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12 敵 来襲!
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ティアスからの話で まだ、余裕があると思っていたシャーロットだったが、何の前触れもなくグズ男が訪ねて来た。
見つかった!!
とうとう、 本人が来てしまった。
応接室をマリア達と 一緒に覗くと ティアスが クズ男と無言で 対峙している 。
パックリと足元に穴が開いて シャーロットを飲み込んで行く。
最も恐れてたことが現実になってしまった。
ズルズルと ディアスに甘えていたから、こんなことになってしまった。 シャーロットは自責の念に駆られる。
***
ティアスとの再会に アランは苛立っていた 。
貴族の私が 、わざわざ ティアスの家に足を運ぶ事になったことが 気に入らない。
市井なんだから 貴族の呼び出しに答えるべきだろう。
アランは通された部屋に乱立している調度品を見て 鼻を鳴らす。
(まさな成金だな)
10年や そこらで 成り上がったんだ。
靴を舐めるくらいの事をしているだろう。でなければ、今の地位は考えられない。
そんな事を考えていたが、ドアの 開く音に振り返る。
生意気にもティアスが、堂々と私の視線を真正面から 受け止める。
そこには、怯える目で私の機嫌取りをしていた 少年の姿は どこにも無い。
小さく深呼吸して、全ての感情を 隠す。
そうしなければ 自分が優位に立てない事は 、分かっている。平坦な声で 喋り出す。
「こ…」
喋り出して初めて 自分が緊張していることに気づく。
…馬鹿らしい。なぜ緊張する?
無意識に握っていた手のひらを開く。
私は貴族で ティアスは市井。
逆立ちしたって お互いの 立場は変わらない。
市井の者が 貴族に逆らうことなど 出来ない。
それは 流れている血 一滴、一滴に 延々と 染み付いている。 そう思うと 肩の力が抜ける。
貴族として接すれば良いだけのことだ。
「これはこれは。 ティアスじゃないか。 久しぶりだな。 まさかと思っていたが 生きていたとは、 随分 しぶといな 」
***
シャーロットは ティアスが クズ男と 向かい合ってるのを見て 目の前 が真っ暗になる。
喉が詰まって 体が小刻みに震える。
逃げなくてはと 本能で分かっていても 理性が何処へと 問いかけって来る。
ティアスの力なくして 何も出来ないし、 何処へも行けない。
こんな事なら キャル家 の場所 を教えてもらえば良かった。
いつか、 この日が来ると知っていたのに…。
今日まで先延ばしていた罰が 下ったんだわ。
足から力が抜けていく。 その場に、しゃがみ込みそうになるのをなんとか踏ん張って 堪える。
ここで倒れてしまって は 駄目よ。
私を匿ったことが クズ男に知られてしまう。
そうたったら、またティアスが酷い目に遭う。
早く身を隠さないと。
それなのに 足が ぐにゃぐにゃになって 言うことを聞かない。 それでも何とかしようと自分の足を叩く。
『 動きなさい 。これは命令よ!』
それでも 動かない自分の足に 腹が立つ。
(ならば、這う?)
床を見ながら、リスク回避とプライドを天秤にかける。
(・・・仕方ない)
目を閉じて床に両手をつく。
『 ちょっと 何してるんですか?』
すると、 ローラに腕を引っ張られるて 二人の間に倒れこんでしまう 。
『放しなさい』
こんな事をしている場合じゃないと 起き上がる。
「これはこれは。 ティアスじゃないか 久しぶりだな。 まさかと思っていたが 生きていたとは。随分しぶといな 」
聞こえてきたクズ男の声に 中を覗く。
「お陰様で、至って健康です」
「 こんな所で会うとは… 偶然か? それとも…必然か?」
「さぁ、 私には分かりかねます 」
クズ男がティアスの周りをぐるりと回りながら言う。 絶対 粗探している。
しかし 、ティアスの格好は完璧で 一部の隙もないから無駄なこと。
「 こんな家に住んでいるとは 。流石 、市井の者は 転んでも ただでは起きないか 」
「お陰様で ここまで成功することができました。アラン様には 感謝しています」
クズ男の嫌味に ティアスが落ち着いた声音で 返すと、クズ男の こめかみに青筋が浮き出る。
(良い気味だ)
「 …成金のくせに!」
微塵も感情を崩さない ティアスに苛立ったらしく 吐き捨てるように言う。
最初から将来を約束されている貴族と違って 血の滲むような努力をして 今の地位を築いたのに、 そんな風に言うなんて許せない。
しかし、ティアスは怒りもせず 受け流す。
「お褒めに預かり光栄です」
「……」
ティアスが そう言って 会釈する。
効果がないと判断したのか クズ男が威圧的な態度を改めて 馴れ馴れしく ティアスの肩に手を回す。
「 お前とは古い付き合いだ 。私だって 手荒な真似はしたくない」
「……」
「協力してくれたら、それなりに支払うつもりがある。 どうだ。悪い話じゃないだろう?」
クズ男が金をチラつかせて誘惑する。
「 お金より、 シャーロット様の方が大事です」
ティアスが 断ると 両手を広げてオーバーな仕草で クズ男が首を振る。
「 無駄だ。 いくら金があっても、 お前は シャーロットを幸せに出来ない。 その理由は 言わなくても 分かるだろ 」
含みのある言い方が 鼻につく。
「……」
固い表情で ティアス が沈黙する 。それを交渉のテーブルについたと 勘違いしたクズ男が、さらに 言葉を続ける。
「分かってる。 シャーロットが幸せになるかどうか、心配なんだろう。 なにせ、お前に とっては 命の恩人だ。だが、 大丈夫。 今の暮らしと何ら変わりない生活をさせると 保証する」
「 シャーロット様は アラン様と結婚したくないと言っていました」
そうよ。その通り。死んでも嫌!
「 誤解だよ。シャーロットが家出したのは 所謂 マリッジブルーってやつだ。 誰でも結婚前は 気持ちが不安定になる。それを一々真に受けてたら 誰も結婚できない。分かるだろう?」
よくある話だとクズ男が 肩を竦めるて、ティアスの意見を否定する。
シャーロットは 手を組むと 祈るように口元に押し付ける 。
(ティアス。 クズ男の口車に乗っては駄目)
「 シャーロットの両親も心配している。 行方不明のままでは 可哀想だと思わないか?」
「……」
「 いい加減 、意地を張るのは止めろ。 どう足掻いても 私との結婚は無くならない」
「……」
「このまま隠れていると 状況が悪くなるのは、シャーロットの方だ 」
「……」
押し黙ったまま 返事をしない ティアスに クズ男の化けの皮が剥がれる。
「お前が匿っていることは、 分かっているんだ。 さっさと居場所を言え!」
元使用人に、これ以上 下手に出るのは限界らしい 。
シャーロットは クズ男の言葉に、ほっとを緊張を解く。
まだ 見つかっていない。
この家に本人自ら訪ねてきたから、 てっきりバレたのかと 肝を冷やしていた。
「 一体何のことだか、分かりかねます 」
「忘れたのか? それとも… 昔みたいに打たれないと 思い出せないのか? どっちだ」
グズ男がニヒルな笑みを浮かべて ティアスにプレッシャーをかける。
クズ男の卑劣な 言葉に 堪忍袋の緒が切れる。
いくら何でも酷すぎる。 昔の事をネチネチと。
『 その口を縫い付けてやる』
シャーロットは歯ぎしりしながら 毒を吐くと 怒りに任せて乗り込もうするが ローラたちが私の口をふさいで羽交い締めする 。
『落ち着いて下さい 』
『始まったばかりだよ。 楽しみのは、これからだよ』
「さて何の事でしょう?」
「くっ」
ティアスが惚けると 激昂しているらしく クズ男の顔が赤い。
このまま怒って帰るかと 思っていたが、クズ男が背を向けて 深呼吸している。クルリと振り向いた時には いつもの薄笑いを浮かべている 。
「今更、そんな嘘が 通じると思うのか? お前の馬車に乗り込むの を何人もの人間が 目撃してるんだぞ !」
クズ男が語彙を強めて言う。
「ええ、その通りです 。ですがその後、 示談が成立して出て行かれました」
「 示談 ? 何 寝ぼけたことを言っている。 シャーロットは 金も無いし 、 頼る相手もいないんだぞ。 一体 どこへ行くというんだ。 笑せるな」
「 勿論 。シャーロット様は特別ですので、 1セントも 頂いていません 」
白 を切り通すティアスを クズ男が憐れむように 見る 。
「ティアス。 何か勘違いしてるんじゃないか?」
「 勘違い?」
「 そうだ 。 尽くせば シャーロットと結婚できるってな」
何を考えているのか 見え見えだと 言うようにクズ男がティアス の目を覗き込む。
「……」
クズ男の言葉に、ティアスが一瞬目をそらす。
直ぐに戻したが、 クズ男にはそれで十分 。
片方の口角だけ上げて 笑っている 。
「ハッキリ言ってやる。 お前と シャーロットと では 住む世界が違うんだよ 」
「……」
「アヒルの子はアヒル。 白鳥には なれない。 いくら金があっても 所詮 お前は市井なんだ。 だから、そこら辺にいる 娼婦とでも 結婚しているのが お似合いなんだよ 」
「そのような、邪な気持ちは ありません」
ティアスがクズ男の 言葉を否定する。
確かに。何日も一緒にいるが ティアスから それらしい 誘いはなかった。
「 本当に?」
「 本当です 」
蛇のような執念深さで ティアスに 絡みつく。
ティアスが弱みを見せまいと 意識して視線を合わせる。
自分が優位に立てた ことが嬉しいのかクズ男が、 爛々と輝く。
「本当は 、あわよくばと 狙ってるんじゃないのか?」
「 シャーロット様は、 命の恩人です 」
いつもの冷静さを取り戻したティアスが 、きっぱりと 言い切る。
その姿に 頼もしさを感じるが、 その一方で その口から出た言葉 に寂しさを感じる 。
( どうして?)
「命の恩人ねぇ~。 私だって色々 お前の面倒を見ただろう」
「 さて 何の事でしょう」
クズ男が ティアスを 弄び始める。
(何が、面倒よ )
全く、どこまでもクズなんだから 。
二人を振りを解こうと もがくが 放してくれない。
『 バレたら 連れ戻されます。 ディアス様のために我慢してください 』
『今は、さすがにマズいですよ。 もう少し様子を見てからでも、遅くないよ 』
シャーロットは唇を引き締める 。二人に押さえ込まれていなければ 今すぐ加勢しにいきたい 。
「ふ~ん。でも 、お前が銀貨3枚で買われた奴隷だという 事実を取引先の人間が知ったら、 どう思うかな?」
「……」
「皆に言いふらされたくなければ 言うことを聞くんだな」
(称賛 するに決まってますわ 。あなたこそ 過去のことが知られたら不味いくせに!)
「……」
今度はティアスの前を 行ったり来たりしながら 脅してくる。
「 ご自由に 。それで離れるようでは 私の取引相手としては 不相応です」
脅しをかけてくるクズ男に 真っ向から向き合う。
「そう上手くいくと思っているのか?目出度い 奴だ」
「……」
クズ男が 両手を上げて首を振ると ティアスが拳を握る 。
どこまでやれば 気が済むの。
これ以上、ティアスが いいようにされるのを 見ていられない 。
『このまま、クズ男に好き勝手に言わせるなんて 我慢なりませんわ 』
カッとしたシャーロットは 強引に二人の腕を振り払って ドアに手を伸ばす。
しかし、 その前に私の手をマリアたちが 掴んで 止めようとする。
『待って下さい。 それでは ティアス様の努力が 水の泡です』
『 凄い力!見かけに よりませんね』
「私は欲しがる人間に 売るだけですから」
「 売れれば良いがな ?」
「取引相手は 国内とは限りません」
「……」
クズ男が、いくら言っても ティアスの自信はゆるがない 。
お互いに一歩も譲らぬ態度で 睨み合っている。 一触即発の 状態に 、どうなるのかと 固唾を呑む 。もっとよく見ようと 3人ともドアに近づくと、 ゆっくりと開いていく 。
『『『 !!! 』』』
慌ててドアノブをつかもうとするが 間に合わない 。
「キャッ」
「痛い 」
「ぐふっ」
雪崩のように 部屋に転がり込んでしまった。
見つかった!!
とうとう、 本人が来てしまった。
応接室をマリア達と 一緒に覗くと ティアスが クズ男と無言で 対峙している 。
パックリと足元に穴が開いて シャーロットを飲み込んで行く。
最も恐れてたことが現実になってしまった。
ズルズルと ディアスに甘えていたから、こんなことになってしまった。 シャーロットは自責の念に駆られる。
***
ティアスとの再会に アランは苛立っていた 。
貴族の私が 、わざわざ ティアスの家に足を運ぶ事になったことが 気に入らない。
市井なんだから 貴族の呼び出しに答えるべきだろう。
アランは通された部屋に乱立している調度品を見て 鼻を鳴らす。
(まさな成金だな)
10年や そこらで 成り上がったんだ。
靴を舐めるくらいの事をしているだろう。でなければ、今の地位は考えられない。
そんな事を考えていたが、ドアの 開く音に振り返る。
生意気にもティアスが、堂々と私の視線を真正面から 受け止める。
そこには、怯える目で私の機嫌取りをしていた 少年の姿は どこにも無い。
小さく深呼吸して、全ての感情を 隠す。
そうしなければ 自分が優位に立てない事は 、分かっている。平坦な声で 喋り出す。
「こ…」
喋り出して初めて 自分が緊張していることに気づく。
…馬鹿らしい。なぜ緊張する?
無意識に握っていた手のひらを開く。
私は貴族で ティアスは市井。
逆立ちしたって お互いの 立場は変わらない。
市井の者が 貴族に逆らうことなど 出来ない。
それは 流れている血 一滴、一滴に 延々と 染み付いている。 そう思うと 肩の力が抜ける。
貴族として接すれば良いだけのことだ。
「これはこれは。 ティアスじゃないか。 久しぶりだな。 まさかと思っていたが 生きていたとは、 随分 しぶといな 」
***
シャーロットは ティアスが クズ男と 向かい合ってるのを見て 目の前 が真っ暗になる。
喉が詰まって 体が小刻みに震える。
逃げなくてはと 本能で分かっていても 理性が何処へと 問いかけって来る。
ティアスの力なくして 何も出来ないし、 何処へも行けない。
こんな事なら キャル家 の場所 を教えてもらえば良かった。
いつか、 この日が来ると知っていたのに…。
今日まで先延ばしていた罰が 下ったんだわ。
足から力が抜けていく。 その場に、しゃがみ込みそうになるのをなんとか踏ん張って 堪える。
ここで倒れてしまって は 駄目よ。
私を匿ったことが クズ男に知られてしまう。
そうたったら、またティアスが酷い目に遭う。
早く身を隠さないと。
それなのに 足が ぐにゃぐにゃになって 言うことを聞かない。 それでも何とかしようと自分の足を叩く。
『 動きなさい 。これは命令よ!』
それでも 動かない自分の足に 腹が立つ。
(ならば、這う?)
床を見ながら、リスク回避とプライドを天秤にかける。
(・・・仕方ない)
目を閉じて床に両手をつく。
『 ちょっと 何してるんですか?』
すると、 ローラに腕を引っ張られるて 二人の間に倒れこんでしまう 。
『放しなさい』
こんな事をしている場合じゃないと 起き上がる。
「これはこれは。 ティアスじゃないか 久しぶりだな。 まさかと思っていたが 生きていたとは。随分しぶといな 」
聞こえてきたクズ男の声に 中を覗く。
「お陰様で、至って健康です」
「 こんな所で会うとは… 偶然か? それとも…必然か?」
「さぁ、 私には分かりかねます 」
クズ男がティアスの周りをぐるりと回りながら言う。 絶対 粗探している。
しかし 、ティアスの格好は完璧で 一部の隙もないから無駄なこと。
「 こんな家に住んでいるとは 。流石 、市井の者は 転んでも ただでは起きないか 」
「お陰様で ここまで成功することができました。アラン様には 感謝しています」
クズ男の嫌味に ティアスが落ち着いた声音で 返すと、クズ男の こめかみに青筋が浮き出る。
(良い気味だ)
「 …成金のくせに!」
微塵も感情を崩さない ティアスに苛立ったらしく 吐き捨てるように言う。
最初から将来を約束されている貴族と違って 血の滲むような努力をして 今の地位を築いたのに、 そんな風に言うなんて許せない。
しかし、ティアスは怒りもせず 受け流す。
「お褒めに預かり光栄です」
「……」
ティアスが そう言って 会釈する。
効果がないと判断したのか クズ男が威圧的な態度を改めて 馴れ馴れしく ティアスの肩に手を回す。
「 お前とは古い付き合いだ 。私だって 手荒な真似はしたくない」
「……」
「協力してくれたら、それなりに支払うつもりがある。 どうだ。悪い話じゃないだろう?」
クズ男が金をチラつかせて誘惑する。
「 お金より、 シャーロット様の方が大事です」
ティアスが 断ると 両手を広げてオーバーな仕草で クズ男が首を振る。
「 無駄だ。 いくら金があっても、 お前は シャーロットを幸せに出来ない。 その理由は 言わなくても 分かるだろ 」
含みのある言い方が 鼻につく。
「……」
固い表情で ティアス が沈黙する 。それを交渉のテーブルについたと 勘違いしたクズ男が、さらに 言葉を続ける。
「分かってる。 シャーロットが幸せになるかどうか、心配なんだろう。 なにせ、お前に とっては 命の恩人だ。だが、 大丈夫。 今の暮らしと何ら変わりない生活をさせると 保証する」
「 シャーロット様は アラン様と結婚したくないと言っていました」
そうよ。その通り。死んでも嫌!
「 誤解だよ。シャーロットが家出したのは 所謂 マリッジブルーってやつだ。 誰でも結婚前は 気持ちが不安定になる。それを一々真に受けてたら 誰も結婚できない。分かるだろう?」
よくある話だとクズ男が 肩を竦めるて、ティアスの意見を否定する。
シャーロットは 手を組むと 祈るように口元に押し付ける 。
(ティアス。 クズ男の口車に乗っては駄目)
「 シャーロットの両親も心配している。 行方不明のままでは 可哀想だと思わないか?」
「……」
「 いい加減 、意地を張るのは止めろ。 どう足掻いても 私との結婚は無くならない」
「……」
「このまま隠れていると 状況が悪くなるのは、シャーロットの方だ 」
「……」
押し黙ったまま 返事をしない ティアスに クズ男の化けの皮が剥がれる。
「お前が匿っていることは、 分かっているんだ。 さっさと居場所を言え!」
元使用人に、これ以上 下手に出るのは限界らしい 。
シャーロットは クズ男の言葉に、ほっとを緊張を解く。
まだ 見つかっていない。
この家に本人自ら訪ねてきたから、 てっきりバレたのかと 肝を冷やしていた。
「 一体何のことだか、分かりかねます 」
「忘れたのか? それとも… 昔みたいに打たれないと 思い出せないのか? どっちだ」
グズ男がニヒルな笑みを浮かべて ティアスにプレッシャーをかける。
クズ男の卑劣な 言葉に 堪忍袋の緒が切れる。
いくら何でも酷すぎる。 昔の事をネチネチと。
『 その口を縫い付けてやる』
シャーロットは歯ぎしりしながら 毒を吐くと 怒りに任せて乗り込もうするが ローラたちが私の口をふさいで羽交い締めする 。
『落ち着いて下さい 』
『始まったばかりだよ。 楽しみのは、これからだよ』
「さて何の事でしょう?」
「くっ」
ティアスが惚けると 激昂しているらしく クズ男の顔が赤い。
このまま怒って帰るかと 思っていたが、クズ男が背を向けて 深呼吸している。クルリと振り向いた時には いつもの薄笑いを浮かべている 。
「今更、そんな嘘が 通じると思うのか? お前の馬車に乗り込むの を何人もの人間が 目撃してるんだぞ !」
クズ男が語彙を強めて言う。
「ええ、その通りです 。ですがその後、 示談が成立して出て行かれました」
「 示談 ? 何 寝ぼけたことを言っている。 シャーロットは 金も無いし 、 頼る相手もいないんだぞ。 一体 どこへ行くというんだ。 笑せるな」
「 勿論 。シャーロット様は特別ですので、 1セントも 頂いていません 」
白 を切り通すティアスを クズ男が憐れむように 見る 。
「ティアス。 何か勘違いしてるんじゃないか?」
「 勘違い?」
「 そうだ 。 尽くせば シャーロットと結婚できるってな」
何を考えているのか 見え見えだと 言うようにクズ男がティアス の目を覗き込む。
「……」
クズ男の言葉に、ティアスが一瞬目をそらす。
直ぐに戻したが、 クズ男にはそれで十分 。
片方の口角だけ上げて 笑っている 。
「ハッキリ言ってやる。 お前と シャーロットと では 住む世界が違うんだよ 」
「……」
「アヒルの子はアヒル。 白鳥には なれない。 いくら金があっても 所詮 お前は市井なんだ。 だから、そこら辺にいる 娼婦とでも 結婚しているのが お似合いなんだよ 」
「そのような、邪な気持ちは ありません」
ティアスがクズ男の 言葉を否定する。
確かに。何日も一緒にいるが ティアスから それらしい 誘いはなかった。
「 本当に?」
「 本当です 」
蛇のような執念深さで ティアスに 絡みつく。
ティアスが弱みを見せまいと 意識して視線を合わせる。
自分が優位に立てた ことが嬉しいのかクズ男が、 爛々と輝く。
「本当は 、あわよくばと 狙ってるんじゃないのか?」
「 シャーロット様は、 命の恩人です 」
いつもの冷静さを取り戻したティアスが 、きっぱりと 言い切る。
その姿に 頼もしさを感じるが、 その一方で その口から出た言葉 に寂しさを感じる 。
( どうして?)
「命の恩人ねぇ~。 私だって色々 お前の面倒を見ただろう」
「 さて 何の事でしょう」
クズ男が ティアスを 弄び始める。
(何が、面倒よ )
全く、どこまでもクズなんだから 。
二人を振りを解こうと もがくが 放してくれない。
『 バレたら 連れ戻されます。 ディアス様のために我慢してください 』
『今は、さすがにマズいですよ。 もう少し様子を見てからでも、遅くないよ 』
シャーロットは唇を引き締める 。二人に押さえ込まれていなければ 今すぐ加勢しにいきたい 。
「ふ~ん。でも 、お前が銀貨3枚で買われた奴隷だという 事実を取引先の人間が知ったら、 どう思うかな?」
「……」
「皆に言いふらされたくなければ 言うことを聞くんだな」
(称賛 するに決まってますわ 。あなたこそ 過去のことが知られたら不味いくせに!)
「……」
今度はティアスの前を 行ったり来たりしながら 脅してくる。
「 ご自由に 。それで離れるようでは 私の取引相手としては 不相応です」
脅しをかけてくるクズ男に 真っ向から向き合う。
「そう上手くいくと思っているのか?目出度い 奴だ」
「……」
クズ男が 両手を上げて首を振ると ティアスが拳を握る 。
どこまでやれば 気が済むの。
これ以上、ティアスが いいようにされるのを 見ていられない 。
『このまま、クズ男に好き勝手に言わせるなんて 我慢なりませんわ 』
カッとしたシャーロットは 強引に二人の腕を振り払って ドアに手を伸ばす。
しかし、 その前に私の手をマリアたちが 掴んで 止めようとする。
『待って下さい。 それでは ティアス様の努力が 水の泡です』
『 凄い力!見かけに よりませんね』
「私は欲しがる人間に 売るだけですから」
「 売れれば良いがな ?」
「取引相手は 国内とは限りません」
「……」
クズ男が、いくら言っても ティアスの自信はゆるがない 。
お互いに一歩も譲らぬ態度で 睨み合っている。 一触即発の 状態に 、どうなるのかと 固唾を呑む 。もっとよく見ようと 3人ともドアに近づくと、 ゆっくりと開いていく 。
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「痛い 」
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