回避しようと 自分の人生をかけた 大博打を打った。 しかし 、そんな事をしなくても 、すみそうだ。

 最強の助っ人の登場ですもの。

 「ティアス様!」
シャーロットは、 わざと 大声で名前を呼ぶと ディアスの腕を引っ張って 部屋の隅に連れて行く 。
「えっ?!」
棒立ちになったまま 困惑した目で、私を見る 。その目に向かって シャーロットは何度も ウインクする 。

「どうか 私の話を 聞いてください。 魔が差しただけなんです。 両親に 黙って頂けるなら、 何でもしますわ 」
ハンカチで 大げさに 涙を拭うふりをしながら、 しおらしい言葉を言う 。
『お願い。私に話しを合わせて』
昨日までの 木で人をくくったような 態度の私が 豹変したことに 役人が 唖然としている 。
『…分かりました』
ティアスが頷く。

「罰として、盗んだ代金分、働いてもらいます 」
「はい。頑張ります」
 頭を下げると ティアスが私の手を引いて歩き出した 。
「では、早速ですが 働いてもらう場所へ 案内します」
 役人たちは 私が 反省したと満足げにしていたが 話が勝手に進むと  慌てて介入して来る。

「待ってください 、カークランド様。 そのレディをご 存知なのですか?」
 呼び止められたことで 立ち止まりしかなかった。 シャーロットは ティアスの後ろに 隠れて小さくなる 。

ティアスが役人の視線を 遮るように 立ちはだかる。
「…ええ。 知っています」
言わないでと  つないだ手に 力を込めると 、握り返してくれた 。
「でしたら 教えてください 」
「被害届は 出しませんから、 必要ないのでは」 
「それは…そうですが…」

 ディアスの言い分は 正しい。 しかし、 このまま何も知らない状態で 私を引き渡したら 役人としての 立場がない。
 どうやって 切り抜けるのかと 耳をそばだてた。
「 役人の世話になったと 噂になったら、 彼女だけの問題では なくなります」
「ですが……」

引き下がらない 役人に ティアスが 強い視線を向ける。
「 教えても構いませんが ……責任を取れるんでしょうね 」
「……」
ティアスの冷静な 声音に  役人が 、お互いに 顔を見合わせる。
押しが強いとは こういう事を言うのだろう。
 役人の心に 、どうしようかと言う 迷いが生じる。
「  この件は こちらで処理します。 あなた方も  貴族と波風を 立てたくないでしょう」
「分かりました。こちらも 手を焼いていましたから 」

その一言が 決め手となった 。
ティアスが役人たちと 握手を交わすと、 二人揃って 取調室を後にする 。

**

シャーロットは 俯きながら ティアスの後ろに続いて 馬車に乗り込む。
出発すると 肩の力を抜いて シートに身を沈めた。 役人に声をかけられた時は どうなるかと ハラハラしたが 、思いの外 うまくいった。

「いった…」
ティアス が  すぐさま 聞いてきたが 、片手を出して 黙らせる。
主導権は 、私が握らせてもらいます 。
「本当に、久しぶりね。 10年ぶりくらいかしら?」
「……」
  そう切り出しと ティアスの顔に  嬉しいような、 悲しいような 複雑な表情が浮かぶ。

それを見て シャーロットの心に 後悔の気持ちが広がる。 
私との出会いは、 いい思い出とは言えない。 それに いくら 子供だったとはいえ、 何もしてあげなかった 。
『面倒を見る。 責任を持つ』と言ったのに。
 お見舞いにさえも行かなかった。余りにも、  無責任すぎる。

「 はい 。お久しぶりです 。それにしても 一緒にいたのは 、ほんのわずかな時間なのに よく私だと お分かりになりましたね 」
「ティアス。あのね」
一言だけでも 謝ろう そう思った 。ところが、 ティアスの優しい瞳と 目が合って思わず魅入ってしまった 。

「シャーロット様 ?」
「はっ、…もっ、もちろんですわ 。こめかみの傷 に くるくるの巻き毛 。翡翠色の瞳 。昔の面影が 残っていますもの 。彼方こそ 、私だとよく 気づきましたわね 」
「シャーロット様は 昔と全然 変わっていませんから 」
ティアスが 懐かしむように言う。

それは私が お転婆と言っているような、ものだ 。確かに ティアスを助けるために、 年上の男の子たちに 食ってかかったけど…。 
今も成長していないと 言うこと。

「それって …」
「誤解しないでください。 今は、立派なレディです 」
(立派なレディ ねぇ…。立派なレディ は 盗みを働いたり しないものだけど …)
慌てふためく ティアスは 堂々としていて 、とても自信に満ちている 。
ギャルの話では すごい お金持ちだと 、言っていた。わずか10年の間に 何があったのかしら?

「 それにしても 凄い出世ですわ。 何か特別な 出来事でもありましたの ?」
「別段 シャーロット様に、 お聞かせするような 面白い話はございません」
 丁寧な口調の中に 、確かな拒絶を感じる。

 笑みを浮かべているが 心を閉ざしたとわかった。 
さっきの素の顔は消えて 、いつもの顔に戻ったと いうところかしら 。
これ以上 追求するのは 、やめましょう 。
まずは 世間話からと思ったが 、とんだ藪蛇になってしまった 。

「そうそう 。お礼がまだでしたわね 。助かりましたわ 。盗みに入った お店が 、彼方のお店で ラッキーでしたわ」
「 ラッキーじゃありません!」

 ティアスが 口を真一文字にして 諌める ような目をする。。
その口ぶりだと 私がスリルを求めて 強盗をしたと思っている 。そう思われても仕方ない 。
人生の中で 一番 無謀なことをした 自覚はある。
 でも 、そう思われるのは心外だ 。ティアスには 誤解して欲しくない。

 「わかりましたわ。 全てを話しますから、 そんな顔を しないでちょうだい 」
「……」
シャーロットは 降参だと 両手を上げる 。
洗いざらい話して ティアスとの 信頼関係を築こう。

ここからが 最も 重要な部分。 同情を誘うというのが 常套手段だけど 嘘泣きは 不得意だ。
 となると 直球勝負ね。
「ティアス は 私がどうして  強盗をしたか 、その理由を 知りたい ?」
「はい。お聞かせください」

 ティアスの返事に シャーロットは 、くっきりと 笑みを浮かべる 。
(引っかかったわね)
 話を聞けば 、逃げづらくなるのは わかりきっている 。後ろめたさが 残るが、 今は手段を選んでいる場合ではない。
 それに どうしても ティアスの力が必要だ。
 心の中で 巻き込むことに 謝罪しながら 、今までの経緯を話した。


話終わると ティアスが 合点のいった様子で 頷いている 。
シャーロットは 、それが嬉しい 。

もう一人 、私に力を貸してくれる人が できそうだ 。

「新聞で読んだときは 、まさかと思いました が、 そんなからくりが あったんですね」
「 当たり前ですわ 。婚約して 1ヶ月で 結婚なんてありえません 。それに私にも 断る権利はありますもの 」
望んでいたと思われるのは 我慢ならない。
たとえ 太陽が西から昇っても 無い。

 「お気持ちは 分かりましたが …もっと良い方法が あったはずです 。何も 犯罪に手を染めなくても 」
それでも、 非常識な行動だと 思っている節があるようで ティアスが 諭すように言ってくる 。
「いいえ 。これくらいしなくては 結婚を中止に できませんわ 。…本当は 、知り合いの家を 訪ねようとしたのだけれど クズ男の手が回っていて できなかったの 」

改めて クズ男に 出し抜かれたかと思うと 、歯ぎしりしたいほど 悔しい 。プリプリと 怒っていると ティアスが 躊躇うように口を開く。
 「 シャーロット様は 、アラン様の事を ……クズ男と呼んでいらっしゃるんですね 」
「当たり前ですわ 。あの後も  改心するところか 、ずる賢いことばかりして 全然治りませんでしたのよ 。ティアスも アラン様ではなくて クズ男と 呼びなさい!」

様をつける価値など 、これっぽっちも無い。
 ティアスに命令する と 微かに ピアスの口角が上がる 。シャーロットは その笑顔に 惹きつけられるように 身を乗り出して、視線を合わせた。
「 私のことを 少しでも、 同情するなら 力を貸してちょうだい 」
「かしこまりました 」
ティアスが胸に片手を押し当てて お辞儀をする。 頼もしい返事に 笑みがこぼれる 。

シャーロは その手をかっちりと握ると 力を込めて 念を押す。
「 言質を取ったわよ 。分かっていますわね 」
「もちろんでございます」
 揺るぎない瞳に見つめ返されて、 シャーロットは感激する。

 お金や地位で 裏切ったりしない人に 巡り会えたことを 神に感謝したい。 
「ありがとう。ティアス。  本当にありがとう」 
シャーロットは 命綱のように ティアスの手を 胸に抱いた 。驚いたティアスが 手を引き抜こうとするのを 反射的に 引き戻す。絶対 離さ無いと 首を横に振る。 ティアスが 目を白黒させる。

 太くて 逞しい腕は 守られてると言う 安心感を 与えてくれる 。
観念したのか ティアスが 力を抜いたので 名残惜しいが手を離した。

「……具体的には 何をしたら良いのでしょうか?」
 しばらくして ティアスが 掠れた声で聞く。

「そうね ~」
シャーロットは トントンと 顎を指で叩きながら 作戦を練る。
 今 私は二人目の協力者を 見つけることができた 。このまま上手くいけば 、あのクズ男から 逃げ切れる 。もし、逃げ切れなかったとしても 態勢を立て直す 時間が稼げる。

 これは重要なことだ 。
二人のつてを頼れば もっと協力者を 集めることも可能 。
「とりあえず 10日?…ううん。 一週間でいいから 匿ってほしいの 」
「……それですと 結婚式の日まで  まだ日数が あります 。その間は どうなさるおつもりですか?」

 そう聞かれても 何も決まっていない。
 でも そうだと口にしたら ティアスが大騒ぎしそう 。なんと言えば 良いのかと考えていたが、 私の様子を見て 察してしまったようだ 。

「何の計画もなしに 家出したんですか!」
「 仕方ないでしょ 、最初の計画では 犯罪者になって 投獄される予定だったんですもの」
ティアス に 散々厭きれられて 気分が悪い。

 一生懸命 考えた事てなのに。
 「投獄って …… 無茶苦茶過ぎます。 現実は 空想と違って、 うまくいくとは限らないんですよ 。それなのに…」
「いいえ 。私の計画は 完璧ですわ。 その証拠に 、ここまで計画通りに進んでいますもの」
「お言葉を返すようですが 、 単に運が良かっただけです 」
それは違うと ダメ出しをしだした。

「少しは、変装するとか 考えないんですか? その格好では すぐに 貴族の令嬢だと わかってしまいます 」
「そんな事ありませんわ。 最後まで 伯爵令嬢だと バレませんでしたもの 」
疑われましたが 乗り切ったと 胸を張って答えたのに、 ティアスが 呆れて首を振る 。

「バレバレです 。どこから見ても 伯爵令嬢です」
 シャーロットは  ムッとして 、いかに自分が 変装に力を入れたかと、 とくとくと聞かせた 。
「何を言っていますの 。ちゃんと変装していますわ。 このケープなんて 、いかにも それらしいでしょ。 これを見たとき ピンときました。 これがあれば 市井の娘になりきれると」
 監視の目があって 買い物も、ままならなかった。 だから 手持ちの服で 私なりに  考えて 一番古いドレスで コーディネートした 。
「……全く それが余計に 目立つんですよ。 考えてもみてください。 いくらお供を連れていなくても 、上等なものを身につけている 若い娘が、 小汚いケープを 身につけているですから。  訳ありと言っているのも当然です 」
「くっ」

ティアスに 完全否定されて 、さっきまでの自信が ガラガラと 崩れ落ちる。
 完璧だと思った 服装は、市井の目から見たら 変装にも なっていなかったなんて。
「 でも、でも 。誰も普通に接してくれましたわ。  かしこまった態度を 取られた記憶もありません」
服装だけで令嬢認定されたことは 納得いかない。

 ティアスがため息をつく 。
「気を使ったんですよ 。大体 、泥棒が 自分のことを泥棒と良いますか」
「 じゃあ。どうやったら 泥棒だと 認めてもらえるんですの?」
「……はぁ~」

ティアスが、ため息をついて首を振る。
そんなティアスを見ながら シャーロットは仕方のない行動だったと 自分を正当化する 。
「どうしても捕まりたかったんですもの。他にどうすれば 良かったと言うんですの?」
気づいてくれない方が悪いと シャーロットは口を尖らせる。
ディアスが こめかみを押さえた。

「 あなたって人は ……私の店でなかったら 今頃どうなっていたか。少しは自分を 大切にしてください !」
ティアスに怒鳴られるように 哀願されて シャーロットは腕組みして睨み返す 。
そんなこと 言われなくても知っている 。
でも 、人生で配られるカードは 次に何か来るか知りようもない 。だから 次のカードに 運を任せるより 手元にあるカードで 勝負しなくちゃ。

 ティアスは 商売人のくせに 心配性ね。
「世の中 出たとこ勝負ですわ 。それに終わったことを あれこれ言っても仕方が ありませんわ。これからの話をしましょう 』
「なっ! シャーロット様は 伯爵令嬢なんですよ。 自覚を持ってください 」
私の答えが 、さらに心配を 煽ったようだけど 構わない 。

この私が したいと思えば 、するだけ 。
それに 自覚なら   嫌というほど自覚している。 だから、こんな状態に陥ったのに 。
「確かに 、あなたの言うとおり 今回は運が良かっただけかもしれません 。でも 、最悪あの場所で 殺されていても 何の未練もありませんわ」
「なんと言うことを言うんですか !シャーロット様を 思って悲しむ人がいることを 少しは考えたことがあるんですか !」

ムキになって 私を心配してくれるティアスの姿に 、久々に 温かい気持ちなる。

こうやって叱ってくれる人 は、大切だわ 。小言ではなく アドバイスとして 受け止めるべきね。 
「気持ちは 十分伝わったわ。 私のことを そこまで心配してくれるのは 彼方だけね 」
「いえ、シャーロット様は誰からも 愛される 女神のような存在です 」

生真面目な顔で 面と向かって言われて シャーロットは 内心苦笑いを浮かべた。
ティアスにとって私は 、完全無欠の伯爵令嬢なんだろう 。
彼方こそ 、夢を見すぎ。

 伯爵令嬢でも 失敗するし、 隠れてつまみ食いもするし 、ひどい言葉で 悪口を言う。気に入らない相手に 罠を仕掛けることだってある。

 それに 私の心には 彼方を利用しようとする 悪い考えもある 。でも 、そのことを 指摘するより、 夢を見させていた方がいいのかもしれない 。

「  褒めすぎですわ 。でも、心配しないで。ティアス を悲しませないように 気をつけますわ」
半信半疑で 私を見ていた ティアスの瞳の中に、 何かを決心させる 強い意志を 感じさせる 光が またたいた事をシャーロットは 見逃さなかった。

 なんだか 面倒なことになりそうな 予感がする。
 「そう心配しなくても大丈夫ですわ。 私だって 何も手を打たなかったわけでは なくてよ 」
「…どんな手を 打ったんですか?」
 ティアスが 物言いたげな顔で 聞いてくる。

きっと私の考える作戦など 穴だらけだと 思っているに違いない。
( 私の話を聞いたら 腰を抜かすはね)
 ニヤリと 笑うとティアスが 目を細める。
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